「週2回の射精」が前立腺肥大とガン、EDを予防する!セックスの重要性を医師が解説

「週2回の射精」が前立腺肥大とガン、EDを予防する!セックスの重要性を医師が解説

前立腺肥大症や前立腺ガンだけではなく、血管にかかわるさまざまな病気を予防するために、セックスもしくは、マスターベーションを頻繁に行うことが大事です。日々、頻繁に射精をすることは、すなわち、大変有効な健康法なのです。【解説】永井敦(川崎医科大学泌尿器科学教室教授・医学博士)


1日に8回以上排尿する人は要注意!

中高年以降の男性の皆さんにとって、「前立腺肥大症」という病名は、大変気になるものでしょう。
この前立腺肥大症は、50代以降の男性の2割以上がかかっているといわれています。

しかも、その罹患率は年齢を重ねるごとに高くなっていきます。
60歳以上で約7割、80歳以上では約8割のかたに前立腺肥大の症状が見られます。

つまり、前立腺肥大は、男性であれば、ほとんど誰もがかかりうる病気といっても過言ではありません。

そもそも前立腺とは、いったいどういう器官で、私たちの体の中でどんな役割をしているのでしょうか。
前立腺は、膀胱の出口にあり、尿道を取り囲んでいるクリの実大の臓器です(上の図を参照)。

前立腺は、精液の一部を作り出すほか、射精の際に収縮をくり返して、精液を体外へ送り出す働きをしています。
前立腺がなぜ肥大するのか、その原因はまだはっきりしていませんが、加齢によってホルモンのバランスがくずれることが主な原因の一つと考えられています。

前立腺が肥大すると、尿道が圧迫され、排尿に関してさまざまな障害が起こってきます。
最初に認められる症状が、頻尿です。

まず、トイレに行く回数がしだいに増えます。
通常であれば、1日当たりの平均排尿回数は5〜6回ですが、もし8回以上になっているようなら、前立腺肥大を疑ってみる必要があるでしょう。

特に、夜間に何度も排尿のために起きる人は要注意です。また、尿がすぐに出ない、すべて出るまでに時間がかかるという症状も起こります。
尿の勢いが弱まり、細くチョロチョロとしか出なくなったり、残尿感に悩まされたりする人もいます。

こうした症状が目立つようになったら、一度、泌尿器科のある病院で診察を受けることをお勧めします。
前立腺肥大症と診断された場合、治療手段の第一選択は投薬です。これまでは、α1遮断薬という薬剤が、前立腺肥大症の治療に主に使われてきました。
この薬は、前立腺や尿道の筋肉にあって、蓄尿などをコントロールしているα1受容体に働きかけ、排尿障害を改善するものです。

最近、日本でも認可された薬に、「ザルティア」という薬剤があります。
このザルティアは、実は、勃起改善薬として販売されている「シアリス」と全く同じ成分の薬です。

勃起改善薬として処方されるシアリスが、前立腺肥大症の治療薬としては、ザルティアの名で認可されているのです。
なぜ、こうしたことが起こっているのでしょうか。

性的な刺激を受けると、勃起を引き起こす神経がNO(一酸化窒素)を分泌します。
NOの働きで、陰茎海綿体の中で「サイクリックGMP」という物質が増えます。

これによって、陰茎動脈から陰茎海綿体に大量の血液が流れ込み、勃起が起こります。
体内には、このサイクリックGMPを分解する酵素である「PDE-5」が存在します。

シアリスやレビトラ、バイアグラなどの勃起改善薬は、この酵素の働きを阻害して、血管の拡張と血流量の増大を促して、勃起を助けるのです。
前立腺や尿道の筋肉にも、このPDE-5が存在しています。

このため、ザルティアを使うと、前立腺や尿道の収縮した血管を拡張し、排尿障害を改善することができるのです。
前立腺肥大症もEDも、ともに動脈硬化が進んだことによる血流障害によって起こる病気と考えられ、前立腺が肥大している人は、しばしばEDにも悩まされています。

そこで、ザルティアを使うと、排尿障害とともに、EDの改善効果が見込めることになるのです。
前立腺肥大症と診断されたかたは、保険診療薬としてザルティアを処方されます。

一方、EDの改善薬として使われるシアリスは、保険診療外薬であるため、それと区別するために、ザルティアという別の名前がつけられているのです。
前立腺肥大があり、EDに悩むかたは、ぜひ泌尿器科で相談してみてください。

