寝る前20分「足を上げる」だけで 隠れ心不全が予防できる

寝る前20分「足を上げる」だけで 隠れ心不全が予防できる

海外の研究機関が高齢者を対象に行ったアンケートでは、高齢者が日ごろ「つらい」と感じている症状のトップが夜間頻尿という結果が出ています。【解説】菅谷公男(北上中央病院副院長・サザンナイトラボラトリーLLP代表)


意外と多い「水の飲み過ぎ」

 夜、排尿のために何度も目が覚めてしまい、それがくり返される。睡眠の質だけでなく、日中の生活の質まで落としている状態が「夜間頻尿」です。
 海外の研究機関が高齢者を対象に行ったアンケートでも、高齢者が日ごろ「つらい」と感じている症状のトップが夜間頻尿という結果が出ています。

 やっかいなのは、夜間頻尿が病気の原因になることがある、ということです。
 夜間頻尿のある人は、心筋梗塞や脳梗塞(心臓や脳の血管が詰まって起こる病気)などの血管疾患を発生しやすく、生存率も低くなることがスウェーデンの研究機関の調査で確認されています。泌尿器科の医師としての経験でも、確かに、夜間頻尿の患者さんに血管の疾患を抱えている人が多いと感じます。

 そんな私が、夜間頻尿に悩む患者さんにまずアドバイスするのが、「水の飲み過ぎに注意すること」です。
 一見、単純なことですが、これだけで夜間頻尿が改善することは珍しくありません。
 とりわけ、高齢者の夜間頻尿は、水の飲み過ぎによるものが意外と多いのです。
 そもそも、年を取ると唾液の分泌が低下して、のどが渇きやすくなり、それに伴い脱水症状を怖れる傾向が強くなります。その結果、高齢者ほど水を飲み過ぎてしまうわけです。
 なかには、脳梗塞の予防になるからと、水をたっぷり飲んでから寝ることを習慣にしている人もいるようです。これについては科学的な根拠はなく、夜間頻尿の原因になるだけだと思われます。

 水の飲み過ぎの次に、夜間頻尿の原因として挙げられるのは、年齢とともに血管から血液中の水分がもれやすくなって起こる、「むくみ」です。むくみがあると、体内の水分量の増加を招くため、夜間の尿の量も増え、目が覚めてしまうのです。
 心臓病や高血圧なども夜間頻尿の原因となることが知られています。
 心不全になると、心臓の負担を少しでも減らすために、BNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド)という、排尿を促進するホルモンが分泌されます。
 高血圧の人が早朝や夜間に血圧が上がると、カテコラミンという神経伝達物質の分泌量が上昇しますが、この物質も尿意を促進する物質なのです。こうした理由で、心臓病や高血圧の人の多くが夜間頻尿に悩まされることになるわけです。

就寝前に20~30分、足を心臓より高く上げればよい

「トイレの回数が減った!」

 夜間頻尿の改善策として、お勧めしたいのが、就寝前の「足上げ」です。
 実際に、夜間頻尿の患者さんには足上げを自宅でやるよう勧めていますが、これまでに複数の患者さんに「トイレに起きる回数が減った」といった成果が上がっています。

 足上げのやり方は、いたって簡単です。
 就寝の1時間前に数十分間、心臓より足を高く上げればいいのです。枕、イス、クッションなどを利用してください。ここでは、イスを使った足上げのやり方をご紹介しましょう。

 まず、座面が低めのイスを用意してください。
 あお向けになり、両足を座面に乗せます。腰は床にぴったりつけて、両手は自然な位置に置きます。両足は、ひざ下からふくらはぎの部分を乗せましょう。腰や足に苦痛のない範囲で、足を上げることが大切です。就寝の1時間前に20~30分程度を目安に足を上げましょう。テレビを見ながらでもOK。リラックスしてやってください。

 就寝前にこの姿勢を取ることで、足にたまった水分が、寝る前に尿として排せつされ、むくみも解消されていきます。
 足上げで、心臓や血管のポンプ機能も調整されるので、心不全や高血圧の予防効果も期待できます。とりわけ、自覚症状のない「隠れ心不全」の予防には効果的です。

菅谷公男
 1981年、筑波大学医学専門学群卒業。筑波大学附属病院、秋田大学医学部、旭川医科大学、ピッツバーグ大学医学部客員助教授、琉球大学医学部准教授を経て、2009年より現職。尿の出の悪さ、頻尿や尿もれ、膀胱の痛みといった排尿障害の治療が専門。テレビ『ためしてガッテン』(NHK総合)などで活躍中。

※これらの記事は、マキノ出版が発行する『壮快』『安心』『ゆほびか』および関連書籍・ムックをもとに、ウェブ用に再構成したものです。記事内の年月日および年齢は、原則として掲載当時のものです。

※これらの記事は、健康関連情報の提供を目的とするものであり、診療・治療行為およびそれに準ずる行為を提供するものではありません。また、特定の健康法のみを推奨したり、効能を保証したりするものでもありません。適切な診断・治療を受けるために、必ずかかりつけの医療機関を受診してください。これらを十分認識したうえで、あくまで参考情報としてご利用ください。

この健康情報のエディター

関連する投稿


【高血圧対策レシピ】血圧を下げる食べ物は「バナナ酢、酢ピーナッツ、酢牛乳」

【高血圧対策レシピ】血圧を下げる食べ物は「バナナ酢、酢ピーナッツ、酢牛乳」

お酢の健康効果として代表的なのが、高めの血圧を下げる降圧作用です。今回は、お酢を毎日の食生活に取り入れやすくする、四つの方法をご紹介します。【解説】小泉幸道(東京農業大学応用生物科学部醸造科学科教授)、岡田研吉(銀座・研医会診療所漢方科)、村上祥子(料理研究家・管理栄養士)


