【医師解説】慢性腎臓病の症状と原因 改善には初期の対処が重要!末期腎不全でも進行を抑えることが可能

【医師解説】慢性腎臓病の症状と原因 改善には初期の対処が重要!末期腎不全でも進行を抑えることが可能

現在、日本では慢性腎臓病の患者数が1330万人と推計されています。これは成人の約8人に1人にあたります。慢性腎臓病とは、一つの病気の名称ではありません。腎臓の機能が慢性的に低下しているか、尿の異常などの腎臓障害が慢性的に持続している病気の総称です。【解説】内山葉子(葉子クリニック院長)


慢性腎臓病だからと悲観的になる必要はない

現在、日本では慢性腎臓病の患者数が1330万人と推計されています。
これは、成人の約8人に1人にあたります。

皆さんは、大丈夫でしょうか。
慢性腎臓病とは、一つの病気の名称ではありません。

腎臓の機能が慢性的に低下しているか、尿の異常などの腎臓障害が慢性的に持続している病気の総称です。
英語の頭文字を取って、CKD(Chronic Kidney disease)とも呼ばれます。

慢性腎臓病は、初期の段階では自覚症状が現れないので、なかなか病気に気づきません。
そのため、放置していると腎臓の機能が少しずつ低下。

末期腎不全(腎機能が著しく低下した状態)に陥ると、最終的には透析治療を受けることになります。
透析患者数は年々増えており、2015年は32万4986人でした。

また、慢性腎臓病の人は、そうでない人に比べ、心筋梗塞や脳卒中の発症率が、男女ともに3倍という調査結果もあります。
しかし、慢性腎臓病だからといって悲観的になる必要はありません。

私のクリニックでは、基礎疾患(原因となっている病気)にもよりますが、腎機能(GFR)が50(mL/分/1・73m²)くらいまでなら、適切な対処によって回復しています。
なかには完治するかたもいます。

腎機能が30未満の末期腎不全でも、進行を緩やかにし、病状を悪化させずに済んでいるかたもいます。

体内環境を一定にして健康を保つ大事な臓器

腎臓は、私たちが生きていくうえで必要なことを、多数処理してくれる、働き者の臓器です。
その大切な腎臓の仕事を、まずお話ししましょう。

腎臓は、腰のやや上の背中側に、左右1個ずつある、握りこぶし大のソラマメのような形をした臓器です。
その内部は、「ネフロン」という単位で構成されています。

毛細血管が毛糸玉のように集まった「糸球体」と、それを包む「ボウマン囊」という袋、それにつながる「尿細管」という細長い管の三つからなります。
一つの腎臓に、このネフロンが約100万個もあります。

腎臓は小さな臓器ですが、とても血流量が多く、心臓から送り出される血液量の20%以上が腎臓に流れ込みます。

①血液をろ過し尿をつくる
腎臓に流れ込んだ血液は、まず糸球体で血球とたんぱく質を除いた成分がろ過され、原尿(尿のもと)となります。

その後、原尿が尿細管を通る間に、水分や糖分、アミノ酸などの体に有益な物質は、99%が再吸収されて血液中に戻ります。
そして、その残りの不要な老廃物(クレアチニンや尿素など)は、尿といっしょに体外に排泄されるのです。

つまり、二重の精巧なザルでふるいにかけられるわけです。
原尿は1日に約150Lつくられますが、尿となるのは1.5L程度になります。

このろ過機能がくずれると、たんぱく質や赤血球が尿中に漏れ出したり、体中に老廃物や毒素がたまったりするわけです。

②体内の水分量・電解質を調節
私たちが、毎日、食事でとる水分や塩分の量は違います。

しかし、体内の水分量や塩分量は一定に保たれています。
それは、腎臓が電解質(ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リンなど)や水分量を調整する機能を持つからです。

また、腎臓は電解質を調整して、血液のpH(水素イオン指数・酸性<7<アルカリ性)を弱アルカリ性(pH7・4)に保ちます。
腎機能が低下して、血液のpHが酸性に傾くと、細胞の活動に支障を来すようになります。