ただ、ザルティアを処方されるには、いくつかの厳しい条件をクリアしなければなりません。
まず満50歳以上であることに加え、医療機関で尿流測定や残尿測定、前立腺超音波検査などの検査を受け、正式に前立腺肥大症との診断を受ける必要があります。

古い精液を排出すればガン細胞化を予防できる

さて、ここまで前立腺肥大症の治療薬についてお話ししてきましたが、そもそも、そうなる前に予防に努めることが重要です。
泌尿器科の専門医として、前立腺肥大の予防のために強くお勧めする方法、それはズバリ「射精」です。

前立腺というのは、いわば、精液の発射装置ですから、その機能をきちんと働かせていれば、血流もよくなり、装置の劣化を防ぐことができるのです。
前立腺肥大症だけではなく、今や男性の部位別ガンのトップになってしまった「前立腺ガン」についても、同じことが当てはまります。

ハーバード大学の研究によれば、「1ヵ月に21回以上の射精をすると、前立腺ガンの発症リスクが2割も低くなる」という報告がなされています。
同大学の研究チームは、1992年から、約3万人の男性の射精回数と前立腺ガンの関連を追跡調査しました。

そして、40代男性の射精回数と前立腺ガンの関係を精査したところ、月に21回以上射精をした人の場合、22%もガンになる危険性が低いことが判明したのです。
ちなみに、月21回というと、1週間で約5回の射精ということですから、かなり多いと感じるかもしれません。

しかし、ここで重要なのは、射精という行為をくり返して前立腺を頻繁に使うことが、ガンの発症リスクを低くするということです。
第一に、頻繁な射精によって、前立腺液の劣化を予防できます。

精液の3分の1を占める前立腺液は、たえず生成されていますが、射精されずに古い液が残ると、組織のガン細胞化を招く恐れがあります。
ですから、射精によって古い液をどんどん排出することが予防につながるのです。

第二に、射精で前立腺の血流がよくなれば、血流低下による低酸素状態を防げます。
これも細胞のガン化を防ぐ要因となります。

だからといって、毎月必ず21回射精しろとはいいません。
一つの目安として、少なくとも週2回の射精を行うように心がけてください。

加齢などによって動脈硬化が進行すれば、血流障害が生じます。
そして、動脈硬化の最初の兆候としてEDが起こるのです。

さらにそれを放置すれば、動脈硬化がさらに進行して、心筋梗塞や脳卒中など、より重大な疾患を招き寄せることになってしまいます。

私は以前から、高齢であるほどセックスが重要であることを強調してきました。
セックスは、全身の血行を促し、健康を維持するうえでも非常に大切な行為です。

最新の臨床研究でも、週2回セックスをすれば、その血流改善効果により、心筋梗塞や脳卒中の予防に役立つと報告されています。
前立腺肥大症や前立腺ガンだけではなく、血管にかかわるさまざまな病気を予防するために、セックスもしくは、マスターベーションを頻繁に行うことが大事です。

日々、頻繁に射精をすることは、すなわち、大変有効な健康法なのです。

永井敦
川崎医科大学泌尿器科学教授、同附属病院副院長。医学博士。岡山大学医学部医学科卒業後、岡山大学医学部附属病院助手、岡山大学医学部・歯学部附属病院講師を経て、現職。前立腺肥大症をはじめ、男性更年期障害や性機能障害の専門家として活躍。日本泌尿器科学会専門医・指導医、泌尿器腹腔鏡技術認定医、日本性機能学会専門医、日本性科学会認定セックス・セラピスト、日本がん治療認定医機構暫定教育医、内分泌・甲状腺外科暫定専門医、日本小児泌尿器科学会認定医など。監修した近著に『愛が深まるセックス体位365』(ブックマン社)がある。

※これらの記事は、マキノ出版が発行する『壮快』『安心』『ゆほびか』および関連書籍・ムックをもとに、ウェブ用に再構成したものです。記事内の年月日および年齢は、原則として掲載当時のものです。

※これらの記事は、健康関連情報の提供を目的とするものであり、診療・治療行為およびそれに準ずる行為を提供するものではありません。また、特定の健康法のみを推奨したり、効能を保証したりするものでもありません。適切な診断・治療を受けるために、必ずかかりつけの医療機関を受診してください。これらを十分認識したうえで、あくまで参考情報としてご利用ください。

この健康情報のエディター

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