【虚血性心不全】突然死を防ぐには「首動脈」のエコー検査が有効

【虚血性心不全】突然死を防ぐには「首動脈」のエコー検査が有効

救急診療では、心筋梗塞や狭心症といった血管障害を発症した患者さんが搬送されてきます。緊急を要する手術や治療に日々追われながら考えていたのは、「こうなる前に、防ぐことができたら」ということでした。【解説】杉岡充爾(すぎおかクリニック院長)


動脈硬化の早期発見こそ血管障害を防ぐ秘訣

 現在のクリニックを開設する以前、私は救急診療を併設した医療センターに循環器内科医として勤務していました。

 そこでは連日のように、心筋梗塞や狭心症といった血管障害を発症した患者さんが救急搬送されてきます。緊急を要する手術や治療に日々追われながら考えていたのは、「こうなる前に、防ぐことができたら」ということでした。
 そこで、治療だけにとどまらず、病気になりにくい体、病気と闘える体を作るための、血管のアンチエイジングの指導や、動脈硬化の早期発見のための検査を行えるクリニックを開設しました。特に力を入れているのが、動脈硬化の早期発見です。

 血管障害の大きな原因は動脈硬化ですが、これは急に起こるものではありません。昨日はなんでもなかった人が、翌日血管を見たらできていた、というものではないのです。動脈硬化は長い期間にわたって徐々に進行しますから、大事に至る前に進行を食い止めることが可能です。

 そのために当院では、動脈硬化の疑いがある人には「頸動脈エコー」を実施しています。この検査では、頸動脈の硬さや厚み、狭窄の程度を画像で確認して、動脈硬化の進行の度合いを判断することができます。
 頸動脈は、首の横にある太い血管です。首の左右に1本ずつあり、この血管を通して脳に大量の血液が流れていきます。
 頸動脈は非常に太いうえ、比較的体の外側に位置しています。そのため、エコー検査で簡単に状態を確認しやすいというメリットがあります。
 頸動脈エコー検査では、左右の血管の状態を15分程度かけて見ます。痛みもなく、横になっているだけなので、体に負担はかかりません。

頸動脈を見ることで全身の様子が見える

 ここで、動脈硬化について少し説明します。血管は、「内膜」「中膜」「外膜」の三つの層からできています。
 血管の内側にあり、血液と接しているのが内膜で、その表面は「内皮細胞」というフィルターのような層で覆われています。内皮細胞には、血液が固まるのを防いだり、血管を拡張させたりする働きがあります。

 高血圧や糖尿病などで内皮細胞が刺激されて傷つくと、その部分に、コレステロールや脂肪がお粥のような軟らかい沈着物となってたまり、「プラーク」と呼ばれるコブのような塊をつくります。その結果、内膜はどんどん厚くなります。

 プラークがある血管は硬く、内腔も狭いので、血流は悪くなり、血管が少し収縮しただけでも血流が途絶えます。この状態が動脈硬化です。

 また、プラークは破れやすく、破れるとそこに血の塊(血栓)ができます。それが血流に乗り、心臓の血管を詰まらせれば心筋梗塞を、脳の血管を詰まらせれば脳梗塞を起こします。

 動脈硬化を起こしやすい部位はいくつかありますが、その代表的な部位が頸動脈なのです。そして、頸動脈の血流速度や血流の状態は、全身の血流の状態を反映しています。さらに、頸動脈の動脈硬化が強いほど、その他の部位の動脈硬化も進行していると考えられます。

 これらのことから、頸動脈エコー検査で全身の動脈硬化の有無を判定できると考えられるのです。

20代から始まっていても自覚症状はほとんどない

 自覚症状がほとんどない動脈硬化の危険因子には、糖尿病や高血圧、高脂血症、喫煙、肥満などが挙げられますが、加齢も大きな原因の一つです。

 実は、内皮細胞への脂肪の沈着は、20歳代ころからすでに始まり、じわじわと進んでいます。ところが、50歳を過ぎて血管がだいぶ硬くなってきても、自覚症状はほとんどありません。

 内皮細胞が破れて、血栓で血管が詰まったときに急性心筋梗塞や脳梗塞などを起こし、そこで初めて症状が現れるのです。危険因子を持っている場合は、動脈硬化の進行はもっと早くなります。
 危険因子を持っている人はもちろんのこと、自覚症状がない人も、50歳を過ぎたら動脈硬化の検査を定期的に受けることをお勧めします。

杉岡充爾
 1965年、千葉県生まれ。千葉大学医学部卒業。97年より2014年3月まで船橋市立医療センター心血管センター循環器内科副部長として勤務。第一線で脳梗塞や脳出血、心筋梗塞など数多くの血管障害の患者の治療に当たる。14年にすぎおかクリニックを開業。

※これらの記事は、マキノ出版が発行する『壮快』『安心』『ゆほびか』および関連書籍・ムックをもとに、ウェブ用に再構成したものです。記事内の年月日および年齢は、原則として掲載当時のものです。

※これらの記事は、健康関連情報の提供を目的とするものであり、診療・治療行為およびそれに準ずる行為を提供するものではありません。また、特定の健康法のみを推奨したり、効能を保証したりするものでもありません。適切な診断・治療を受けるために、必ずかかりつけの医療機関を受診してください。これらを十分認識したうえで、あくまで参考情報としてご利用ください。

この健康情報のエディター

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