③赤血球の量の調節
腎臓は、「エリスロポエチン」というホルモンを分泌し、骨髄に働きかけて赤血球がつくられるように調節します。

そのため、腎機能が低下すると、酸素を運ぶ赤血球が不足し、貧血(腎性貧血)を起こし、動悸や息切れなどの症状が現れます。

④骨を作るビタミンDを活性
ビタミンDは、骨を作るのに必要ですが、そのままでは機能しません。

腎臓で活性化され「1・25水酸化ビタミンD3」に変化することで、カルシウムの吸収を促し、骨を作るようになります。
ですから、腎機能が衰えると、骨粗鬆症になる危険性が出てきます。

⑤血圧の調整
腎臓は、体内の余分な塩分と水分を排出して、血液の水分量を一定に保つことで、血圧を調整しています。

また、腎臓から分泌される「レニン」という酵素は、「アンジオテンシン」という血圧を上げるホルモンの量を増やし、血圧を上げる働きがあります。
慢性腎臓病になると、レニンの分泌が亢進するため、血圧上昇につながります。

さらに、高血圧が悪化すれば、血管にかかる負担が増大し、動脈硬化も進みます。
その結果、心筋梗塞や脳卒中などのリスクも高まるのです。

このように腎臓は、体内環境を一定に保ち、私たちの健康を維持するために、とても大事な臓器なのです。

腎機能を低下させる要因が現代社会はいっぱい!

では、どのような原因で慢性腎臓病になってしまうのでしょうか。
統計上、透析導入の多い順だと、次のとおりです。

●糖尿病性腎症
糖尿病による合併症の一つで、腎臓の糸球体が高血糖によって障害されるものです。

2015年に透析を始めた患者さんのうち、糖尿病性腎症が1万6072人(全体の43.7%)と最も多く、透析患者数増加の最大の原因となっています。

●慢性糸球体腎炎
免疫の病気や細菌感染などによって糸球体に炎症が起こるものです。

糖尿病性腎症に次いで多いのですが、減少傾向にあります。
治療法が進歩し、治癒するケースが増えているのです。

●腎硬化症
高血圧が長く続き、糸球体やその先の毛細血管の動脈硬化が進むものです。
糖尿病性腎症と同様、透析患者も年々増えています。

このように、慢性腎臓病の原因は、糖尿病、高血圧など、生活習慣病の影響が大きいといえるでしょう。
まず、これらの原因となる病気をきちんと治療することが大事といえます。

ただし私は、慢性腎臓病の原因は実はもっと複合的ではないかと考えています。
例えば、糖尿病性腎症の患者さんは、動脈硬化も進みやすいし、腎硬化症が合併しているかもしれない。

感染症にもかかりやすい。そのうえ、薬の服用も多い。
あるいは、慢性糸球体腎炎が隠れていたり、医原病(医療が原因で起こる病気)があったりすることも考えられるでしょう。

そのほか、便秘などによる腸内環境の悪化、喫煙、添加物の多い加工食品のとり過ぎ、薬やサプリメントの飲み過ぎなど、腎臓の機能を低下させる要因が、現代社会にはあふれています。
これらはすべて血液を汚すもので、血液を浄化する腎臓には大きな負担となります。

働き者の腎臓が元気になるような生活を、皆さんも考え、実践してください。

→慢性腎臓病で注意が必要な薬とは

内山 葉子
関西医科大学卒業。大学病院・総合病院で腎臓内科・循環器・内分泌を専門に臨床・研究を行ったあと、北九州市に葉子クリニックを開設。総合内科専門医、腎臓内科専門医、ホメオパシー専門医。自然医療や漢方・機能性食品といった補完・代替医療と西洋医学などを統合的に行い、難治性の疾患の診療を行う。著書に『子どもの病気は食事で治す』(評言社)など。

※これらの記事は、マキノ出版が発行する『壮快』『安心』『ゆほびか』および関連書籍・ムックをもとに、ウェブ用に再構成したものです。記事内の年月日および年齢は、原則として掲載当時のものです。

※これらの記事は、健康関連情報の提供を目的とするものであり、診療・治療行為およびそれに準ずる行為を提供するものではありません。また、特定の健康法のみを推奨したり、効能を保証したりするものでもありません。適切な診断・治療を受けるために、必ずかかりつけの医療機関を受診してください。これらを十分認識したうえで、あくまで参考情報としてご利用ください。

この健康情報のエディター

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