【貧乏ゆすり】変形性股関節症の手術後のリハビリに効果 ジグリングで軟骨再生

【貧乏ゆすり】変形性股関節症の手術後のリハビリに効果 ジグリングで軟骨再生

変形性股関節症とは、股関節の関節軟骨がすり減り、痛みや炎症を起こす病気で、進行を遅らせるには、関節に負担をかけないことが大変重要です。私たちは、関節に負荷がかかる運動療法は行わず、減量する、杖をつく、歩行量を減らすことなどを推奨してきました。【解説】井上明生(柳川リハビリテーション病院名誉院長)


関節に負担がない持続的な摩擦運動

 テレビ放送で、変形性股関節症の治療法として、私たちが患者さんに勧めている「貧乏ゆすり(ジグリング)」が紹介されたところ、非常に大きな反響が寄せられました。

 変形性股関節症とは、股関節の関節軟骨がすり減り、痛みや炎症を起こす病気で、進行を遅らせるには、関節に負担をかけないことが大変重要です。

 私たちは、関節に負荷がかかる運動療法は行わず、減量する、杖をつく、歩行量を減らすことなどを推奨してきました。

 症状が進んだ患者さんでも、60歳以下であれば、股関節を人工物に置き換える人工股関節置換術を避けたいという思いから、できるだけ、自骨で行うキアリ骨盤骨切り術を行っています。

 しかし、なかには、術後も大腿骨頭(太ももの骨の先端の丸い部分)と臼蓋(股関節の骨盤側のくぼみ)のすき間がうまく開かない患者さんがいます。
 そうした患者さんに効果が表れたのが「貧乏ゆすり」です。

 貧乏ゆすりは、1978年、カナダの整形外科医・ソルター博士が行った「関節に負担をかけない持続的な摩擦運動は、軟骨の再生を促す」という、ラットによる動物実験の結果に基づいた運動療法です。軟骨が再生することを確かめた博士は、股関節を持続的に動かす医療機器・CPMを開発し、現在も、多くの病院などで導入されています。

 軟骨が再生する、詳しいメカニズムはわかっていません。股関節に負担をかけないように股関節周辺の筋肉をゆるめ、股関節を持続的に動かすと、軟骨に栄養が供給されやすくなり、軟骨が再生すると考えられます。

→「貧乏ゆすり」のやり方はコチラ

わずか2ヵ月で軟骨が再生した例も

 私が、貧乏ゆすりによる軟骨の再生を初めて確認したのは、2003年、50歳で骨切り術を行った女性・Aさんのケース。Aさんは術後6ヵ月たっても、大腿骨頭と臼蓋のすき間が開きませんでした(写真①)。次の治療法を考えていた私は、ソルター博士の言葉を思い出しました。軟骨の再生には、CPMをどれくらい使えばよいかという質問に、「24アワーズ!(24時間!)」と答えたのです。

 軟骨の再生には長時間の使用が必要ということですが、CPMという大きな器械を長時間使うことは現実的には不可能。同様の効果を得る摩擦運動はないかと考えた結果、ひらめいたのが、貧乏ゆすりだったのです。

 Aさんに、股関節に負担をかけないようにして、できる限り貧乏ゆすりを行うよう指示しました。すると約7ヵ月後、レントゲンで軟骨の再生がはっきり確認されたのです(写真②)。私の予想を上回る成果でした。以来、私は変形性股関節症の術後のリハビリに、貧乏ゆすりを積極的に導入し、数多くの成果を得ています。

 手術を選択しなかった患者さんにも効果が表れました。2006年、変形性股関節症の末期だった77歳の女性・Bさん(写真③)は、余病のため、人工股関節置換術ができませんでした。貧乏ゆすりを勧めたところ、熱心に取り組み、3年後には軟骨がきれいに再生し(写真④)、日常生活に支障がないほど回復したのです。

 今年2月、劇的な症例が現れました。40代の女性・Cさんは、23年前にキアリ骨盤骨切り術を受けましたが、今度は反対側の股関節に痛みが出て手術のため入院してきました。ちょうどそのころ、23年前に手術したほうの股関節のすき間が狭くなり、痛みが出てきたのです。
 術後、しばらくは車イスの生活で、股関節に負担がかかりません。休職して時間もたっぷりあったため、貧乏ゆすりを集中的に行ってもらった結果、わずか2ヵ月で、いったん消失した軟骨が再生しました。Cさんは、現在は日常生活に支障がないまでに回復しています。

 貧乏ゆすりは、術前、術後、病期、年齢などに関係なく、軟骨の再生に大変効果があることがわかりました。再生までの期間は、やり方しだいでは、年単位から月単位に縮めることも可能だと考えています。

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※これらの記事は、マキノ出版が発行する『壮快』『安心』『ゆほびか』および関連書籍・ムックをもとに、ウェブ用に再構成したものです。記事内の年月日および年齢は、原則として掲載当時のものです。

※これらの記事は、健康関連情報の提供を目的とするものであり、診療・治療行為およびそれに準ずる行為を提供するものではありません。また、特定の健康法のみを推奨したり、効能を保証したりするものでもありません。適切な診断・治療を受けるために、必ずかかりつけの医療機関を受診してください。これらを十分認識したうえで、あくまで参考情報としてご利用ください。

この健康情報のエディター

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