【抗認知症薬】飲む前に知っておくべき注意点 「前頭側頭型認知症(ピック病)」では禁忌

【抗認知症薬】飲む前に知っておくべき注意点 「前頭側頭型認知症(ピック病)」では禁忌

皆さんは、認知症になったら、まずやるべきは投薬治療だと思っていませんか?実は、それは非常に危険な考えです。抗認知症薬とは、基本的には興奮剤です。ですから、いずれの薬も効き過ぎると、興奮作用や攻撃性が高まるといった危険性を持っています。【解説】長尾和宏(長尾クリニック院長)


本来は禁忌の薬を与える無知な医師も存在する

皆さんは、認知症になったら、まずやるべきは投薬治療だと思っていませんか?
実は、それは非常に危険な考えです。

日本では、認知症の患者さんが急増しています。
もちろん、その大きな理由は高齢化です。

しかし、実際には、多剤投与や抗認知症薬の副作用といった、薬害の影響も大きく関与していると、私は考えています。
現在、保険適用になっている抗認知症薬は、「ドネペジル塩酸塩(商品名=アリセプト。通称ドネペジル)」「ガランタミン臭化水素酸塩(商品名=レミニール)」「リバスチグミン(商品名=リバスタッチパッチ、イクセロンパッチ)」「メマンチン塩酸塩(商品名=メマリー)」の4種類です。

抗認知症薬とは、基本的には興奮剤です。
ですから、いずれの薬も効き過ぎると、興奮作用や攻撃性が高まるといった危険性を持っています。

ただし、これらの薬そのものが悪いわけではありません。
医師が、患者さん一人ひとりの状態をきちんと見極め、その人に合った薬を、その人の適量で処方すれば、非常によい結果が得られることもあります。

問題は、医師による適切な処方がなされていない点なのです。
薬の処方が適切でないと、どんなことが起こるでしょうか。

例えば、十数年前からあり、最もよく使われているドネペジルは、「アルツハイマー型認知症」と「レビー小体型認知症」に適応があります。
レビー小体型認知症は、薬剤過敏が特徴なので、薬の量は最小限にとどめ、まずは様子を見るべきです。

しかし、それを知らずに大量のドネペジルを投与すると、歩行障害や幻覚などの症状が現れます。
さらに、実際は、認知症をすべて一くくりにして、「認知症=ドネペジル」と、短絡的に薬を出す医師も少なくありません。

「前頭側頭型認知症(ピック病)」には本来、抗認知症薬は禁忌です。
この病気の人に抗認知症薬を投与すると、酒が飲めない人に酒を飲ませるようなものなので、興奮して大暴れします。

このような症状は、抗認知症薬をやめれば劇的に改善します。
しかし、なかには「薬が効いていない」と判断し、さらに薬を増やす医師がいます。

すると、ますます攻撃性が高まり、向精神薬まで与えられるという悪循環がくり返されてしまうのです。

薬は治療の主役ではない医師選びが重要!

こうした薬偏重の医療が行われている背景には、十数年続いてきた「抗認知症薬の増量規定」が影響しています。
これは、病気の症状や年齢などを考慮せず、段階的に薬の量を増やし、最大量で維持しなければならないという、処方の際の規則です。

守らなければ、医師には保険上のペナルティが課せられていました。
この規則を疑問視する現場の医療・介護関係者、市民が立ち上がり、2015年に「抗認知症薬の適量処方を実現する会」が結成され、私が代表理事に就任しました。

こうして、国やマスコミに提言した結果、2016年6月に増量規定は、事実上撤廃されました。
それでも、撤廃の通達が出たことを知らず、増量規定に従って薬を増やす医師は、残念ながらいまだに多く存在します。

その結果、薬害に苦しむ認知症の人が、どんどん増えているのです。
認知症治療に占める薬剤の割合は、50%という医師もいれば、70%という医師もいます。

しかし私は、5%以下と考えています。
現に欧米諸国では、抗認知症薬は使用されない傾向にあります。

薬害を回避したいなら、患者さんやその家族も、「認知症になったらまず薬物治療」という考えは、改めてください。
そもそも、抗認知症薬は、認知症を治すのではなく、進行を抑える対症療法に過ぎません。

しかも、その効果が期待できるのは、薬の量がその人の状態に合っている場合のみです。
脳に作用する薬の効果は、個人差が非常に大きいため、合わなければ、かえって不調になるケースも多々あります。

また、認知症の症状は刻々と変わっていくので、そのときどきに応じたさじ加減が必要になります。
そう考えると、医師選びは重要です。患者さんや家族のいうことにじっくり耳を傾けず、薬の使用や増量ばかりを勧めるような医師は、やめたほうがいいでしょう。

「この医師は合わない」と思った場合は、別の医師にかえるのも一考です。
選ぶなら、日進月歩で変化する認知症のことをよく勉強していて、その人に合わせて薬の量を調節できる医師であることは、いうまでもありません。

そして、認知症は生活障害を伴うので、生活において何に困っているのかを診察のたびに聞き、解決策を真摯に考えてくれる医師が、よい医師といえるでしょう。
さらに、薬物療法よりも非薬物療法に力を入れていて、薬以外にもさまざまな助言をくれる医師が理想です。

上から目線ではなく、パートナーとして寄り添ってくれる姿勢が感じられれば、なおよいでしょう。
また、看護師、ケアマネージャー、ヘルパー、薬剤師も、多くの情報を持っているものです。

医師だけでなく、このような人たちから助言を得ることも有用です。

※これらの記事は、マキノ出版が発行する『壮快』『安心』『ゆほびか』および関連書籍・ムックをもとに、ウェブ用に再構成したものです。記事内の年月日および年齢は、原則として掲載当時のものです。

※これらの記事は、健康関連情報の提供を目的とするものであり、診療・治療行為およびそれに準ずる行為を提供するものではありません。また、特定の健康法のみを推奨したり、効能を保証したりするものでもありません。適切な診断・治療を受けるために、必ずかかりつけの医療機関を受診してください。これらを十分認識したうえで、あくまで参考情報としてご利用ください。

この健康情報のエディター

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