【脳研究で判明】脳卒中のリハビリに効果!脳を活性化させる「手の刺激法」

【脳研究で判明】脳卒中のリハビリに効果!脳を活性化させる「手の刺激法」

脳卒中のリハビリの際、ただ手を動かしているだけでは、手は使えるようにはならないことがわかっています。コップは持てても、水を飲むことができないのです。コップの水を飲むためには、強制把握と精密把握をそれぞれ鍛える必要があります。【解説】久保田競(京都大学名誉教授)


くぼた きそう
1932年生まれ。57年、東京大学医学部卒業、同大学院に進み、脳神経生理学を学ぶ。その後、米国留学を経て、京都大学霊長類研究所教授、所長を歴任。世界で最も権威がある脳学会「米国神経科学会」で行った研究発表は、100点以上と日本人としては圧倒的に多く、現代日本における「脳科学」の最高権威である。著書は『手と脳』(紀伊國屋書店)など多数。

手をよく使えば脳の神経細胞が増える

 最新の脳研究から、人間と他の動物を決定的に区別しているのは、脳の「前頭連合野」と「手」の働きにあることがわかってきました。

 前頭連合野とは大脳の前側で、私たちの思考・意欲・情動などを実際の行動に変換する場所のことです。
 例えば、「コップの水を飲む」と考えたとすると、前頭連合野から脳の中央に位置する運動野という部分に指令が届き、手の関節や筋肉を動かしてコップをつかみ、水を口に運ばせます。

 こうした行動のための記憶を「ワーキングメモリー」といい、前頭連合野の重要な働きとなっています。このワーキングメモリーこそ人間の特別な能力です。
 人間が未来という概念を持ち、物事を計画的に行うには、ワーキングメモリーが欠かせません。ワーキングメモリーは「考える」という行為の基礎で、前頭連合野がその要となります。
 しかも、前頭連合野と並んでたいせつなのが「手」。手の働きと前頭連合野の働きが重なります。前頭連合野と連動して、人間だけが手で精巧な道具を用いたり、手で自分の意志を伝えたりすることができます。

 この関係を利用すれば、手で脳を鍛えることも可能です。人間の脳(特に前頭連合野)は手を使うことによって進化してきました。そのため、「手は外部の脳である」とまでいわれているのです。手をよく使えば、手からの信号が多くなり、それを受け取る脳の領域が発達し、脳の神経細胞の連絡網(シナプス)が増えたり、強靭になったりします。

脳を効果的に鍛えるには2つの手の体操をする

 ただし、そのためには手の使い方が重要です。手のひらで重いものや硬いものを握る、あるいはつかむような強制把握(パワーグリップ)と、指先で小さなものをつまむような精密把握(プレシジョングリップ)では効果が異なります。
 前頭連合野が手を動かせという指令を発すると、古くから知られている脳の中央部にある運動野が働いて、手を動かすと先に記しました。



 ところが、最近になって脳の中央にある溝(中心溝)の奥深くに、新しい運動野が発見されたのです。その結果、強制把握は古い運動野、精密把握は新しい運動野が担当していることがわかってきました。

 この2つの手の使い方を混同していると、脳を効果的に刺激することはできません。強制把握ばかりでは古い運動野しか刺激できず、脳の活性化が難しくなります。
 実際、脳卒中のリハビリの際、ただ手を動かしているだけでは、手は使えるようにはならないことがわかっています。コップは持てても、水を飲むことができないのです。コップの水を飲むためには、強制把握と精密把握をそれぞれ鍛える必要があります。
 これは私たちの日常生活でも忘れてはならない原則でしょう。手で握る動作(強制把握)は得意でも、ものをつまむ動作(精密把握)が不得手になっていないでしょうか。そうだとしたら、同時に脳の老化も始まっている可能性があります。

 では、脳を効果的に鍛える手の刺激法をご紹介しましょう。
 1つは、精密把握の動作で、新しい運動野を鍛える「指つまみ体操」。やさしい動きからチャレンジして、難度を上げていってください。それだけ脳の働きが活性化されます。
 もう1つは、強制把握の動作で、古い運動野を鍛える「ゴルフボール握り」。これがいいのは、凸凹としたゴルフボールの表面を握ることで、手の感覚を鍛えることにもつながります。この感覚刺激も脳を活性化するのに大いに役立ちます。

脳を活性化させリハビリにも役立つ「手の体操」

「手もみ」のやり方

❶まず片方の手で、親指と人さし指の指先をタッチする。1秒
❷同じように、中指、薬指、小指の順番でタッチする
❸慣れてきたら、これを左右の手で同時に行う
❹今度は順番を逆に、小指、薬指、中指、人さしで行う

ゴルフボール握り体操

ゴルフボールをギュッと握る

※これらの記事は、マキノ出版が発行する『壮快』『安心』『ゆほびか』および関連書籍・ムックをもとに、ウェブ用に再構成したものです。記事内の年月日および年齢は、原則として掲載当時のものです。

※これらの記事は、健康関連情報の提供を目的とするものであり、診療・治療行為およびそれに準ずる行為を提供するものではありません。また、特定の健康法のみを推奨したり、効能を保証したりするものでもありません。適切な診断・治療を受けるために、必ずかかりつけの医療機関を受診してください。これらを十分認識したうえで、あくまで参考情報としてご利用ください。

この健康情報のエディター

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