放置すると歩行も困難になる【変形性股関節症】―症状は?治療法は?

放置すると歩行も困難になる【変形性股関節症】―症状は?治療法は?

変形性股関節症は、関節軟骨がすり減って痛みや炎症を起こす病気です。40~50代に発症しやすく、特に中高年の女性に多く見られます。放っておくと、初期、進行期、末期と症状が進んでいきます。痛みは悪化し、歩行障害などを招き、イスから立ち上がることさえつらくなったりします。【解説】井上明生(柳川リハビリテーション病院名誉院長)


さまざまな動作に関係する重要な関節

 股関節は、両足の付け根にある大きな関節です。上半身と下半身をつなぎ、身体を曲げる、反らす、歩く、立つなどのさまざまな動作にかかわる重要な関節です。
 この関節に痛みや違和感を覚えることは、ひざ関節に比べて少ないのですが、痛みが出ると、日常生活に支障をきたします。

 股関節痛の原因として代表的なのが、変形性股関節症です。これは、関節軟骨がすり減って痛みや炎症を起こす病気です。40~50代に発症しやすく、特に中高年の女性に多く見られます。
 変形性股関節症を放っておくと、初期、進行期、末期と症状が進んでいきます。痛みは悪化し、歩行障害などを招き、イスから立ち上がることさえつらくなったりするのです。
 進行を遅らせるためには、股関節にかかる負担を減らすことです。
 別の言い方をすると、痛みを伴うことは避けることです。具体的には、杖を使用する、歩く量を減らす、重い荷物は持たない、減量するなどを推奨しています。それと同時に、特に初期の患者さんに対しては、痛み取りの薬をむやみに処方することを避けるようにしています。

 それでは、ここで股関節の構造を示します。
 股関節は、下の図のように、臼蓋(寛骨臼)と呼ばれる股関節の骨盤側のくぼみに、大腿骨頭(太ももの骨の先端の丸い部分)がはまった状態になっています。そして正常な状態では、大腿骨頭の直径の約80%を臼蓋が覆っています。
 臼蓋と大腿骨頭は、それぞれ関節軟骨という弾力性のある組織で覆われ、さらに両者は関節包で包まれて関節液で満たされています。関節軟骨に関節液が潤滑油として働いているおかげで、関節は滑らかに動くことができるのです。

臼蓋などの形態異常が原因のものが圧倒的に多い

 変形性股関節症には、1次性と2次性のものがあります。
 1次性は、股関節の形態に異常はなく、ほとんどが加齢による変化ですが、一部、肥満や重労働などで、過大な負荷が股関節にかかって起こるケースもあります。それに対して2次性は、臼蓋などの形態の異常に原因があって起こります。

 欧米で多いのは1次性ですが、日本ではそのほとんどが2次性です。特徴的なのは、先天性股関節脱臼(出生時、または出生直後に股関節が外れた状態)の治療後や、先天性股関節脱臼の治療歴のない臼蓋形成不全が圧倒的に多いことです。

 変形性股関節症には、四つの病期があります。これは、あくまでレントゲン写真を見て分けられるので、診断にはレントゲン撮影が不可欠です。

➊前関節症期
 臼蓋形成不全など、股関節の形に異常があって、股関節に歩行時痛を覚えますが、レントゲン写真では、関節軟骨のすり減りなどの特有の関節症変化は見られません。
➋初期
 関節軟骨が傷ついて、すり減りだし、関節のすき間(関節裂隙)がやや狭くなっていて、歩行時痛があります。
➌進行期
 関節軟骨のすり減りが進んで、関節のすき間がさらに狭くなります。関節内で骨の一部がぶつかり合い、臼蓋や大腿骨頭に、骨棘というトゲ状の骨が見られるようになります。痛みや動きの制限が強くなります。
➍末期
 変形性股関節症の最終段階です。関節軟骨がほぼ失われ、骨同士がぶつかるようになります。安静にしていても痛みの出ることがあり、歩いたり立ったりしにくくなって、生活に支障をきたします。

