【睡眠Q&A】睡眠薬の注意点は?専門医は?糖尿病や認知症との関連は?

【睡眠Q&A】睡眠薬の注意点は?専門医は?糖尿病や認知症との関連は?

正しい生活改善をすれば不眠の大部分は改善・解消できるものです。それでも十分な効果がない場合、目安として、不眠症状が「週に3回以上、かつ3ヵ月以上」持続すると「慢性不眠障害」と診断されます。この場合は医師に相談し、補助として睡眠薬を使うのもよいでしょう。【解説】宮崎総一郎(中部大学生命健康科学研究所特任教授)


宮崎総一郎
中部大学生命健康科学研究所特任教授、日本睡眠教育機構理事長。医学博士。日本睡眠学会理事。睡
眠学教育、睡眠健康指導士の養成、睡眠障害の包括的医療に学内外で取り組んでいる。『脳に効く「睡眠学」』(角川SSC新書)、『ぐっすり眠りたければ、朝の食事を変えなさい』(PHP研究所)など、著書多数。

不眠治療の中心は薬ではなく生活改善

Q1.高齢者が睡眠薬を飲むさいの注意点を教えてください。

A1.医師の指示を守る限り、安全に服用できます。
特に高齢者には、「非ベンゾジアゼピン系」の睡眠薬がお勧めです。

「不眠治療の中心は生活改善におく」というのが最近の考え方です。
正しい生活改善(Q4参照)をすれば、不眠の大部分は改善・解消できるものです。

それでも十分な効果がない場合、目安として、不眠症状が「週に3回以上、かつ3ヵ月以上」持続すると「慢性不眠障害」と診断されます。
この場合は医師に相談し、補助として睡眠薬を使うのもよいでしょう。

睡眠薬というと「危険」というイメージを持つ人も多いと思いますが、現在の睡眠薬は、安全性の高いものになっており、医師の指示を守れば、安心して使えます。

もちろん高齢者でも大丈夫です。
ただし、高齢者が睡眠薬を服用する場合、知っておいたほうがよいこともあります。

現在、最も広く用いられている睡眠薬は、ベンゾジアゼピン系という種類(商品名:ハルシオン、レンドルミン、デパスなど)です。
これには筋弛緩作用(筋肉の緊張を取る作用)があり、不安が強い人に向くほか、肩こりの改善作用もあります。
安全な薬ですが、筋力が衰えた高齢者が用いると、筋弛緩作用から転倒につながる場合があります。

そこで、高齢者には、ベンゾジアゼピン系とほぼ同じ効果を持ち、転倒の心配が少ない非ベンゾジアゼピン系の睡眠薬(商品名:マイスリー、アモバン、ルネスタなど)が勧められるようになってきています。
薬には、継続使用していると効かなくなる「耐性」という問題がありますが、非ベンゾジアゼピン系睡眠薬は、6〜12 ヵ月使っても耐性が生じにくく、やめた後に反動で眠れなくなることが少ない点でもお勧めです。

このほかの主要な睡眠薬として、メラトニン受容体作動薬(商品名・ロゼレムなど)があります。
体内時計(生体リズム)の乱れから、夜ふかしがやめられない人に向く薬です。

最も新しい睡眠薬として、脳の覚醒のスイッチが必要以上に入らないようにするオレキシン受容体拮抗薬(商品名:ベルソムラなど)もあります。

高齢者に限りませんが、睡眠薬は、お酒と一緒には飲まないでください。
飲んだ前後の記憶が一時的になくなることがあるからです。

最近では、睡眠薬は、ずっと飲み続けるものではなく、医師も最初から「出口」、つまり将来の減薬や休薬を考えて処方するという方向性になってきました。
睡眠薬に頼り切るのではなく、うまく補助的に使いながら、眠りのトラブルを解消していきましょう。

質の悪い眠りは認知症のリスクを高める

Q2.きちんと睡眠が取れないと、どのような病気のリスクが高まるのでしょうか。

A2.睡眠不足が続くと、心臓病、高血圧、糖尿病、うつ病、認知症、ガンなど、さまざまな病気のリスクが高まり、肥満も招きやすくなります。

近年、睡眠不足がさまざまな病気のリスクを高めることがわかってきました。
ただし、「睡眠不足」については、少し説明が必要です。

適切な睡眠時間は人それぞれで、一概に「何時間睡眠がよい」とは言えません。
目安として、日中、「ひどく眠い」「つい寝込んで約束を忘れたりする」「体がだるくて普通の活動ができない」などということがないなら、睡眠時間は足りています。

睡眠時間は、おおむね基礎代謝(安静時に消費するエネルギー)に比例し、基礎代謝は筋肉の量に比例します。
ですから、筋肉が衰える高齢者は、若いときより必要な睡眠時間が減りますが、それも正常な変化です。

高齢者でも5時間を切るような睡眠時間はやはり少ないといえますが、それ以上であれば、あとは個人差が大きいのです。
ですから、「睡眠不足」とは、その人の体が必要とする睡眠時間が十分に取れず、日中の活動に支障をきたすような状態を意味します。

そういう睡眠不足が続くと、何が起こるでしょうか。
睡眠の大きな目的は、疲れた脳を休ませることです。

それがうまくいかないために、いろいろな弊害が起こってきます。
まず、自律神経(内臓や血管の働きを支配する神経)のうち、リラックス状態を作る副交感神経の働きが落ち、緊張状態を作る交感神経の働きが強まって、血圧が上がり、心拍数が増加してきます。

