【医師解説】耳鳴り、めまい、うつ、イライラに効果 「鎖骨もみ」とは何か

【医師解説】耳鳴り、めまい、うつ、イライラに効果 「鎖骨もみ」とは何か

現代人は、ストレスで身構えたり、スマートフォンやパソコンの操作で前かがみになったりすることから、特に鎖骨(胸の最上部にある骨)の周囲がかたくなる傾向にあります。鎖骨周りがかたくなって組織に癒着すると、全身にさまざまな影響が及びます。【解説】堀田由浩(統合医療希望クリニック院長)


鎖骨周りの滞りが免疫力を低下させる!

体はどの部位でもそうですが、動かさないとかたまってきます。
特に体幹部は、腕や足と違って、日常生活での動きが少ない部位です。

現代人は、ストレスで身構えたり、スマートフォンやパソコンの操作で前かがみになったりすることから、特に鎖骨(胸の最上部にある骨)の周囲がかたくなる傾向にあります。
鎖骨周りがかたくなって組織に癒着すると、全身にさまざまな影響が及びます。

というのも、鎖骨の下には、非常に狭い空間に血管(鎖骨下動脈・鎖骨下静脈)やリンパ管、神経が通っているからです。
鎖骨は、いわば交通量の多い交差点の上に架かる歩道橋のようなもの。

歩道橋とその下を通る道路の間に十分なスペースがなければ、スムーズな通行はできません。
血液の流れが悪くなれば、動脈硬化が起こりやすくなりますし、リンパ液の流れが悪くなれば、免疫力も低下します。

なかでも停滞しやすいのは、リンパ管です。
血流はまだ勢いがありますが、リンパの流れは非常に弱いものです。

流れを悪くしたままでは、途端に停滞してしまいます。
鎖骨周りにはリンパ節(免疫細胞であるリンパ球の待機所)がたくさん分布していて、それらは静脈に絡んでいます。

リンパ管が滞るとリンパ節が腫れ、それが静脈を圧迫して血流まで悪くします。
さらには、腫れたリンパ節が鎖骨の圧迫を受けて流れが悪くなり、次のリンパ節を腫らす……といったぐあいに、負の連鎖反応が起こりやすくなります。

このように鎖骨周りは、少しの滞りが多くの問題を発生しやすい場所なのです。
それだけに、鎖骨付近は特に意識して、流れをよくする必要があります。

そこでお勧めするのが、「鎖骨もみ」です。
鎖骨もみは、骨と筋の間に指を入れて、鎖骨周辺をほぐすセルフケアです。

鎖骨とその下の軟部組織の空間を広げ、血液やリンパ液の循環をよくするのに役立ちます。
免疫の中心を担うリンパ球は、リンパ液にのって全身に届けられるため、リンパ液の流れがよくなれば免疫力が高まります。

カゼなどの感染症にもかかりにくくなるでしょう。
女性の場合は、鎖骨周辺でリンパ液が滞ります。

すると、その上流にある乳腺周囲の乳ガンを誘発する危険性も考えられます。
そうした病気のリスクを防ぐためにも、流れはよくしておくべきです。

特に、左の鎖骨下は、両足と左腕を巡ったリンパ液が最終的に静脈へ戻る場所でもあります。
ここでリンパ液が停滞すると、集まってきた老廃物も浄化されず、体内に蓄積してしまいます。

鎖骨もみでリンパ液の流れがよくなれば、老廃物がきちんと排出されるため、むくみが解消し、首周りがスッキリするなどの効果が、実感できると思います。
鎖骨周囲には、耳や目に向かう血管やリンパ管も通っているので、流れをよくしておくことは、目や耳の病気(耳鳴り、難聴、めまい、近視、老眼など)の予防・改善にも役立つでしょう。

深い呼吸に加えると効果はさらに高まる

鎖骨もみを行うと、肺の空気の流れもよくなります。
肺は、入り口と出口が一つなので、浅い呼吸では空気がしっかり入れ換わりません。

ゆっくりとした深い呼吸をすることで、初めて横隔膜(肋骨の内側にある、呼吸を司る大きな筋肉)が上がり、肺の下部まで換気することができます。
ただ、それでも肺の上部は空気の流れが悪くなりがちです。

肺の上部まで換気しようと思うと、鎖骨も上下運動させる必要があります。
走ったあとに息が苦しくて、私たちは肩を上下させてハァハァと呼吸をします。

あれは、肺を上下させて換気をよくしているのです。
同じことが、鎖骨もみでも行えます。

鎖骨の動きがよくなることで、肺が大きく動き、肺の上部の空気の流れもよくなるのです。
空気の流れが悪いと、血液中に酸素が欠乏して、全身の臓器や細胞が十分に機能しにくくなります。

ガンが発生しやすくなるともいわれています。
喫煙が原因ではないとされている肺腺ガンは、まさに肺の換気が悪くなって起こるガンです。

鎖骨もみで換気をよくすることは、ガン細胞の増殖を抑えることにも役立つはずです。
呼吸は、自分の意志で自律神経をコントロールできる、唯一の手段です。

ゆっくりとした深い呼吸は、自律神経の副交感神経(休息時に働く神経)を優位にして、リラックスできます。
そこに鎖骨もみを加えれば、より深い呼吸ができるようになり、自律神経のバランスを整える効果は高まるでしょう。

つまり、自律神経のバランスのくずれが原因となる、さまざまな病気や不定愁訴の改善が期待できるのです。
例えば、肩こりやイライラ、うつ症状、動悸、不眠、高血圧、便秘などです。

なお、鎖骨もみを行ううえで、心配なことがありましたら、必ず医師に相談してください。

堀田由浩
統合医療希望クリニック院長。医学博士。日本外科学会認定医。日本ホリスティック医学協会理事。西洋医学と東洋医学を組み合わせた統合医療を軸に、人間がもともと持っている治癒力を高める療法を研究。ガン患者の治療を中心に、患者の日常生活から病気になった原因を追究・改善していく医療を展開している。また、予防医学の重要性を浸透させるため、全国で講演活動を多数行っている。

※これらの記事は、マキノ出版が発行する『壮快』『安心』『ゆほびか』および関連書籍・ムックをもとに、ウェブ用に再構成したものです。記事内の年月日および年齢は、原則として掲載当時のものです。

※これらの記事は、健康関連情報の提供を目的とするものであり、診療・治療行為およびそれに準ずる行為を提供するものではありません。また、特定の健康法のみを推奨したり、効能を保証したりするものでもありません。適切な診断・治療を受けるために、必ずかかりつけの医療機関を受診してください。これらを十分認識したうえで、あくまで参考情報としてご利用ください。

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