【誤嚥性肺炎の予防に】喉仏の位置を上げる「飲みこむ力を鍛える」筋トレ

【誤嚥性肺炎の予防に】喉仏の位置を上げる「飲みこむ力を鍛える」筋トレ

現在も肺炎による死亡者数の増加の勢いは増すばかりです。その肺炎が死亡原因となった人のうち、75歳以上の高齢者の実に7割以上を占めるのが、「誤嚥性肺炎」です。【解説】戸原玄(東京医科歯科大学大学院歯学総合研究科高齢者歯科学分野准教授)


戸原 玄
 歯科、高齢者歯科、摂食機能障害、リハビリテーションが専門で、高齢者を中心とする摂食嚥下障害の治療とリハビリテーションに取り組み、往診による自宅診療や、地域連携を積極的に行っている。インターネットや講演活動を通して、摂食障害に関する情報発信も行う。

のど仏が下がると飲み込む力が低下する

 私たちののどは、鼻と口から入ってくる空気や飲食物、唾液などを合流させ、空気を肺に通す気管と、飲食物を胃に通す食道という2つの管に分ける働きがあります。

 通常は、両方の入り口が開いていますが、なにかを飲み込むときだけ、「軟口蓋」で鼻への通り道をふさぎ、「喉頭蓋」で気管の入り口にふたをします。

 のどの器官が絶妙に連係して動き、口から食道を1本道にして、飲食物や唾液などを胃に送り込めるようになっているのです。このとき、喉頭蓋が気管にふたをするには、のど仏が持ち上がる必要があります。

 試しに、のどに手を当てながら、つばをゴクンと飲み込んでみてください。飲み込むときにのど仏がぐっと上がるのがわかると思います。
 のど仏の大きい男性のほうがわかりやすいですが、女性でも十分のどの動きは感じ取れるでしょう。

 しかし、加齢によって全身の筋力が衰えるのと同様に、のど仏を持ち上げる筋肉も弱くなりがちなのです。
 そのため、何もしなければ、のど仏の位置は年齢とともに下がってきます。特に、男性のほうがのど仏が大きい分、下がりやすいのです。

 のど仏が、首の中心よりも下にあるように見えたら、飲み込み力の危険信号です。衰えた筋力で、下がったのど仏を持ち上げるのは、負荷が大きく、時間もかかります。
 そのため、のどの機能の連係が、タイミングよくスムーズにいかなくなり、飲食物や唾液などが、誤って気管に入ってしまう「誤嚥」を起こしやすくなるのです。

口を開ける筋肉とのど仏を持ち上げる筋肉は同じ

 これまで長らく日本人の死亡原因のトップ3は、がん、心臓病、脳卒中でした。それが、2011年以降、3位に肺炎が入ってきました。
 現在も肺炎による死亡者数の増加の勢いは増すばかりです。

 その肺炎が死亡原因となった人のうち、75歳以上の高齢者の実に7割以上を占めるのが、「誤嚥性肺炎」です。
 加齢に伴う、飲み込み力の低下によって、誤って気管に入ってしまった飲食物や唾液に含まれる細菌やウイルスが肺に入って、肺炎を引き起こし、死に至る。これが、高齢化社会の進行とともに、肺炎が死亡原因として増えてきた理由なのです。
 では、どうすれば飲み込み力を高めて、誤嚥を防ぐことができるでしょうか。

 いちばん簡単な方法が、口を大きく開けて、そのまま10秒キープするトレーニングです。
 口を開けるときに働く筋肉は、下あごと舌骨をつないでいる舌骨上筋群です。この舌骨上筋群のもう一つの働きが、のど仏を持ち上げることなのです。

 のど仏は、舌骨にぶら下がるようについているため、舌骨上筋群が収縮することで、舌骨とともに引き上げられます。
 ですから、最大に口を開け、なおかつその状態をキープすることが、飲み込み力を高める筋力トレーニングになります。
 やり方は、簡単です。

 思いきり口を開けて10秒キープし、10秒休むのを5回くり返しましょう。これを1日2セット行います。
 このトレーニングを、嚥下障害(飲み込む機能の低下)のある患者さん(平均年齢70歳)に指導したところ、1ヵ月で、嚥下機能が改善するという成果が現れました。舌骨が上に持ち上がりやすくなり、食道の入り口が大きく開くようになり、食べ物がのどを通過する時間が短くなったのです。

 60歳以降、飲み込み力は衰えてきます。口を開けるだけならだれでも簡単にできますから、ぜひお試しください。
 ただし、顎関節症の患者さんは、事前に医師に相談してください。

※これらの記事は、マキノ出版が発行する『壮快』『安心』『ゆほびか』および関連書籍・ムックをもとに、ウェブ用に再構成したものです。記事内の年月日および年齢は、原則として掲載当時のものです。

※これらの記事は、健康関連情報の提供を目的とするものであり、診療・治療行為およびそれに準ずる行為を提供するものではありません。また、特定の健康法のみを推奨したり、効能を保証したりするものでもありません。適切な診断・治療を受けるために、必ずかかりつけの医療機関を受診してください。これらを十分認識したうえで、あくまで参考情報としてご利用ください。

この健康情報のエディター

関連する投稿


【噛むことの健康効果】誤嚥性肺炎、歯周病、二重顎まで改善する「舌回し」体操

【噛むことの健康効果】誤嚥性肺炎、歯周病、二重顎まで改善する「舌回し」体操

噛む、飲み込む、発音するなど、口の様々な機能を支えているのが、繊細で複雑な舌の動きです。舌の筋肉とあごや口の筋肉との連携について調べたところ、舌を動かすことで、あごのゆがみをある程度予防できることが判明しました。そこで、私が推奨している口周りの運動が「舌回し」です。【解説】小出馨(日本歯科大学新潟生命歯学部教授)