その結果、高血圧のリスクが高まります。
ある調査では、1日の睡眠時間が5時間を切ると、高血圧のリスクが1.6倍になるという結果が出ています。

睡眠不足の人はそうでない人に比べ、心臓病になる率が1.45倍という調査もあります。
睡眠不足が続くと、インスリンの分泌が低下するため、糖尿病のリスクも増大します。

また、食欲を抑制するホルモンであるレプチンが減り、食欲を増進させるグレリンが増えることから、太りやすくなります。
肥満によってメタボ(メタボリック症候群)、ひいては動脈硬化も促進しやすくなるのです。

肥満すると、睡眠時無呼吸症候群のリスクも増します。
睡眠時無呼吸症候群は、生活習慣病を合併しやすく、さらなる不眠を招くので、悪循環に陥ってしまいます。

一方、体を感染症やガンから守る免疫細胞は、主に睡眠中に増殖や活性化をします。
そのため、睡眠不足が続くと、ガンのリスクも高まります。

また、睡眠不足や、逆に過剰な睡眠が、うつ病の潜在的な原因になることもわかってきています。
うつ病になると眠れなくなるので、睡眠不足とうつ病は相互に悪化させる関係です。

また、最近わかってきたのが、睡眠と認知症の関係です。
脳には、他の部位のように老廃物を運び出すリンパ管がないため、動脈から水がしみ出て静脈まで流れ、それによって老廃物を洗い流しています。

この「洗い流し現象」をグリンパといいますが、睡眠中には、起きているときの10倍の作業効率でグリンパが行われます。
脳の老廃物には、認知症の原因となるアミロイドβなども含まれるため、グリンパがうまく行われないと、それらがたまって、認知症のリスクが高まります。

実際に、高齢者の睡眠不足が続くと、認知症のリスクが2倍になるというデータもあります。


Q3.不眠の治療を受けたいのですが、どの医療機関に行けばよいでしょうか。

A3.最もわかりやすいのは、日本睡眠学会の認定医・認定施設に行くことです。

睡眠に関する悩みや症状があるとき、どの医療機関に行けばよいか迷う人は多いでしょう。
そんなときの参考になるのが、日本睡眠学会で発表している「睡眠医療認定医リスト」です。

日本全国(一部アメリカ)の96医療機関と496名の認定医師(2016年5月17日現在)がリストアップされており、日本睡眠学会のホームページで閲覧できます。

厳格な規約のもとで選出してあり、認定医は常に一定の研修への参加なども義務づけられていますので安心です。

「早く寝たい」ならまずは早く起きること

Q4.安眠のための生活習慣について教えてください。

A4.「早起き、朝食、夜は暗めに」が大事な3ヵ条です。

不眠を改善して安眠・熟眠を得るための生活習慣にはいろいろありますが、なかでも私がお勧めしている3ヵ条は、以下のとおりです。

●よい眠り三つの習慣
①早く寝るには早く起きる
②朝・昼をしっかり食べて夜は少なめ
③夜は暗くして快眠モード

不眠の人は早く寝ようとしがちですが、いつも寝ている時刻の1〜2時間前は、脳の温度が高く、とりわけ眠りにくい「睡眠禁止ゾーン」です。
早く寝るには、まず早起きすること。
すると生体リズムが早まり、早くぐっすり寝られます。

起きたら、カーテンを開けて光を浴びると、体内時計がリセットされて効果的です。
できれば、起きる前から朝の光を感じるのがベストなので、遮光カーテンを使っているなら、10cmほど開けて寝るとよいでしょう。

脳の体内時計は光でリセットされますが、消化器などは食事でリセットされます。
そこで、朝食をしっかり取ることも大切。
朝・昼食をきちんと食べ、夕食を軽めにすると、生体リズムが整って、寝付きがよくなります。

朝や日中はしっかり光を浴び、夕方以降はあまり明るい光を見ないようにしましょう。

私たちの体内では、光を浴びることで、神経伝達物質のセロトニンが作られます。
そして、朝、光の刺激が目に入ってから15〜16時間後に、セロトニンを材料にして、睡眠を促すホルモンであるメラトニンが作られます。
このとき、光の刺激(特に蛍光灯やパソコン、テレビ、スマートフォンなどの青い光)を受けると、メラトニンの分泌が抑制されて、睡眠が阻害されます。

夕方以降は、暗めの照明にし、蛍光色より電球色の照明を使いましょう。
寝るときは、部屋の明かりを消しましょう。


この3ヵ条だけでも行うと、多くの人は、その日から眠りが改善されます。
これに加えて、以下のことも実践すると、より効果的です。

・適度な昼寝をする(55歳未満は10〜15分、55歳以上は30分。認知症の予防になることがわかっているため)。
・コーヒーなどのカフェイン入り飲料は、遅くとも寝る4時間前からは飲まない。
・寝酒は睡眠の質を下げるので飲まない。
・運動は午後5〜8時に適度に行う(9時以降はしない)。
・入浴は寝る2〜3時間前までに済ませる。
・眠る前にストレッチをする(下の図参照)。

できることから実行してみてください。

※これらの記事は、マキノ出版が発行する『壮快』『安心』『ゆほびか』および関連書籍・ムックをもとに、ウェブ用に再構成したものです。記事内の年月日および年齢は、原則として掲載当時のものです。

※これらの記事は、健康関連情報の提供を目的とするものであり、診療・治療行為およびそれに準ずる行為を提供するものではありません。また、特定の健康法のみを推奨したり、効能を保証したりするものでもありません。適切な診断・治療を受けるために、必ずかかりつけの医療機関を受診してください。これらを十分認識したうえで、あくまで参考情報としてご利用ください。

この健康情報のエディター

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