腕・肘・手首・指の【腱鞘炎】痛みや痺れの症状を予防、改善する "正しい姿勢"

腕・肘・手首・指の【腱鞘炎】痛みや痺れの症状を予防、改善する "正しい姿勢"

肩が動きにくい場合、肩だけをマッサージでほぐしたり、ストレッチでリラックスさせたりするだけでは、根本的な対策にはなりません。大もとである正しい姿勢を身につけることから始め、肩の動きをよくして、ひじや手首への負担をへらしましょう。【解説】高林孝光(鍼灸師・柔道整復師・アスリートゴリラ鍼灸接骨院院長)


基本中の基本は「正しい姿勢」

 腱鞘炎にならない、そして、腱鞘炎を撃退するためのポイントを紹介します。前回紹介したセルフケアとともに日常生活にとり入れ、痛みや不便のない毎日を早く取り戻してください。

 生活術のポイントはいくつかありますが、その基本中の基本は「正しい姿勢」です。正しい姿勢とは、骨盤が真っすぐに立って、脊椎(背骨)の自然なS字湾曲(生理的湾曲)があり、「気をつけ」の姿勢をしたときに、耳、肩、股関節、足首が一直線になる姿勢です。イスに座るときも、骨盤が真っすぐ立って背骨が自然なS字湾曲になるのが理想的です。

 立った状態でも座った状態でも、ベースに正しい姿勢があれば、何か作業するときに、ひじや手首、指への負担が少なくてすみ、腱鞘炎のリスクが低くなります。しかし、そもそもの姿勢が悪ければ、作業するときにはさらに悪い姿勢になり、ひじや手首、指への負担が大きくなります。

悪い姿勢の代表は、ネコ背

 悪い姿勢の代表は、ネコ背です。ネコ背は骨盤が後傾し、脊椎の自然なS字湾曲がなくなり、肩が前に出てあごが上がります。こうなると全身が動かしにくくなり、体のどこかに負担がかかって、腰痛やひざ痛などさまざまな症状となって現れます。

 ネコ背で腱鞘炎と深い関係があるのは、肩が動きにくくなることです。試しに正しい姿勢をして、両手を上げてバンザイをしてみてください。肩が動く感覚、腕がどこまで上がるかの感覚を覚えておいてください。次に、意識的にネコ背にして、同じように両手を上げてバンザイをしてください。

 どうでしょう。ネコ背にすると、バンザイで肩を動かすときに窮屈さを感じたり、手が上がりにくかったりするはずです。
 私たちは、体のどこかの動きが悪いと、その動きをほかの部位を使って補おうとします。これは意識的にそうしているのではなく、体の仕組みとして無意識に行っています。

 床にある荷物をたなに上げようとするとき、肩の動きが悪い人はひじや手首を余計に使って持ち上げます。パソコンで作業するときも、肩の動きが窮屈なために、ひじから先や手首だけを使ってマウスを動かしたりキーボードを打ったりします。

 ネコ背で肩の動きが悪くても、1~2日なら、ひじや手首に腱鞘炎が起こることはありません。しかし、ネコ背などの姿勢の悪さは生活の習慣からくるクセのようなものです。毎日毎日、何カ月も何年も負担をかけ続けると、ひじや手首はがんばりきれずに、腱鞘炎という悲鳴を上げてしますのです。

あおむけに寝て両肩が床に着くかを確かめる

 明らかにネコ背とわかる人は、いますぐにでも正しい姿勢を心がけましょう。ただし、ネコ背の自覚がなかったり、ネコ背には見えなくても実は肩の動きが悪くなる姿勢をしていたりするケースも多いものです。肩の動きが悪くなる姿勢かどうかをチェックするには、あおむけに寝て両肩が床につくかを確かめてください。ふだん悪い姿勢をしていなければ、力を入れるなど意識しなくても両肩が床についているはずです。

 姿勢が悪い場合は、両肩あるいはどちらかの肩が床から浮いているはずです。意識して力を入れれば肩が床につく人は軽症ですが、肩にグーッと力を入れて床に押しつけようとしてもどうしてもつかない人は重症です。

 どうしても肩が床につかない人は、かなり以前から姿勢が悪く、肩が動きにくい状態が続いています。ひじや手首にも同じ年月だけ負担がかかっていて、いまは痛みがなくても、いずれはひじや手首が痛みだす腱鞘炎予備軍といえます。

パソコンを使うときの正しい姿勢

 肩が動きにくい場合、肩だけをマッサージでほぐしたり、ストレッチでリラックスさせたりするだけでは、根本的な対策にはなりません。大もとである正しい姿勢を身につけることから始め、肩の動きをよくして、ひじや手首への負担をへらしましょう。

 パソコンを使うときは、正しい姿勢を身につけることで、手首やひじにかかる負担を最小限に抑えることができます。パソコンを使うときは、以下の姿勢を心がけてください。

①イスに深く座る
②足の裏をしっかり床につける
③背すじを伸ばし、軽くあごを引く
④ひじの角度が90度になるようにする
⑤手首が甲側に曲がらないようにする

 オフィスのデスクやイスは会社の備品なので、一人ひとりの体格に合わせるのはなかなかむずかしいかもしれません。それでも、イスやモニターの高さを調節したり、足元に台を置いて足を床につけたりするなど工夫をしてできるだけ正しい姿勢でパソコンを操作しましょう。

高林孝光(アスリートゴリラ鍼灸接骨院院長)
 1978年、東京都生まれ。東京柔道整復専門学校、中央医療学園専門学校卒業。2016年、車イスソフトボール日本代表チーフトレーナー。上肢のケガが最も多い球技スポーツであるバレーボールの同一大会で、異なるチームに帯同して全国2連覇した、日本初のスポーツトレーナー。

※これらの記事は、マキノ出版が発行する『壮快』『安心』『ゆほびか』および関連書籍・ムックをもとに、ウェブ用に再構成したものです。記事内の年月日および年齢は、原則として掲載当時のものです。

※これらの記事は、健康関連情報の提供を目的とするものであり、診療・治療行為およびそれに準ずる行為を提供するものではありません。また、特定の健康法のみを推奨したり、効能を保証したりするものでもありません。適切な診断・治療を受けるために、必ずかかりつけの医療機関を受診してください。これらを十分認識したうえで、あくまで参考情報としてご利用ください。

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