自分の骨を使って治す関節温存手術

 変形性股関節症の治療法は、大きく分けて三つあります。
①人工関節置換術(人工関節に置換する方法)
②関節温存手術(自分の骨を使っての手術)
③保存療法(杖の使用、装具、運動療法など)

 保存療法を続けても改善されない場合は、手術が検討されます。
 手術には、大きく分けて、関節を温存する関節温存手術と、人工関節に置き換える人工関節置換術があります。
 人工関節置換術は、劇的な改善が見られますが、人工関節に寿命があり、長期的には再置換手術が必要になる確率が高くなります。
 そこで、私たちは関節を温存する手術の一つ、キアリ骨盤骨切り術(以下、キアリ手術)を多用しています。この手術は、初期から進行期、末期にまで有効で、うまくいけば一生に一度の手術で済みます。

 キアリ手術は、骨盤を横に切り、下骨片(下側の部分)を内側にずらして臼蓋の面積を広げます。そうすることで、体重のかかる面が広がって、股関節の負担を軽減する手術です。
 キアリ手術は、病期が初期であれば、年齢は問わず誰にでも行える手術です。何歳であっても、股関節の形を整えることができます。病期が進行・末期の段階では、一応、適応は60歳以下としていますが、他の手術と違って、手術後、新たに股関節の軟骨を再生させることができるのが、大きなメリットです。

 しかし、切った骨がくっついて軟骨が再生するためには、患者さんの修復力や術後のリハビリテーションが重要になります。そのため、治療期間が長くかかります。
 加えて近年、私たちは、手術後のリハビリテーションや、「なるべく手術をしたくない」という患者さんに対し、「貧乏ゆすり(ジグリング)」という治療法を指導し、成果を上げています。

 貧乏ゆすりは、すり減った軟骨を再生させることによって、変形性股関節症の進行を止めたり、遅らせたりする効果があります。それらのことはレントゲン写真によって実証されました。

→軟骨を再生させる【貧乏ゆすり(ジグリング)】のやり方はコチラ

股関節症治療の権威・井上先生

これらの記事は、マキノ出版が発行する『壮快』『安心』『ゆほびか』および関連書籍・ムックをもとに掲載しています。記事内の年月日および年齢は、原則として掲載当時のものです。

これらの記事にある情報は、効能や効果を保証するものではありません。専門家による監修のもと、安全性には十分に配慮していますが、万が一体調に合わないと感じた場合は、すぐに中止してください。

この健康情報のエディター

関連する投稿


【医師の明快解説】股関節が痛い!変形性股関節症の原因と症状、治療法まで

【医師の明快解説】股関節が痛い!変形性股関節症の原因と症状、治療法まで

股関節が痛い原因は、大腿骨頭壊死症や関節リウマチなど、さまざまな原因がありますが、代表的なものは変形性股関節症です。実は、日本人の女性にとって、股関節は大きな「弱点」なのです。私のクリニックを訪れる人に関して言えば、実に9割以上が変形性股関節症で、その9割以上が女性です。【解説】石部基実(石部基実クリニック院長)


【医学部教授が解説】股関節の違和感から激痛まで 早期発見するためのチェックリスト

【医学部教授が解説】股関節の違和感から激痛まで 早期発見するためのチェックリスト

股関節は、人体で最も大きな関節で、体重を支える重要な役目をしています。その股関節のトラブルの代表が、「股関節痛」です。股関節の痛みの多くは「変形性股関節症」という病気によって起こり、進行すると、日常生活の支障が大きくなります。【解説】高平尚伸(北里大学医療衛生学部教授) 


【医師の解説】変形性股関節症は「貧乏ゆすり」で治せる!人工股関節の手術も回避できる!

【医師の解説】変形性股関節症は「貧乏ゆすり」で治せる!人工股関節の手術も回避できる!

