【医師解説】緑内障の予防に効果 眼圧が下がる「ウォーキング法」はこれ

【医師解説】緑内障の予防に効果 眼圧が下がる「ウォーキング法」はこれ

私は長年、緑内障の患者さんに生活習慣の改善を指導して、病状の進行阻止や改善を行ってきました。そのなかで、ウォーキングなどの運動は重要な柱です。運動の回数と時間が多いほど、有意に眼圧が低下するという研究結果が発表されています。【解説】山口康三(回生眼科院長)


「運動で眼圧が下がる」と 2つの大学で発表

 私は長年、緑内障の患者さんに生活習慣の改善を指導して、病状の進行阻止や改善を行ってきました。そのなかで、ウォーキングなどの運動は重要な柱です。

このことは、標準的な治療では取りあげられてきませんでした。緑内障の治療は、あくまでも薬と手術が主体で、運動や食事で進行阻止や改善ができるなどという発想はなかったのです。

 ところが、最近、大きな変化が起きています。今年の眼科学会では、九州大学医学部眼科の研究チームが、興味深い研究発表をしました。

 福岡県久山町で行った疫学調査(集団の調査を通じて病気の原因や予防法などを探ること)で、40歳以上の住民のうち、眼圧に影響を与える治療や手術をしている人を除く1871人を対象に、1週間当たりの運動回数・運動時間と、5年間の眼圧変化との関連を調べたものです。

 その結果、運動の回数と時間が多いほど、有意に(統計的に意味をもつ差があること)眼圧が低いことがわかったのです。これまでの標準的な眼科治療にはなかった、運動と眼圧との関係に着目した画期的な研究と言えるでしょう。
 また、これに先立つ2010年には、広島大学医学部眼科教授の木内良明先生が、眼科の専門誌に「運動によって眼圧が下がる」という研究発表をされています。

「被験者が有酸素運動を3カ月続けると、眼圧が下がった。その下がり方は運動の強度に比例していた。ただし、運動をやめると3週間ほどで眼圧はもとのレベルに戻った」という内容です。
 こちらも、運動と眼圧の関係を調べた貴重な発表と言えるでしょう。

ゆったり楽しんで 歩くほうが効果的

 私の経験でも、ウォーキングなどの運動で眼圧が下がった例は数多くあります。その1人、49歳の女性Aさんの例をご紹介しましょう。

 Aさんは、平成25年10月の初診時の眼圧は右目が36㎜Hg、左目が22㎜Hgでした。眼圧の正常値は10~21㎜Hgなので、特に右目はかなりの高さです。実は、当院にみえる前から、点眼薬と内服薬を使うとともに、1度手術を受けておられました。「効果がないので再度手術をする」と言われ、2度目の手術は受けたくなくて当院にみえたのです。

 当院では、当初は点眼薬も使いながら、漢方薬を処方するとともに、少食と夜9時に寝ること、1万3000歩のウォーキングを指導しました。すると、始めた翌々月、眼圧は劇的に下がって、右が17㎜Hg、左が14㎜Hgになりました。以後、多少は増減しながらも、全体としては順調に下がり、27年4月には、右が12㎜Hg、左が9㎜Hgまで下がったのです。薬もやめることができ、緑内障の症状は進んでいません。

ウォーキングの目的は 目の血流をよくすること

 当院で緑内障の患者さんにウォーキングを指導している大きな目的は、「血流をよくするため」です。緑内障といえば、眼圧ばかりが取りあげられます。もちろん眼圧も大事ですが、それ以前に目の血流、ひいては全身の血流が悪くなっていることが、緑内障の大きな原因だと、私はとらえています。

 血流障害は目の酸素不足を招きます。じゅうぶんな酸素とともに栄養素も届かないので、当然、視神経が弱くなります。正常眼圧でも緑内障を起こす例が多いのは、血流障害で視神経が弱くなっていることと深く関係すると考えられます。

 しかも、血流障害があると、眼球内の水(房水)の巡りも悪くなって、眼圧が上昇しやすいのです。その土台になっている血流障害を放置したまま、投薬や手術をしても、効果が出にくいのは当然です。ですから、今、緑内障の人は、薬などの効果を高めるためにも、ぜひウォーキングを心がけてください。

 血流をよくして酸素不足を解消し、眼圧を下げるウォーキングには、いくつかのコツがあります。

・散歩ペースで歩く

 血流促進のためには、むきになって歩くのではなく、散歩ペースで歩くほうが効果的です。筋力強化が目的ではありません。楽しみながら、ゆったり歩きましょう。それにより、目にもじゅうぶんな酸素が届きます。

・1日に1万3000歩歩く

 眼圧や緑内障に効果をもたらすには、1日の合計で1万3000歩以上歩く必要があります。
 ただし、運動習慣がない人は、ひざや腰に痛みのある人は無理をせず、痛みが出ない範囲で5000歩を目標にしましょう。

・小分けにしてよい

 1度に歩くと、疲れて続かなかったり、おなかがすいて食べ過ぎたりしがちです。30分ずつ4回など、小分けにするとよいでしょう。
 たとえば、朝30分、昼休みに30分、夕方30分、夜30分、合計で1日に最低1万3000歩歩くようにします。習慣になると、まったく苦にならず、逆に歩かないと気持ち悪いようになってきます。

山口康三先生

※これらの記事は、マキノ出版が発行する『壮快』『安心』『ゆほびか』および関連書籍・ムックをもとに、ウェブ用に再構成したものです。記事内の年月日および年齢は、原則として掲載当時のものです。

※これらの記事は、健康関連情報の提供を目的とするものであり、診療・治療行為およびそれに準ずる行為を提供するものではありません。また、特定の健康法のみを推奨したり、効能を保証したりするものでもありません。適切な診断・治療を受けるために、必ずかかりつけの医療機関を受診してください。これらを十分認識したうえで、あくまで参考情報としてご利用ください。

この健康情報のエディター

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