【今からできるひざ痛予防】2パターンの下半身強化トレ

【今からできるひざ痛予防】2パターンの下半身強化トレ

ひざが痛いと訴える人は本当に多く、40歳を過ぎると、女性の6割、男性の4割に変形性膝関節症があるという調査データが報告されています(東京大学医学部附属病院22世紀医療センター)。中高年のひざの痛みの大部分は、この変形性膝関節症によるものです。【解説】石橋英明(伊奈病院整形外科部長、高齢者運動器疾患研究所代表理事)


ひざの周りの筋力の維持・強化が大切

 ひざが痛いと訴える人は本当に多く、40歳を過ぎると、女性の6割、男性の4割に変形性膝関節症があるという調査データが報告されています(東京大学医学部附属病院22世紀医療センター)。中高年のひざの痛みの大部分は、この変形性膝関節症によるものです。

 年を取ると、なぜひざが痛くなるのでしょうか。
 ひざ関節は、太ももの骨とすねの骨のつなぎ目で、骨の表面は、それぞれ5㎜ほどの軟骨で覆われています。軟骨は、コラーゲンやプロテオグリカンと呼ばれる成分で作られています。クッションの役割を果たす一方で、とても強靭で、表面は非常に滑らかです。

 しかし、女性は閉経前後から、男性は50歳あたりから、徐々に軟骨の組成が変化して弱くなっていきます。すると、生活の中での負担や過剰な運動により、軟骨がすり減るようになります。
 軟骨はただすり減るだけでなく、その分解産物(つまり、削りカス)が関節の内部を覆っている滑膜を刺激し、炎症を起こします。初期のひざの痛みのほとんどは、この滑膜の炎症(滑膜炎)によるものです。

 炎症を起こした滑膜の細胞は、さらに軟骨を溶かす酵素を分泌するため、余計に軟骨が傷んでいくことになり、変形性膝関節症が進んでいきます。
 通常、内側の関節面の軟骨が減っていくためにО脚となり、内側の軟骨にいっそう負担がかかり、ますます軟骨のすり減りが進行するという悪循環に陥ります。
 滑膜炎では、新たに骨を作る因子も分泌されることが知られています。この結果、関節面の周囲に、骨棘という棘のような骨の出っ張りができます。これが、ひざを動かすたびにひざの側面の側副靭帯(骨と骨をつなぐスジ)を突き上げ、痛みの原因になります。骨棘は大きくなるほど痛みが強くなります。

 ひざの痛みを和らげるためにも、О脚を進めないためにも、骨棘を大きくしないためにも、なるべく軟骨が削れないように気を付けなければなりません。

 そのために最も大切なことは、何でしょう?
 ひざに負担をかけないように、一日中寝ていることでしょうか?
 もちろん、違います。ひざの周りの筋肉を鍛えて、筋力を維持・強化することです。

 ひざの関節はたくさんの靭帯や筋肉に支えられて、正しく伸ばしたり曲げたりできるようになっています。ところが、筋力が衰えてひざが不安定になると、本来ではない関節の動きが増えて、軟骨の一部に負荷がかかり、軟骨が削れて痛みが出ます。そして、筋肉がさらに弱くなって、これも悪循環に陥ります。
 変形性膝関節症が進んでひざの痛みがひどくなると、やがて歩けなくなり、介護が必要になったり、寝たきりになってしまったりすることがあります。

 このように、運動器(筋肉、関節、骨など)の衰えによって要介護や寝たきりのリスクが高まる状態を、日本整形外科学会では、「ロコモティブシンドローム(運動器症候群。略してロコモ)」と呼ぶように提唱しています。
 同時に、学会では「片足立ちとスクワット」を中心とした、ロコモーショントレーニング(ロコトレ、またはロコモ体操)を続けることを推奨しています。

骨密度が増えて、骨粗鬆症が改善した人も

 私たちはロコモを予防するために、2009年から「いきいきロコモ講習会」を開催し、前述した次の二つの運動を中心としたロコモ体操を皆さんに広めています。

◎片足立ち
 片足を上げて1分間立つだけの簡単な運動ですが、バランス能力を高め、下肢(足)全体の筋力を鍛える効果があります。
 歩くときも階段の上り下りも、動作の半分は片足で立っています。そのときの状態が安定していれば、歩くのも階段の上り下りもスムーズにできます。筋肉の活動度を調べる筋電図を用いた検査では、片足立ちをしているときは、お尻から足先まで、ほぼ全部の筋肉に力が入っていることがわかっています。

◎スクワット
 イスに腰掛ける要領で、腰を後ろに引きながらゆっくりしゃがみ込み、ゆっくり立ち上がる運動です。太もも、お尻、すねの前側の筋肉、さらに体の深部の筋肉(腸腰筋)まで、効率よく鍛えられます。ゆっくり行うので、ひざや腰への負担が少ない一方、筋力をつける効果は高くなります。

 私たちは、講習会の参加者に2ヵ月間、片足立ちとスクワットを続けてもらい、その前と後で運動機能や痛みの改善を測定しています。一昨年の測定会の結果をご紹介すると、運動機能については、歩行速度、ひざを伸ばす力、片足立ちを続けられる時間が有意に向上しました。

 また、ひざに痛みのある91人にJKОМ(日本版変形性膝関節症評価表)で評価をしたところ、痛みのスコアが有意に改善し、運動機能の向上が痛みの軽減につながることを確認できました。
 ちなみに、講習会への参加者は189人で、平均年齢は76歳。うち115人が、平均して週6回ロコモ体操を続けていました。
 毎年講習会に参加されているHさん(70歳・女性)は、変形性膝関節症でひざから腰まで痛くなり、サポーターやコルセットで痛みをしのいでいました。

 ところが、この体操を始めて3ヵ月で痛みが軽くなり、1年後には1万歩のウオーキングもできるようになりました。3年たった現在、骨量が増えて骨粗鬆症(カルシウムの不足によって骨がもろくなる病気)も改善したそうです。

 片足立ちとスクワットは、急性期の痛みや腫れが強いときはお勧めできませんが、慢性期の軽度の痛みであれば積極的に行ってください。もちろん、無理をせず、できる範囲で続けましょう。
 いつやっても構いませんが、なるべく食事の直後は避けてください。そして、転倒が心配な人は、イスやテーブルに手を着いた状態で行うと安全です。

片足立ちのやり方

スクワットのやり方

※これらの記事は、マキノ出版が発行する『壮快』『安心』『ゆほびか』および関連書籍・ムックをもとに、ウェブ用に再構成したものです。記事内の年月日および年齢は、原則として掲載当時のものです。

※これらの記事は、健康関連情報の提供を目的とするものであり、診療・治療行為およびそれに準ずる行為を提供するものではありません。また、特定の健康法のみを推奨したり、効能を保証したりするものでもありません。適切な診断・治療を受けるために、必ずかかりつけの医療機関を受診してください。これらを十分認識したうえで、あくまで参考情報としてご利用ください。

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