【パニック障害・トラウマ】不安・不眠・過食に効果 大学准教授が考案「合谷タッピング」

【パニック障害・トラウマ】不安・不眠・過食に効果 大学准教授が考案「合谷タッピング」

私は普段、臨床心理士として、さまざまなトラウマ(心の傷)を抱えた人たちを回復させるお手伝いをしています。治療には、身体的にアプローチする心理療法を用いています。中でも、不安を消すのに非常に有効な手法が、私が考案した「合谷タッピング」です。【解説】藤本昌樹(東京未来大学子ども心理学部准教授・臨床心理士)


不安を消すのに非常に有効

 私は普段、臨床心理士として、さまざまなトラウマ(心の傷)を抱えた人たちを回復させるお手伝いをしています。治療には、主にEMDR(※1)や、ボディ・コネクト・セラピー(BCT※2)といった、身体的にアプローチする心理療法を用いています。中でも、不安を消すのに非常に有効な手法が、私が考案した「合谷タッピング」です。
 
やり方は至って簡単です。不安やストレスを感じたときに、人さし指と中指の2本の指の腹で、手の甲の親指と人さし指の骨が交差するところにある「合谷」のツボを、心地いい強さで1分以上、リズミカルにトントンとたたくだけです。

 不安やストレスを抱えた場合、人は難しいことはできません。そんなときでも、合谷タッピングなら手軽にやれて、効果を実感できます。
 そもそも、合谷のツボにはいろいろな効果があり、国内外を問わず、さまざまな研究結果が報告されています。たとえば、合谷を1分以上刺激することで、脳の血流量が上昇したり、出産時の痛みが緩和されたりするというものです。

脳の血流量が増えて恐怖が消去できる

 通常、人間が不安やストレスを感じたときは、情動や感情を司る脳の大脳辺縁系にある「扁桃体」という部分が過剰に活性化します。さらにPTSD(心的外傷後ストレス障害)の患者さんに関しては、扁桃体が活性化しているときは、トラウマや恐怖の消去にかかわる、脳の前部帯状回の血流が悪くなると言われています。つまり、トラウマや恐怖を消去するには、脳の前部帯状回の血流をよくすればいいのです。

 そこで、私は合谷を刺激することにより、脳全体、ひいては前部帯状回の血流量が上がり、トラウマや恐怖が消去できると考えました。
 人間にはもともと「耐性の窓」と呼ばれる、ストレスを許容できる範囲があると言われています。私たちの情動や感情には、許容できる幅があり、高まりすぎると怒りになり、下がりすぎると気分が落ち込んでしまいます。普通の人は、感情が多少起伏しても、許容できる範囲内に戻れる回復力が備わっています。

 一方、トラウマがある人は、興奮してパニックになったり、ピリピリして眠れなくなったり、逆にドーンと落ち込んでうつになったりします。
 さらに、子どもの頃から虐待などのストレスを受け続けてきた人は、ストレスを許容できる幅自体が狭くなり、ちょっとした出来事でも精神的に不安定になってしまうのです。

 そこで私は、許容できる幅自体を広げ、不安やストレスによって脳の扁桃体が活性化するのを抑制する手段として、BCTで合谷タッピングを用いるようになりました。

6割がすぐに効果を実感

 合谷タッピングを、主にパニック障害に悩んでいる人に試してもらったところ、239人中、「とても効果を感じた」人は14.64%の35人、「まあまあ効果を感じた」人は45.19%の108人と、約6割の人たちが効果を即実感しました。
 その心身の変化は多岐にわたり「不安や恐怖が和らいだ」「気持ちが落ち着いた」「イライラが消えた」「心が軽くなった」「緊張がとけた」「体の力が抜けて、呼吸が楽になった」「胸のモヤモヤがなくなった」「眠くなった」といった声が寄せられています。

 私は普段、トラウマや不安を抱えた患者さんへのセラピー(BCT)で合谷タッピングなどを取り入れた工夫をしていますが、その8割程度に症状の改善等の効果が見られました。
 例えばある30代の男性は、職場の同僚が自殺をして以来、不安を感じて家に帰れなくなったり、過食をしたり、夜眠れなくなったりしました。会社では誰かが席にいないと、また同じことが起こるのではないかという不安にかられ、極度の緊張状態が続いていたのです。この男性には過去に大切な人との別離体験があり、同僚の死によって、そのトラウマが想起されていました。

 そこで、セラピーの中で合谷タッピングを活用したBCTを行ったところ、たった1回でトラウマや不安、過食、不眠の症状が消えたのです。
 他にも、育児に悩んでいた女性がポジティブな考え方や行動に変わったり、多重人格のかたがスムーズに人格が統合されたという症例もあります。
 臨床の場で、合谷は思った以上に万能のツボだと実感しています。日常の中で、不安やストレスを感じたときは、ぜひ合谷タッピングを取り入れてみてください。

ふじもと まさき
1973 年、東京都生まれ。東京学芸大学大学院教育学研究科心理学講座修了。東京医科歯科大学大学院保健衛生学研究科博士後期課程修了。静岡福祉大学准教授、桐生大学准教授を経て現職。臨床心理士、社会福祉士、精神保健福祉士。トラウマケア専門カウンセリングルームSeeding Resource 代表。nico 株式会社エグゼクティブ・アドバイザー

※これらの記事は、マキノ出版が発行する『壮快』『安心』『ゆほびか』および関連書籍・ムックをもとに、ウェブ用に再構成したものです。記事内の年月日および年齢は、原則として掲載当時のものです。

※これらの記事は、健康関連情報の提供を目的とするものであり、診療・治療行為およびそれに準ずる行為を提供するものではありません。また、特定の健康法のみを推奨したり、効能を保証したりするものでもありません。適切な診断・治療を受けるために、必ずかかりつけの医療機関を受診してください。これらを十分認識したうえで、あくまで参考情報としてご利用ください。

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