変形性股関節症の治療に、貧乏ゆすりを取り入れた場合、その軟骨の再生の変化を、レントゲン写真ではっきりと確認することができます。ここでは、そんな症例をいくつかご紹介しましょう。【解説】井上明生(柳川リハビリテーション病院名誉院長) 


鍼灸師がこっそり教える【即効】指のまた刺激ーどこをどうやって?

鍼灸師がこっそり教える【即効】指のまた刺激ーどこをどうやって?

指のまた刺激で効果が期待できる主な症状は、血行改善、高血圧、呼吸器の不調、心疾患、冷え症、 便秘などがあります。そのほか、刺激する場所によってですが、首こり・肩こり、股関節痛には即効性があります。その理由を説明しましょう。【解説】松岡佳余子(アジアンハンドセラピー協会理事・鍼灸師)


【即効】股関節の痛みや違和感を「小指刺激」で治す

【即効】股関節の痛みや違和感を「小指刺激」で治す

小指刺激は、股関節の痛みや違和感を抱える人向けに考案したセルフケアです。小指刺激は、指切りげんまんをするときのように、両手の小指を深くからめて、小指の付け根を強く刺激するものです。この療法が股関節痛に効果的な理由を説明しましょう。【解説】松岡佳余子(アジアンハンドセラピー協会理事・鍼灸師)


最新の投稿


【お腹やせ】排泄力を高める 即効「生大根ダイエット」のやり方

【お腹やせ】排泄力を高める 即効「生大根ダイエット」のやり方

多くのかたのダイエット相談を受ける中で、私はあることに気がつきました。おしっこやうんちなどの老廃物を体にため込んでいる人はやせにくく、体型もどんどん悪くなってしまう、ということです。【解説】蓮水カノン(キレイファクトリー主宰)


【笑うことの効果】免疫力が高まり健康増進!ガンとの共生・克服も可能

【笑うことの効果】免疫力が高まり健康増進!ガンとの共生・克服も可能

私は、医師として40年以上、病気に悩む人々を診てきました。また、現役の産婦人科医師として、年間100名以上の出産に立ち合っています。そこで学んだのは、「逝き方とは生き方であり、笑進笑明こそが、自分を進化させる21世紀のライフスタイル」だということです。【解説】昇 幹夫(日本笑い学会副会長・産婦人科医・麻酔科医)


【色の効果】血圧不安定、イライラやうつの症状は「濃いピンク」で改善する!

【色の効果】血圧不安定、イライラやうつの症状は「濃いピンク」で改善する!

私は診察の際、患者さんにカラーチャートをお見せして、好きな色を選んでいただきます。好きな色を聞くことで、その人の性格や考え方の傾向、心と体の状態を大まかにつかむことができるからです。色は健康状態を知るだけでなく、心身の不調の改善にも役立ちます。【解説】春田博之(芦屋こころとからだのクリニック院長)


【即効】便秘解消すぐに出る!便秘薬が不要になった人が続出の「耳ヨガ」のやり方

【即効】便秘解消すぐに出る!便秘薬が不要になった人が続出の「耳ヨガ」のやり方

私のヨガ教室では、ヨガ中でも、トイレは我慢せずに行っていいですよとお伝えしています。ヨガをすると詰まりが解消されることが多いからです。私が必ずメニューに取り入れているのが耳ヨガです。便秘解消の効果も高いので是非役立ててください。【解説】薄 久美子(ハーモニースペースdeヨガ主宰・ビジョンヨガインストラクター)


【医師解説】糖質制限ダイエット 外食時に食べてもいいものはコレ!お勧めとNGメニュー

【医師解説】糖質制限ダイエット 外食時に食べてもいいものはコレ!お勧めとNGメニュー

外食でも、工夫しだいで糖質の制限は可能です。外食時のお勧めメニューは、ステーキ、焼き魚、刺し身、しゃぶしゃぶ、焼き肉、ハンバーグなど。コンビニで食品を選ぶさいには、栄養成分表示を確認しましょう。【解説】牧田善二(エージーイー牧田クリニック院長)


ランキング


>>総合人気ランキング