【治療薬が原因の便秘】多いのは不眠症・頻尿・高血圧の薬です

【治療薬が原因の便秘】多いのは不眠症・頻尿・高血圧の薬です

高齢になると、複数の慢性的な病気を併発し、それぞれの病気の治療薬を服用している人がたくさんいます。そうした薬の中には、便秘を引き起こす副作用を持つものがあるのです。しかも、複数の薬の副作用が相乗的に働き、便秘がさらに悪化するケースもあるのです。【解説】瓜田純久(東邦大学医療センター大森病院副・総合診療科教授)


持病の薬が知らぬ間に便秘をもたらす

 Aさん(70歳代・男性)は、半年前から便秘に悩まされるようになりました。
 日ごろの生活では、それなりに健康に気を遣ってきました。毎日、ヨーグルトを食べ、野菜などの食物繊維の摂取を心がけてきました。イヌの散歩を日課としており、雨が降っても30分程度は歩きます。
 私の診察では、最初に病歴をお聞きすることにしました。Aさんは、50代のころから血圧が高く、降圧剤を服用しています。また、1年前に奥さんを亡くされたのをきっかけに、うつ病にもなってしまったとのこと。眠れないので、睡眠薬を服用していました。
 高齢になると、Aさんのように、複数の慢性的な病気を併発し、それぞれの病気の治療薬を服用している人がたくさんいます。そうした薬の中には、便秘を引き起こす副作用を持つものがあるのです。
 しかも、複数の薬の副作用が相乗的に働き、便秘がさらに悪化するケースもあります。Aさんの例がまさにそれで、降圧剤と睡眠薬の二つが便秘をもたらす要因となっていました。
 つまり、Aさんの事例は、生活習慣やほかの病気の影響ではなく、「薬の副作用による便秘」でした。

自分一人の判断で薬をやめない

 副作用として便秘を引き起こしやすい薬の代表は、以下の3種類です。

①不眠症の薬
 睡眠へスムーズに導くために、いわゆる安定剤や睡眠導入剤といわれる薬には、「ベンゾジアゼピン系の薬剤」が使われています。 
 この薬剤は、脳の中枢神経系の働きを抑制する脳内神経伝達物質のGABAの受容体に働きかけ、脳内全般の神経活動をスローダウンさせます。それが眠気をもたらします。
 腸の動きは、私たちの意志とは無関係に働く自律神経の支配下にあります。自律神経には、主に活動時に優位になる交感神経と、主に休息時に優位になる副交感神経の二つがあり、副交感神経が優位になると、腸の動きが活発になります。
 ところが、ベンゾジアゼピン系薬剤によって、脳内の神経活動が抑制されると、副交感神経の働きも抑制されるために、腸の動きが停滞し、便秘が起こるのです。

②頻尿の薬
 年を取るにつれて、頻尿に悩まされる人が多くなります。
 通常、膀胱は、神経伝達物質であるアセチルコリンの働きで、筋肉が収縮し、尿を出そうとします。頻尿の薬のうちでも、「抗コリン作用を持った薬剤」は、アセチルコリンの働きを妨げて、膀胱の収縮を抑え、尿をためるように働きます。抗コリン作用が働くと、結果的に副交感神経の働きを抑制するため、排便がうまくいかなくなることがあるのです。
 過活動膀胱の治療薬としても、抗コリン薬が使われています。過活動膀胱とは、自分の膀胱が収縮し、尿意が我慢できなくなる病気です。
 日本には810万人の過活動膀胱の患者さんがいるといわれ、しかもこの病気は年齢が高くなるほど増えます。

③高血圧の薬
 降圧剤の中でも、とくに「カルシウム拮抗薬」が問題です。
 カルシウム拮抗薬は、血管を構成する筋肉である平滑筋の中にあるカルシウムイオンの通り道(カルシウムチャネル)をふさぐことで、平滑筋細胞の収縮を抑え、血管を広げて血圧を下げます。
 カルシウム拮抗薬が腸管の平滑筋に働きかけると、その活動が抑制され、便秘が起こるとされています。
 降圧剤をはじめとして、頻尿や不眠の治療薬も、長期間にわたって服用することが多い薬です。治療薬の副作用によって便秘が起こるようになると、結局、患者さんは、長い期間、便秘に悩むことになります。

 しかも、この三つの種類の薬は、高齢になるほど併用する可能性が高まります。睡眠薬と頻尿の薬と降圧剤、この三つを飲む人も少なくないでしょう。
 しかし、薬による副作用で便秘が起こっていたとしても、元の病気の治療に支障をきたす可能性があるため、自分一人の判断で薬の服用をやめてはいけません。かかりつけ医に、便秘のことについて、改めて相談しましょう。
 例えば、睡眠薬ならば、ベンゾジアゼピン系以外の薬剤に替えてもらうなど、薬の処方を調整してもらってください。新たに下剤を出してもらってもいいでしょう。
 ただし、市販の下剤を常用したり、多用したりすることは控えてください。それが、新たな便秘の誘因となることが多いからです。かかりつけ医と相談の上、下剤を選ぶことをお勧めします。

※これらの記事は、マキノ出版が発行する『壮快』『安心』『ゆほびか』および関連書籍・ムックをもとに、ウェブ用に再構成したものです。記事内の年月日および年齢は、原則として掲載当時のものです。

※これらの記事は、健康関連情報の提供を目的とするものであり、診療・治療行為およびそれに準ずる行為を提供するものではありません。また、特定の健康法のみを推奨したり、効能を保証したりするものでもありません。適切な診断・治療を受けるために、必ずかかりつけの医療機関を受診してください。これらを十分認識したうえで、あくまで参考情報としてご利用ください。

この健康情報のエディター

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