【高血圧の原因】睡眠時の口呼吸で血圧が上がる!鼻呼吸トレーニングには「あいうべ」

【高血圧の原因】睡眠時の口呼吸で血圧が上がる!鼻呼吸トレーニングには「あいうべ」

高血圧の原因はさまざまですが、口呼吸もその一つです。私は、特に睡眠中の口呼吸が、睡眠の質を低下させ、血圧を上げる要因になっていると考えています。そもそも、安静時は、鼻呼吸が正しい呼吸法です。安静時にもかかわらず、口を開いたままになる口呼吸は、不自然極まりない呼吸法といえます。【解説】今井一彰(みらいクリニック院長)


歯周病を改善しサラサラ唾液にする「耳の下もみ」で血圧も下がる理由

歯周病を改善しサラサラ唾液にする「耳の下もみ」で血圧も下がる理由

「耳の下もみ」は文字どおり、耳の下をもんでマッサージする健康法です。歯周病だけでなく、生活習慣病の予防・改善などに効果的ですが、高血圧の解消に特に効果を上げています。では、なぜ、耳の下もみが高血圧の予防・改善に役立つのでしょうか。【解説】齋藤道雄(齋藤ファミリーデンタル院長・医学博士)


【医師解説】10分つかるだけで高血圧が改善!血圧を下げる「お風呂の入り方」

【医師解説】10分つかるだけで高血圧が改善!血圧を下げる「お風呂の入り方」

和温療法を行うと、全身の血管機能が改善し、動脈・静脈が拡張して血管抵抗が低下するため、心臓の負担が軽減し、血液を大動脈へ送り出しやすくなります。その結果、心拍出量が増加するので、心不全の改善にうってつけの療法です。【解説】鄭忠和(和温療法研究所所長・獨協医科大学特任教授)


【血圧を下げる】高血圧持ちの共通点は「くび」が硬いこと オススメは「首の温湿布」

【血圧を下げる】高血圧持ちの共通点は「くび」が硬いこと オススメは「首の温湿布」

手首、足首がかたいということは、手首や足首から先の血行が悪いということです。心臓は、その血流の悪くなっている末梢にも血液を送り届けようとします。 流れの悪いところに血液を届けるためには、心臓は余分に圧を高めなければなりません。結果として、血圧が上がることになります。【解説】福辻鋭記(アスカ鍼灸治療院院長)


最新の投稿


【ニキビ・アトピー性皮膚炎】美のセレブも愛用「砂糖」の美肌効果がすごい!砂糖パックのやり方とは

【ニキビ・アトピー性皮膚炎】美のセレブも愛用「砂糖」の美肌効果がすごい!砂糖パックのやり方とは

砂糖には創傷治癒作用、つまり傷を治す働きがあり、医薬品として認められています。イギリスでは、傷薬として砂糖が使われている病院もあり、またアメリカや日本で「おばあちゃんの知恵」として砂糖はスキンケアに使われてきました。【解説】幟立真理(砂糖スキンケア指導・株式会社アビサル・ジャパン代表)


【手荒れ・アトピー・イボが改善】大学で研究中「砂糖スキンケア」の効果とは?顔ダニも減少した!

【手荒れ・アトピー・イボが改善】大学で研究中「砂糖スキンケア」の効果とは?顔ダニも減少した!

看護の基本は、自分の手で患者さんをケアすることです。そのために看護師は手洗いをする機会が多く、ひどい手荒れに悩まされている人は珍しくありません。砂糖スキンケアでかゆみが軽減するとともに、かぶれることもなくなり、かき傷が治っていきました。【解説】山口求(藍野大学医療保健学部・看護学科教授)


【スマホ首】は頚椎症の入り口 首こり・肩こりを解消するには?

【スマホ首】は頚椎症の入り口 首こり・肩こりを解消するには?

電車の中などでスマホを見るときも、できるだけ目の高さ近くに持ってくるようにします。片方の手で長く持ち上げていると腕が疲れるので、逆の手でひじを支えるとらくになります。タブレット端末の大きさによりますが、小型のものならこの方法が使えます。【解説】竹谷内康修(竹谷内医院カイロプラクティックセンター院長)


【医師解説】ストレスと病気は関係している!気を「楽」にして不調を解消する気功法

【医師解説】ストレスと病気は関係している!気を「楽」にして不調を解消する気功法

東洋医学の考え方の基本として、「気・血・水」というものがあります。なかでも私たちの健康を大きく左右するのが「気」。その気の流れを詰まらせる原因の1つが、ストレスです。多くの現代人は、ストレスによって気の流れが滞り、さまざまな病気に陥りやすくなっていると考えられます。【解説】能見登志惠(都筑ふれあいの丘クリニック院長)


【やり方】不調・生活習慣病を撃退する!1分でできる「お気楽」気功法

【やり方】不調・生活習慣病を撃退する!1分でできる「お気楽」気功法

お気楽気功の特長は簡単にできること。難しく考えず、体と心に気持ちのよいことをして楽しむことがいちばんのポイントです。回数はあくまでも目安ですから、気持ちよく感じる範囲で増減してかまいません。気軽に気楽に気持ちよく、お気楽気功を楽しんで続けてください。【解説】能見登志惠(都筑ふれあいの丘クリニック院長)


ランキング


>>総合人気ランキング