自分でできる「誤嚥性肺炎」の予防とケア 原因は歯周病菌と喉の筋力の衰え

自分でできる「誤嚥性肺炎」の予防とケア 原因は歯周病菌と喉の筋力の衰え

高齢者や入院患者の死因の多くを占める誤嚥性肺炎にも、歯周病が深く関係しています。誤嚥性肺炎とは、食物を食道にスムーズに送る嚥下反射や、異物が気道に入るのを防ぐセキ反射の機能が低下し、食物や異物、細菌などが気道に入って起こる肺炎です。【解説】今井一彰(みらいクリニック院長)


口呼吸の人はクチャクチャ音がしやすいので要注意!

唾液の量が大幅にふえるとわかった!

 口の体操「あいうべ」を続けていると、唾液の出がよくなります。
 まず、グラフをご覧ください。14名に「あいうべ」を1日に10〜30回行ってもらい、始める前と2週間後、6ヵ月後の唾液の分泌量を比較したものです。

 始める前は平均で11.2mL、2週間後は12.3mLと、約1mLの増加がみられました。回数の目安である30回を行った人は3人のみでしたが、彼らのなかには5mLもふえた人がいました。
 その後、「あいうべ」を6ヵ月間続けてもらったところ、平均で13.3mLと、さらに1mLの増加がありました。

 では、私たちの体にとって、唾液がどのような働きをしているのか、簡単に説明しましょう。

●潤いを保つ働き
 唾液に含まれるムチンという物質が口の中の潤いを保ち、粘膜を保護してくれます。そのため、食べ物を飲み込みやすくなり、口の中がスッキリします。
 高齢者には、「ほおが歯茎にはりついて話しにくい」「舌がヒリヒリ痛む」「入れ歯をはめるとすれて痛い」などと訴える人がいます。これらは、ドライマウスによって起こる症状。唾液の出が回復すると、入れ歯の装着感も、滑舌もよくなります。
 また、唾液が少ないと、食物の味を感じにくくなります。食物の味覚物質が唾液に溶け出すことで、舌の細胞が味と感じるからです。唾液のおかげで、食事も楽しめるわけです。

●消化作用
 デンプンを分解するアミラーゼという消化酵素も唾液に含まれています。口の中でしっかり分解されることで、腸での消化吸収を助けてくれます。

●虫歯を防ぐ働き
 甘いものを食べると、それを利用してミュータンス菌(虫歯の原因菌)が酸を作るため、口の中のpH(酸度)が急激に低下し、酸性に傾きます。その酸によって歯を溶かすと虫歯になりますが、唾液がそれを中性に戻して防いでくれるのです。

●抗菌作用・解毒作用
 唾液に含まれるリゾチームやラクトフェリンという物質は、細菌やウイルスの増加を防ぐ強力な抗菌作用があります。ですから、カゼやインフルエンザなどの予防に役立ちます。
 また、唾液のペルオキシターゼという酵素は、発ガン物質を無毒化し、ガンの発症を抑制することもわかっています。

↓あいうべ体操のやり方はこちら↓

歯のグラつきが改善!口臭も軽減した!

 唾液の働きとして特に注目してほしいのが、歯周病菌の増加を抑制することです。
 歯周病(ペリオ)は歯周病菌が起こす感染症で、「全世界で最も蔓延している病気」としてギネスブックにも載っています。いろんな菌が合わさって起こる複合感染症なので、抗生物質では退治が難しく、完全除去は不可能といわれています。

 歯と歯茎の境目の溝(歯周ポケット)に細菌感染が起こると、そこで炎症を起こします。その細菌が、口だけにとどまらず、毛細血管を通して遠く離れた臓器へ移動し、炎症を引き起こすのです。
 例えば、動脈硬化を起こした血管部分から歯周病菌が検出されています。そのほか、糖尿病、心筋梗塞、ガン、アトピー性皮膚炎、関節リウマチ、骨粗鬆症なども、歯周病菌が一因になっているとわかってきました。

 もはや、歯周病は口の中の問題にとどまらず、全身の病気へとつながる「シンドローム(症候群)」といえます。
 歯周病菌は完全には除去できませんが、へらすことは可能です。そのためには、歯科の専門的な治療に加え、毎日の歯磨きで口の中をキレイにすることが必要です。

 そして大事なのが、できるだけ唾液の分泌を促し、その抗菌作用で歯周病菌を抑制することです。口の体操「あいうべ」を行うと、唾液の出がよくなるとともに、口を閉じて鼻呼吸ができるようになります。つまり、口の中を潤し、歯周病を悪化させない環境ができるのです。

 私のクリニックの患者さんのなかには、「あいうべ」を始めて歯周病の歯のグラつきが改善し、口臭も消えたという人がいます。歯周病菌がへって炎症が治まると、口臭も軽減されるのです。

 ところで、高齢者や入院患者の死因の多くを占める誤嚥性肺炎にも、歯周病が深く関係しています。
誤嚥性肺炎とは、食物を食道にスムーズに送る嚥下反射や、異物が気道に入るのを防ぐセキ反射の機能が低下し、食物や異物、細菌などが気道に入って起こる肺炎です。

 この肺炎が、最も多く発生しているのが、睡眠時といわれています。睡眠中に唾液がのどに垂れると、うまく吐き出すことができず、気管支や肺に流れ込みます。この唾液に歯周病菌が大量に含まれていると、誤嚥性肺炎が引き起こされるのです。

 ここで問題となるのが、大量の歯周病菌と、舌の筋力の衰えです。この二つの解決策として、役立つのが、やはり「あいうべ」です。
「あいうべ」でよくなるのは唾液の量だけではありません。舌の筋力も簡単に強化することができるのです。

 私のクリニックでは、患者さんの舌の筋力(最大舌圧)を舌圧測定器で測っています。患者さんの多くは基準値より低いのですが、「あいうべ」で鼻呼吸ができるようになると、舌圧が大幅に高くなるのです。
 つまり、「あいうべ」で唾液の出を促し、舌の筋力を高めることで、舌の機能が回復し、誤嚥性肺炎の予防に役立つのです。

※これらの記事は、マキノ出版が発行する『壮快』『安心』『ゆほびか』および関連書籍・ムックをもとに、ウェブ用に再構成したものです。記事内の年月日および年齢は、原則として掲載当時のものです。

※これらの記事は、健康関連情報の提供を目的とするものであり、診療・治療行為およびそれに準ずる行為を提供するものではありません。また、特定の健康法のみを推奨したり、効能を保証したりするものでもありません。適切な診断・治療を受けるために、必ずかかりつけの医療機関を受診してください。これらを十分認識したうえで、あくまで参考情報としてご利用ください。

この健康情報のエディター

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