【白内障とは?】日帰り手術も可能 費用とタイミング、眼内レンズ、病院の選び方

【白内障とは?】日帰り手術も可能 費用とタイミング、眼内レンズ、病院の選び方

白内障は、手術をすれば視力が回復する病気です。焦って手術を受ける必要はありませんが、視力が落ちて不便な状態を長く我慢するよりは、適切な時期に手術を受けたほうが、QOL(生活の質)を高めて、快適に過ごすことができます。【解説】吉野健一(吉野眼科クリニック院長)


吉野健一
 吉野眼科クリニック院長。1986年日本医科大学卒業。アメリカで確立されたドライアイの概念を日本に持ち込んだ研究グループの一人。開業後は、地域に密着したプライマリケアを重視した一般の眼科診療をしつつ、大学病院レベルの最先端医療を提供している。

白内障とは?白内障の原因と症状について

 私たちの目をカメラにたとえると、レンズに当たるのが水晶体です。
 水晶体は、直径約9mm、厚さ約4mmの凸レンズの形をしている透明の組織です。これは基本的なサイズで、水晶体は遠くを見るときは薄く、近くを見るときは厚くなってピントが合うようになっています。

 さて、水晶体は、それを通して物を見るレンズなので、「透明」であることが大切です。
 ところが、その水晶体が濁ってきて、物が見えにくくなり、視力が落ちてくることがあります。これが「白内障」という病気です。

 白内障の原因のほとんどは、老化です。特別な病気がなくても、高齢になると、自然な老化現象の一つとして、水晶体が濁ってくるのです。
 そのほか、糖尿病やアトピー性皮膚炎、強度の近視などがあると、白内障を起こしやすく、進みやすいことが知られています。また、過去の目の外傷や、放射線の影響などによっても、白内障のリスクが高まります。

 白内障は、早い人では40歳代後半から始まり、年代が高くなるほど増えていきます。発生率は、60歳代後半で65%前後、70歳代で80〜90%、80歳代後半以降ではほぼ100%です。

 白内障の主な自覚症状は、以下のようなものです。
・視界が白くかすむ
・夜、車のヘッドライトなどが 非常にまぶしく感じる
・まぶしさのため、明るいとこ ろで物が見えにくい
・物が二重、三重に見える
・メガネをかけても思うように 視力が出ない

 白内障の進み方にはいくつかのタイプがありますが、多くは水晶体の周辺部分から濁りが始まり、次第に中央部分に進んでいきます。
 中央部分に進むまでは、はっきりした視力の低下は現れず、まぶしさやかすみ目などが主要な症状になります。
 まぶしく感じるのは、水晶体が濁ってすりガラスのようになるため、乱反射を起こすからです。

 軽いかすみ目やちょっとしたまぶしさは、「疲れ目のせい」などと片づけがちですが、白内障の初期症状である可能性もあることを知っておきましょう。
 これらの症状は、白内障以外の要因で起こることもありますが、気になる症状があったら、まずは眼科で原因を確かめましょう。

白内障の手術法「超音波水晶体乳化吸引術」とは?日帰り手術も可能

 白内障の治療は、初期だと点眼薬を用います。ただし、点眼薬で回復させることはできず、進行を遅らせるのみです。
 徐々に進行して、生活に支障をきたすようになったら、手術を検討します。手術のタイミングは、主治医ともよく相談して決めましょう。

 白内障は、手術をすれば視力が回復する病気です。焦って手術を受ける必要はありませんが、視力が落ちて不便な状態を長く我慢するよりは、適切な時期に手術を受けたほうが、QOL(生活の質)を高めて、快適に過ごすことができます。

 現在の白内障手術は安全性が高く、多くの病院では、日帰り手術も可能です。
 ちなみに、もし適切な治療を受けないまま、あるいは手術のタイミングを逃したまま白内障が進行していくと、水晶体の濁りが次第にひどくなり、やがては物が見えなくなります。
 そうなった場合でも、原則的には、手術を行えば視力は回復しますが、あまり長く放置しておくのは得策ではありません。
 なぜなら、白内障を長く放置すると、合併症が起こりやすくなったり、水晶体が硬くなって手術の難易度が上がり、時間がかかったりするからです。
 そのため、適切な時期に手術を受けることを私はお勧めしています。運転免許の更新基準が矯正視力で0・7以上なので、それが一つの目安になるでしょう。