【高齢者の便秘】対策は「玄米菜食」 糖尿病、心臓病も改善すると医師が解説

【高齢者の便秘】対策は「玄米菜食」 糖尿病、心臓病も改善すると医師が解説

肥満を改善するために、最も効果的な食事が玄米菜食です。玄米菜食とは、主食を玄米や雑穀とし、主菜を野菜や豆、海藻、漬物にして、肉や魚、卵、乳製品は極力控える食事法です。私のクリニックでは、外来の患者さんに、玄米菜食を勧めています。【解説】島村善行(島村トータル・ケア・クリニック院長)


【医師が警告】インフル、アトピー、無気力まで…その原因はこれだった

【医師が警告】インフル、アトピー、無気力まで…その原因はこれだった

これから紹介する一覧表は、口呼吸をしていることで起こる可能性のある主な病気です。私は、病気の約7割は口呼吸がもたらすものと考えています。口呼吸によって起こる弊害は、病気だけではありません。口の中での舌の位置が下がると、歯並びや姿勢、顔つきが悪くなります。【解説】今井一彰(みらいクリニック院長)


【超簡単】万病を防ぐ口の体操「あいうべ」のやり方

【超簡単】万病を防ぐ口の体操「あいうべ」のやり方

口の体操「あいうべ」は、どうして「あいうえ」ではないのでしょう。「あ」「い」「う」という口の動きは、口の周囲の筋肉を鍛える動きです。そして、「べー」と舌を出すことで、舌の筋肉が鍛えられます。舌の筋肉を鍛えることは、舌を正しい位置に引き上げるために重要です。【解説】今井一彰(みらいクリニック院長)


自分でできる「誤嚥性肺炎」の予防とケア 原因は歯周病菌と喉の筋力の衰え

自分でできる「誤嚥性肺炎」の予防とケア 原因は歯周病菌と喉の筋力の衰え

高齢者や入院患者の死因の多くを占める誤嚥性肺炎にも、歯周病が深く関係しています。誤嚥性肺炎とは、食物を食道にスムーズに送る嚥下反射や、異物が気道に入るのを防ぐセキ反射の機能が低下し、食物や異物、細菌などが気道に入って起こる肺炎です。【解説】今井一彰(みらいクリニック院長)


最新の投稿


「キーン」と鳴り響く耳鳴りが「耳こすり」で解消し不眠改善!ぐっすり眠れる

「キーン」と鳴り響く耳鳴りが「耳こすり」で解消し不眠改善!ぐっすり眠れる

ストレスが積み重なったのでしょう。気がついたら「キーン」という高音の耳鳴り が聞こえるように。最もいやだったのは、寝るときでした。シーンと静かな中、キーンという音だけが聞こえるので不眠になってしまいました。そこで藤井先生の治療院に行き、教わったのが「耳こすり」でした。【体験談】長谷川真由美(会社員・33歳)


【咳止め効果】のどの炎症を抑え気管支を広げる「蜂蜜コーヒー」は薬並み!と呼吸の名医が推奨

【咳止め効果】のどの炎症を抑え気管支を広げる「蜂蜜コーヒー」は薬並み!と呼吸の名医が推奨

ハチミツには、優れた抗炎症作用、抗酸化作用があります。特に抗炎症作用により、のどの炎症が抑えられるため、セキが軽くなると考えられます。ハチミツ以外では、コーヒーにも、セキの予防効果があることが報告されています。【解説者】大谷義夫(池袋大谷クリニック院長)


退職後の検査・降圧剤はどこまで必要?「高血圧」との付き合い方を医師が指南

退職後の検査・降圧剤はどこまで必要?「高血圧」との付き合い方を医師が指南

人間の三大欲は、食欲・性欲・睡眠欲といわれています。それに加え、昨今は「健康長寿欲」に多くの人がとらわれています。2016年の調査で「欲しい物」の1位が「健康」で、「幸せ」を大きく上回ったのです。「幸せよりも健康が欲しい」という結果に私は衝撃を受けました。【解説】名郷直樹(武蔵国分寺公園クリニック院長)


【首が痛い!の原因】チェックリストで分かる症状、対処法はこれ!

【首が痛い!の原因】チェックリストで分かる症状、対処法はこれ!

首の痛みの場合、適切な対策をとり損ねるおそれがあります。首の骨が悪くなっているといわれれば、多くの患者さんは「それなら痛みが出るのもしようがない」「薬で痛みを抑えるしかないのだろうな」と考え、それ以上の対策を取らなくなってしまうからです。【解説】竹谷内康修(竹谷内医院カイロプラクティックセンター院長)


【健康レシピ】脳を活性化する「卵」アレンジ薬膳(卵黄みそ漬け)

【健康レシピ】脳を活性化する「卵」アレンジ薬膳(卵黄みそ漬け)

卵は、アミノ酸、ビタミン、ミネラルをバランスよく含んだ「完全栄養食品」といわれています。加熱しても、栄養価に大きな変化が見られず、どのように調理しても必要な栄養を摂取できるので、夏バテ撃退には最適な食材といえるでしょう。【解説・料理・栄養計算】検見﨑聡美(管理栄養士・料理研究家)


ランキング


>>総合人気ランキング