死ぬなら「がん」がいい ― ベストセラー医師が教える、死に方指南

死ぬなら「がん」がいい ― ベストセラー医師が教える、死に方指南

皆さんは、がんとは強烈に痛むもの、と思っていませんか? 私も老人ホームに移った当初は、そう思っていました。けれども、これまで60〜70名の高齢のがん患者を老人ホームで診てきましたが、麻薬を使うほど痛んだケースは一例もありません。【解説】中村仁一(社会福祉法人老人ホーム「同和園」附属診療所所長)


痛みが出るのは治療のせい

 医療のじゃまが入らなければ、「死」はそれほど苦しいものではないということは、おわかりいただけたでしょうか。
 なかでも理想的な死に方として、私がお勧めするのは「がん死」です。
 皆さんは、がんとは強烈に痛むもの、と思っていませんか? 私も老人ホームに移った当初は、そう思っていました。
 けれども、これまで60〜70名の高齢のがん患者を老人ホームで診てきましたが、麻薬を使うほど痛んだケースは一例もありません。

 老人ホームのケースでは、がんは発見された時点で手遅れ、という場合がほとんどです。もし、がんが痛むのであれば、もっと早く発見されてもおかしくないはずです。
 ところが、多くの場合は、痛みで病院へ行くのではなく、食が細ってやせてきたり、体が真っ黄色になったり、血を吐いたり、お尻から血を流したりしたことがきっかけで病院を受診し、そこで初めてがんが発見されるのです。

 私は以前から、がんで痛みが出るのは、放射線や抗がん剤でがんを痛めつけるせいではないかと思っていました。
 私が子どものころは、ガリガリにやせて死んでいくお年寄りが確かにいました。今思えば、あれは恐らくがんだったのだと思います。けれども、別に痛みでのたうちまわって七転八倒などはしていませんでした。
 少なくとも、手遅れで発見された時点で痛みのないがんは、何もしなければ最後まで痛まないと考えていいと思います。
 私が勤める老人ホームで、がんで自然死した人の実例を紹介しましょう。

最期は穏やかな老衰死コース

 70歳の男性・Eさんは、胃がんがわかったとき、余命3ヵ月と言われました。積極的治療の意思がなかったため、2週間で退院し、老人ホームに帰ってきました。がん性の腹膜炎で腹水が増え、カエル腹になっていましたが、がんの痛みはまったくありませんでした。
 そのうち意識がなくなり、口から一滴の水も入らなくなりました。もちろん、点滴注射や酸素吸入は一切しません。
 すると、それから8日目にとても安らかに亡くなりました。
 亡くなったとき、カエル腹がぺしゃんこになり、腹水が完全に消えていたことも驚きでした。外から水が一滴も入らなくなると、体にある水をすべて使い果たし、本当に枯れた状態になって亡くなったのです。体の自然のしくみのすごさに驚嘆しました。

 もう一人、79歳で胃がんとわかった男性Yさんは、病院から、「余命はせいぜい2〜3ヵ月」と言われました。Yさんも積極的治療を望まなかったため、病院では輸血をしただけで、まだ出血している状態で戻ってきました。
 その後、止血し、食欲も出て、8ヵ月ほど普通の生活ができました。そして最期は、穏やかな老衰死コースをたどりました。がんとわかってから1年近く生きたのですが、この間、痛みはまったくありませんでした。
 一方、さんざん治療し、がんを痛めつけてきたがん患者たちの行くホスピスでも、痛みが出るのは7割程度だといわれています。裏を返せば、およそ3人に1人は痛まないということです。そう考えると、がんはさほど恐ろしいものではないと思いませんか。

 ところで、私ががん死をお勧めするのには、もう一つ理由があります。それはがんの場合、近未来に確実に死が待っているということです。
 私たちは皆、いわば「未決の死刑囚」です。執行日が決まっていないので、「死」を意識することなく、「まだまだ先のこと」と思って過ごしがちです。
 けれども、近未来に確実に執行日が決まるとなると、「それまでにきちんと身辺整理をしておこう」とか、「お世話になった人にちゃんとお礼やお別れを言っておこう」といった具合に、「死」の準備ができるのです。
 幸い、がんは、比較的最後まで意識が鮮明なので、”それまで“を後悔のないよう過ごすにはもってこいです。
 その上、痛まないのであれば、こんなにいい死に方はありません。やはり、死ぬのは完全放置のがんに限ります。

 さて、ここまで「死」とは本来どういうものなのか、について述べてきました。冒頭で述べたように、これはあくまで、生き方を考えるための第一歩です。
 例えば、今までさんざん医療に頼って生きてきた人が、「死」に直面していきなり、「穏やかに死にたい」と自然死を望んだとしたら、それは高望みというものです。
 今日は昨日の続き、昨日とまったく違う今日はあり得ません。今の生き方、周囲とのかかわり方、医療の利用のしかたが、「死」の場面に反映されるということです。
 事件、事故、災害やポックリ死は別として、人は生きてきたように死ぬのです。だからこそ「死」を通して今をどう生きるかを考えることが大切です。

→【関連記事】「死」は穏やかで安らかなもの

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