【医師が明快解説】脊柱管狭窄症を悪化させる原因は「ストレス」と医師が警告

【医師が明快解説】脊柱管狭窄症を悪化させる原因は「ストレス」と医師が警告

痛みやしびれが解消しないというケースにおいて、大きく影響していると考えられるのが、「心理的なストレス」です。【解説】大谷晃司(福島県立医科大学教授)


原因不明の腰痛の多くに 心理的ストレスが関与

 脊柱管狭窄症は、神経の通り道となっている脊柱管が変形して狭くなり、神経を圧迫して痛みやしびれを起こす病気です。
 その典型的な症状として、「間欠性跛行」が挙げられます。これは、歩いているうちに痛みやしびれで歩けなくなり、再び歩くまでにしばらく休む必要が生じるというものです。
 脊柱管狭窄症の治療法としては、薬物療法のほか、コルセットを使った装具療法や神経ブロック注射などがあり、まずは経過を観察します。
 一方、日常生活では、立ちっぱなしの姿勢を避ける、体を後ろに反らす姿勢を取らない、といったことに注意することが重要です。
 こうした治療や日常での留意を行っても症状が進行し、足のしびれがひどくて歩けなくなるどころか、尿が出にくくなる「膀胱直腸障害」が起こってきたら、手術を検討することになります。
 もちろん、手術が奏功すれば問題ありません。しかし、なかには、手術が成功して脊柱管の狭窄が解消されたのに、思ったように痛みやしびれが回復しないケースもあります。
 また、もともと狭窄がひどくない軽症の患者さんでも、治療やセルフケアがうまくいかず、痛みやしびれが解消しないケースが見受けられます。
 このように、なかなか痛みやしびれが解消しないというケースにおいて、大きく影響していると考えられるのが、「心理的なストレス」なのです。
 脊柱管狭窄症に限りませんが、近年、腰痛と心理的なストレスの関係が、特に注目を集めています。
 例えば、3ヵ月以上痛みが続く慢性腰痛の場合、その大半の原因はよくわかっていません。実は、こうした原因不明の慢性腰痛の多くに、心理的ストレスが関与しているのです。
 火事場のばか力をご存じで
しょう。極端に追い詰められると、ふだん以上の力が出せることをいうものです。同様に、私たちの脳には、その必要があれば、痛みをあまり感じないようにさせるシステムが存在しています。命が危険にさらされた場合などに痛みを抑制する神経伝達物質が脳で作られ、必死で逃げる・闘うといった行動を取れるようにしているのです。
 そのシステムは、私たちの脳で稼働しています。具体例を挙げると、スポーツ選手が試合中に激しく相手とぶつかって、ケガや骨折をすることがあります。試合中は、痛みをあまり感じなかったり、骨折していても、試合終了まで動けてしまうことも珍しくありません。これも、試合終了まで、痛みを抑制する脳のシステムが働いていたから起こることです。

自分の好きなことをして プラス思考を心がけよ

 ところが、強い心理的ストレスが加わると、痛みを抑制する脳のシステムが機能低下を起こします。痛みを抑制する神経伝達物質を脳内で作ることができなくなり、痛みを通常以上に感じてしまうのです。本来1でよいはずの痛みを、10にも100にも感じてしまいます。
 慢性腰痛のなかには、こうした心因性の腰痛もあることがわかっています。脊柱管狭窄症においても、「手術をしたのに痛みもしびれも全然なくならない」という症例について、こうした心因性のものである可能性もあるでしょう。
 ただ、重要なのは、慢性腰痛にしても、脊柱管狭窄症にしても、その真の原因が心理的ストレスかどうかではありません。「強い心理的ストレスがかかった状態では、治りが悪くなり、痛みやしびれを感じやすくなる傾向がある」という点なのです。
 脊柱管狭窄症の手術が成功したあと、心理的ストレスを感じている人と、そうでない人とでは、術後の経過が違ってくる可能性があります。ですから、脊柱管狭窄症をより早く快方に向かわせるためには、できるだけ心理的ストレスがかからないようにすることが重要です。
 複雑な現代社会に生きる私たちは、常になんらかのストレスにさらされています。これを解消するとはいっても、なかなか簡単ではないでしょう。
 とはいえ、それほど難しく考える必要はありません。ストレス解消の方法は、人によりさまざまです。まずは「自分の好きなことをする」ことを心がけましょう。日ごろ控えている甘い物を食べたりお酒を飲んだりするのでもいいですし、腰の負担にならない程度に体を動かすのもよいでしょう。
 ある慢性腰痛の患者さんの
ケースでは、イヌを飼い始めたら、世話に夢中になっているうちに痛みがすっかり解消しました。ほかにも、飲み会に行って愚痴を聞いてもらったら、よくなったという人もいます。ぜひ、自分なりのストレス解消や気分転換の方法を探してみてください。
 また、できるだけプラス思考に努めることも大切です。痛みやしびれがつらいときも、「しびれて困るけれど、まだ、歩けるからいい」と考えましょう。間欠性跛行になっても、「10分しか歩けない」と嘆くのではなく、「まだ、10分も歩ける!」と楽天的に考えるのです。できるだけポジティブな方向に考える習慣をつけることは、痛みを減らす助けとなるのです。

大谷晃司
 福島県立医科大学医療人育成・支援センター兼整形外科教授。1990年、福島県立医科大学医学部卒業。14年より現職。専門は、脊椎・脊髄の外科、高齢者の整形外科、慢性疼痛の治療。共著に『長引く腰痛は脳の錯覚だった』(朝日新聞出版)がある。

これらの記事は、マキノ出版が発行する『壮快』『安心』『ゆほびか』および関連書籍・ムックをもとに掲載しています。記事内の年月日および年齢は、原則として掲載当時のものです。

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