【加齢性難聴・耳鳴り】原因は糖尿病・動脈硬化とも関係?耳鼻科医が予防法を解説

【加齢性難聴・耳鳴り】原因は糖尿病・動脈硬化とも関係?耳鼻科医が予防法を解説

高齢者の難聴の中でも、年齢以外に特別な原因がないものを「加齢性難聴」と呼びます。両耳で同じように進行し、高音部から聞こえにくくなります。加齢性難聴で最も主要な変化が起こる場所は、音を感じる役割を果たす内耳にある有毛細胞です。【解説】内田育恵(愛知医科大学耳鼻咽喉科特任准教授、国立長寿医療研究センター客員研究員)


内田育恵
1965年生まれ。90年、大阪医科大学卒業。米国留学、名古屋大学医学部耳鼻咽喉科助手、非常勤講
師等を経て、2010年、国立長寿医療研究センター耳鼻咽喉科医長。11年愛知医科大学耳鼻咽喉科講師を経て15年より現職。12年、『全国高齢難聴者推計と10年後の年齢別難聴発症率―老化に関する長期縦断疫学研究(NILS-LSA)より』にて日本老年医学会優秀論文賞受賞。

65歳以上の3人に1人が難聴

国立長寿医療研究センターでは、1997年から、地域住民約2400人を対象に「老化に関する長期縦断疫学研究(NILS-LSA)」という疫学調査(集団を対象に病気の原因や発生状態を調べる統計的調査)を行っています。

この研究で年齢別の難聴者の割合を調べると、60歳代前半では5〜10人に1人程度ですが、60歳代後半には3人に1人、75歳以上では7割以上と、高齢になるにつれて比率が急激に高まります。

この割合を日本全体の人口に当てはめると、65歳以上の難聴者は全国に1500万人以上と推定されます。
健康な聴力から難聴に移行する時期は、60歳代辺りであるといえそうです。

高齢者の難聴の中でも、年齢以外に特別な原因がないものを「加齢性難聴」と呼びます。
両耳で同じように進行し、高音部から聞こえにくくなります。

高い音域から先に聞こえにくくなり、例えば「7時」が「1時」に聞こえたり、「2時半」が「2時間」聞こえたりします。
これは、母音より子音のほうが高い音域に分布するために起こるのです。

加齢性難聴で最も主要な変化が起こる場所は、音を感じる役割を果たす内耳にある有毛細胞です。
加齢とともにこの有毛細胞の数は減るため、聞こえが悪くなります。

有毛細胞を守るには大きな音に要注意

それでは、具体的に有毛細胞を守る方法はあるでしょうか。
難聴の危険因子として、古くから多くの研究が蓄積されているのが騒音です。

私たちの生活には、耳に有害な影響を及ぼす大きな音があふれています。
大音響レベルの具体例としては、生ドラムやロックバンド演奏、飛行機の離着陸時、ガード下、パチンコ店、地下鉄の電車内、犬の鳴き声などが挙げられますが、連続して音にさらされる時間も重要です。

スポーツやロックなどのイベント会場では、ときに耳栓を使用したり、耳を休ませるための休憩を取ったりするといいでしょう。
また、オーディオ機器を使うときは音量を下げたり、使用を1日1時間までにとどめたりするなどの工夫が大切です。

血管の不健康が耳を弱らせる

内耳の健康を保つためには、糖尿病のように血管を傷つける病気や動脈硬化による血行障害にも注意が必要です。
先に挙げた疫学調査からは、中高年者の難聴と糖尿病に関連があることがわかっています。

男性の方が顕著ですが、女性でも、糖尿病があると糖尿病のない人に比べて、2~3倍難聴の危険性が高まるという報告をしています。
糖尿病や動脈硬化、喫煙が、難聴の危険性を高める理由は、さまざまな説が議論されていますが、最も重要と考えられているのは血液の循環障害です。

人の体内の多くの組織は、1本以上の動脈から血液の供給を受けています。
隣接するほかの動脈の枝と連結していることが多く、1本の動脈が詰まっても、隣の動脈から血液が流れて酸素や栄養素が供給されるしくみになっています。

しかし、内耳に栄養を与える動脈は、末端にいくほど隣の枝との連絡をほとんど持たないと考えられています。
そのため内耳の動脈がなんらかの原因によって遮断されたり、血流が低下したりすると、酸素や栄養素の供給を受けている領域に組織障害がもたらされるのです。

その点で、内耳は血流の低下に弱い臓器といえるでしょう。
糖尿病が悪化すれば、血液中の糖分の濃度が高まり、糖が血管を傷つけます。

また糖尿病や喫煙習慣は、動脈硬化の進行にもつながります。
糖尿病や動脈硬化によって動脈の内側が細くなったり、メタボリック症候群などで血液がドロドロになったりして内耳に血流障害が起これば、新たな血液の供給源を持たない内耳の組織は、たちまち酸素と栄養分不足に陥ってしまうのです。

糖尿病の合併症では、多くの人が失明の心配をしますが、目と同じように、耳も難聴という危険にさらされているのです。
難聴の予防と進行を食い止めるためには、バランスのよい食生活や運動習慣など、全身の健康状態を保つことが第一の秘訣なのです。

高齢期には耳鳴りを感じる人の割合も増加しますが、耳鳴りの多くは難聴に伴って発生すると考えられていて、耳鳴りがある人の約9割になんらかの難聴が認められます。
耳の健康維持のための知識が、耳鳴りでお困りの人にもお役に立てば幸いです。

※これらの記事は、マキノ出版が発行する『壮快』『安心』『ゆほびか』および関連書籍・ムックをもとに、ウェブ用に再構成したものです。記事内の年月日および年齢は、原則として掲載当時のものです。

※これらの記事は、健康関連情報の提供を目的とするものであり、診療・治療行為およびそれに準ずる行為を提供するものではありません。また、特定の健康法のみを推奨したり、効能を保証したりするものでもありません。適切な診断・治療を受けるために、必ずかかりつけの医療機関を受診してください。これらを十分認識したうえで、あくまで参考情報としてご利用ください。

この健康情報のエディター

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