【医学部教授が解説】股関節の違和感から激痛まで 早期発見するためのチェックリスト

【医学部教授が解説】股関節の違和感から激痛まで 早期発見するためのチェックリスト

股関節は、人体で最も大きな関節で、体重を支える重要な役目をしています。その股関節のトラブルの代表が、「股関節痛」です。股関節の痛みの多くは「変形性股関節症」という病気によって起こり、進行すると、日常生活の支障が大きくなります。【解説】高平尚伸(北里大学医療衛生学部教授) 


「違和感」「音が鳴る」は股関節痛の前兆かも?

 股関節は、人体で最も大きな関節で、体重を支える重要な役目をしています。
 その股関節のトラブルの代表が、「股関節痛」です。股関節痛の多くは「変形性股関節症」という病気によって起こり、進行すると、日常生活の支障が大きくなります。

 といっても、ある日突然に股関節痛が起こるわけではなく、その前段階といえるトラブルから始まります。つまり、「股関節痛の予備軍」です。日本には、股関節痛の予備軍が300〜500万人いると推定されており、ほとんどは女性です。

 股関節とそれを支える筋肉は、女性より男性のほうがしっかりしています。そのこともあり、股関節のトラブルは男性には少なく、圧倒的に女性に多いのです。
 しかし、痛みが起こる前に、股関節のトラブルを早期発見して適切な対策を取れば、本格的な痛みの出現や、痛みの悪化を防ぐことにつながります。

 そのために役立つのが、チェック表です。各項目について、その意味をご説明しましょう。

(1)「違和感」とは、「いつもと違う感じ」のことです。「股関節の存在を意識する状態」ともいえます。
 そもそも、股関節が健全なら、その存在は意識されません。股関節は「無痛」であるのが、正常な状態なのです。
 ですから、「ここに股関節があるな」と感じるのは、すでに「違和感がある」の範疇に入ります。そして違和感は、痛みの前段階です。
 股関節のトラブルは、初期は動作を始めるときに起こりやすいので、立ち上がったときの違和感は、早期発見のヒントになります。同じく、長く歩いたときの違和感も、初期に起こりやすい股関節の症状です。

(2)①の「長く歩いたとき」と同じく、運動後に股関節の違和感があるのは、トラブルの初期ととらえる必要があります。

(3)股関節は、可動域(動かせる範囲)が大きい関節ですが、トラブルが起こり始めると、それが狭くなってきます。足が組みにくいのは、その状態と考えられます。

(4)股関節は体の左右両側にあるため、片足で立つと、体の重心から左右にずれたところで体重を支えなければならず、体重の2倍の負荷がかかります。
 さらに、そのとき傾こうとする骨盤を水平に保つために、腰の側面にある中殿筋という筋肉を硬く引き締めるので、それによっても体重分の負荷がかかります。つまり、片足で立つと、股関節には体重の3倍もの負荷がかかるのです。
 歩く動作は、片足立ちの連続ですから、股関節のトラブルがあると、つらくなります。
 初期には、本人は自覚しないまま、無意識にらくな歩き方をしようとします。一歩踏み出すたびに、地面に着いた足のほうに重心を移動させたり、中殿筋を使わずに大きく骨盤を傾けながら歩いたりするのです。
 本人は気づいていないことが多いのですが、他人から「歩き方が変だ」と指摘されることがあります。

(5)股関節の可動域が狭くなると、こういった、股関節を大きく曲げる動作がしにくくなります。

(6)股関節のトラブルの初期に「音が鳴る」現象は多くみられます。股関節が不安定であるため、動作に伴って鳴ることが多いようです。
 股関節で、太ももの骨の先端の丸い部分(大腿骨頭)がはまっている骨盤側の部分を「臼蓋」といいますが、その先端は、関節唇という軟骨でできて
います。股関節が不安定だと、関節唇に負担がかかり、「パキッ」「コリッ」などと鳴るケースも多いようです。動いたときにときどき鳴るだけなら、健全な股関節でもあり得ますが、頻繁に鳴るときや、他の項目も当てはまるときは、股関節のトラブルが考えられます。

 これらの項目に当てはまるものがあるときは、一度は整形外科を受診し、股関節の状態を調べてもらいましょう。
 そのさいは、股関節に詳しい整形外科医にかかることをお勧めします。トラブルの初期には、股関節に詳しい医師でないと見つけにくい場合もあるからです。最も確実なのは、「日本股関節学会」の評議員を務めている医師や、その医師がいる医療機関にかかることでしょう。

 日本人の場合、変形性股関節症の人の約80%は、生まれつき臼蓋の形が悪く、関節のはまり具合が浅い「臼蓋形成不全(寛骨臼形成不全)」です。臼蓋形成不全の人は、現在、股関節痛がなくても、よりいっそう予防に努めることが大事です。
 股関節に詳しい整形外科医であれば、そういうこともわかるので、その後の対策を立てやすくなります。なお、変形性股関節症には遺伝も関係し、祖母、母、娘の3世代にみられることも多いものです。

太り過ぎや冷え、 運動のし過ぎに要注意

 股関節のトラブルがあるときの対策としては、以下のようなことが勧められます。

●体重コントロール
 太っているほど、股関節への負担が大きくなります。太らないよう気をつけ、太っている人は標準体重に近づけましょう。

●運動をし過ぎない
 長く歩くこと、激しく動くことなどは、股関節への負担になります。すると、翌日に違和感や重だるさが出ることが多いのですが、そうなったら、その運動はやり過ぎだったということ。痛みが出ない範囲の運動を心掛けましょう。

●冷やさない
 冷えは股関節のトラブルを助長します。冷やさないようにし、特に冬は、使い捨てカイロやお風呂などで温めましょう。

●股関節をぶつけない
 あわてて動いて転んだり、股関節を何かにぶつけたりしないように気をつけましょう。

●立ち仕事のときは休む工夫を
 仕事や家事で立ち仕事が続く場合、高めのイスなどを用意し、少しでも座って休みましょう。

●股関節まわりの筋肉を強化
 過度の運動はいけませんが、安静を保つだけでは、股関節まわりの筋肉が弱くなって、悪化につながります。股関節に負担をかけずに、筋肉が鍛えられる運動を心がけましょう。

 一般的に体によいとされるウオーキングは、前述のとおり、股関節に負担がかかります。ウオーキングより、両足で体重を支えるスクワットや、浮力で体重の負荷が少なくなる水中ウオーキング、無理のないストレッチなどのほうがお勧めです。

 また、寝た状態で、片足ずつ足をゆっくり上げ下ろしするなどの運動は、股関節に負担をかけずに筋肉を強化できるので、股関節のトラブルがある人によい筋肉トレーニングです。
 どんな運動も、痛みなどが悪化しない範囲で行い、悪化したら運動を休みます。それでも症状が取れなければ、医師に相談しましょう。

高平尚伸
 1989年北里大学医学部卒業。日本整形外科学会専門医、医学博士。
 2007年より、北里大学医療衛生学部リハビリテーション学科理学療法学専攻教授、北里大学大学院医療系研究科(感覚・運動統御医科学群機能回復学および臨床医科学群整形外科学)教授、 北里大学東病院運動器外科長(整形外科長、2014年末まで)、現在北里大学病院。専門は股関節の疾患、運動器リハビリテーション、スポーツ医学、静脈血栓塞栓症など。

これらの記事は、マキノ出版が発行する『壮快』『安心』『ゆほびか』および関連書籍・ムックをもとに掲載しています。記事内の年月日および年齢は、原則として掲載当時のものです。

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