 白内障の手術では、濁った水晶体を取り除き、水晶体の代わりとなる眼内レンズを挿入します(図参照)。
 現在、主流となっているのは、「超音波水晶体乳化吸引術」という手術法です。
 これは、濁った水晶体を超音波で砕き、角膜の端を小さく切開して器具を挿入し、吸引する方法です。その後、眼内レンズを挿入します。
 安全性の高い手術法で、特別なトラブルがなければ、10〜30分程度で終わり、日帰りが可能です。

眼内レンズ「単焦点眼内レンズ」と「多焦点眼内レンズ」の費用について

 白内障の手術に関して、ぜひ知っておきたいのは、眼内レンズの種類です。

 眼内レンズには、大きく2種類あります。「単焦点眼内レンズ」と「多焦点眼内レンズ」です。
 単焦点レンズは、遠くか近くか、どちらかにピントが合うレンズで、それ以外を見るときはメガネを使います。
 多焦点レンズは、遠距離、近距離、または遠距離、中距離、近距離のいずれにもピントが合うように作られていますので、術後はメガネが必要ありません。

 多焦点レンズと聞くと、遠近両用メガネを連想する人が多いようですが、仕組みは全く違います。
 レンズの中に、部分的に遠距離用と近距離用が作ってある遠近両用メガネとは違い、多焦点レンズは、レンズ全体にいろいろな距離にピントが合う構造が組み込まれています。
 ですから、遠近両用メガネの使い心地があまりよくなかったという人でも、快適に過ごせる場合が多いのです。
 ただし、ピントの精度は、単焦点レンズのほうが高くなります。また、単焦点レンズには、健康保険が使えますが、多焦点レンズは自費診療になるので、費用がかかります。

 一般的に、単焦点レンズは、3割負担で45000円程度、多焦点レンズは、医療機関によりますが、平均的には50万円前後です(いずれも片眼の金額)。
 多焦点レンズは、先進医療の指定を受けていますので、医療保険の先進特約に入っている人は、それを活用して手術が受けられます。なお、多焦点レンズを用いた手術を行える医療機関はある程度限られます。

 2種類のレンズは、費用の違いを含めて一長一短があるので、どちらにするかは主治医とよく相談しましょう。
 どちらのレンズでも、白内障でかすんだ視界に比べると、手術後は、「生まれ変わったように見えて感動した」という人が多いです。
 このほか、最新の技術を用いた手術法として、レーザーを用いた方法がありますが、まだ一般的にはなっていません。

 白内障の治療は、どんな医療機関で受けるかも重要です。
 たとえば、生活上の支障が大きくなっている白内障に対して、いつまでも「点眼薬で様子をみましょう」という医療機関は要注意です。
 適切な時期に手術の提案をしたり、相談に乗ってくれたりする医療機関を選びましょう。

 また、白内障の手術は、現在では短時間で済むようになりましたが、手術の速さを、やたらに強調する医療機関も要注意です。手術ではどんなアクシデントが起こるかわかりません。
 そういうときにも、きちんと適切に対応してくれるところがよいでしょう。

※これらの記事は、マキノ出版が発行する『壮快』『安心』『ゆほびか』および関連書籍・ムックをもとに、ウェブ用に再構成したものです。記事内の年月日および年齢は、原則として掲載当時のものです。

※これらの記事は、健康関連情報の提供を目的とするものであり、診療・治療行為およびそれに準ずる行為を提供するものではありません。また、特定の健康法のみを推奨したり、効能を保証したりするものでもありません。適切な診断・治療を受けるために、必ずかかりつけの医療機関を受診してください。これらを十分認識したうえで、あくまで参考情報としてご利用ください。

この健康情報のエディター

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