治療の基本は1本ずつ足の指をほぐすこと
私はかつて、アニマル浜口氏に師事し、プロレスラーとしてリングに上がっていました。
引退後は、柔道整復師の国家資格を取得し、治療家になりました。
現役時代にお世話になった「治療家」という職業は、私にとって身近な存在でしたし、「今度は私が人を助けたい」と思ったのです。
「元プロレスラーの治療家」というと、「バキッ」「ボキッ」という荒療治を想像するかたが多いのですが、私の場合は違います。
患者さんには、まず足湯をしていただき、そのあと、治療台の上で、足の指を1本ずつ、丁寧にほぐしていくのです。
これが私の治療の基本です。
ほぐすのは足の指ですが、頭痛や片頭痛に悩む患者さんからは、特に、絶大な信頼を受けています。
なぜ、私が頭痛治療を得意とするようになったのか、なぜ足の指なのか、お話ししましょう。
私は柔道整復師ですから、開業当初の患者さんは、肩こりや腰痛、ひざ痛に悩むかたがほとんどでした。
ところが、しばらくすると、「腰痛やひざ痛はもちろん、なぜか頭痛も治った」といわれることが増えてきたのです。
頭痛が治った患者さんがクチコミで広めてくれたり、私のほうでも、治療院のホームページに患者さんの声を載せたりしたところ、頭痛の患者さんが押し寄せるようになりました。
皆さん、脳神経外科や頭痛外来を受診したもののよくならず、わらをもつかむ気持ちで、私の治療院に来るのです。
開口一番、「助けてください」という人までいるほどです。
これまでに、頭痛の患者さんを1000人以上治療してきました。
そして、頭痛に悩む患者さんの話を聞いたり、施術したりしていると、いくつかの共通点が見えてきました。
新鮮な血液が体を巡り多くの不調が改善する
その共通点の一つが、手足が冷たく、顔色が青白いことです。
これは、血行不良であることを現しています。
つまり、頭痛の患者さんは、血液循環が悪いのです。
原因としては、姿勢の悪さや交通事故などによる首の変形、長期間にわたる鎮痛剤の使用、体を冷やす生活習慣などが考えれます。
血流を妨げる原因を取り除く指導や施術と並行して、私が力を入れているのが、足の指を刺激することです。
足の指は心臓から最も遠く、血流が悪くなりがちです。
特に、老廃物を含んだ静脈血が滞りやすく、それがまた全身の血液循環を妨げています。
足の指を刺激すると、静脈血が心臓に戻りやすくなり、新鮮な血液が体を巡るようになります。
血液循環がよくなると、内臓の機能を調整する自律神経のバランスが整い、頭痛だけでなく、さまざまな不調まで改善するのです。
患者さんは皆、治療院の施術だけでなく、自宅でも足の指を回したり、こすったり、引っ張ったりして刺激しています。
セルフケアとして習慣化している人は、頭痛の改善効果も早く現れるようです。
今回は、足の指の刺激法のうち、自分で行いやすい「足の指回し」をご紹介しましょう。

イスか床に座ります。
足の指を手でつまみやすい体勢なら、どのような姿勢でもかまいません。
足の指を手でつまんで、足の親指(母趾)から小指(第5趾)まで、1本ずつ大きく回していきます。
指を回す目的は、足の指にたまった老廃物を流し、血液循環をよくすること。
ですから、足の指を引っ張って回すことがポイントになります。
理由を説明しましょう。
足の指には複数の関節があり、本来、自由自在に動くようになっています。
ところが、現代人は昼間、窮屈な靴をはいているため、足の指の関節が固まり、骨と骨の間が狭くなっているのです。
その状態では、血流はますます滞ってしまいます。
関節を広げ、血流をよくするために、足の指を引っ張ってから回すのです。
最初のうちは、痛みを感じるかもしれません。
入浴中や、お風呂上がりなど、足が温まった状態で行うと、効果が高まるうえ、痛みも軽くなるでしょう。
前述したように、私の治療院では、患者さんに、まず足湯をしてもらいます。
そうすることで、血流がよくなるとともに、リラックスできるので、治療効果が上がるのです。
足の指回しは、1日何度行ってもかまいません。
目安としては、1本の指に対して、右回りと左回りを、5回ずつくらいで十分でしょう。
朝、靴下をはく前、夜の入浴時のほか、日中でも体の冷えを感じたときや、頭が痛くなったときなどに行うのがお勧めです。
一つ、注意点があります。
頭痛には、重篤な病気が潜んでいる場合があります。
必ず医療機関を受診し、検査を受けてください。
その結果、原因となる病気がなく、治療法はないといわれたら、ぜひ、足の指回しをやってみてください。
最後に、頭痛持ちのかたは、スマートフォンやパソコンの使用を極力控えましょう。
前のめりの姿勢や、うつむく姿勢は、首と肩に負担をかけ、血管を収縮させます。
すると、脳への血流が悪くなるので、頭痛やめまい、耳鳴りなどが起こりやすくなるのです。
「必要なとき以外は手もとに置かない」「定期的に休憩時間を取る」などの工夫をしましょう。