【医師解説】なぜ、薬は体に「悪い」のか? マクロファージとアセチルコリンについて

【医師解説】なぜ、薬は体に「悪い」のか? マクロファージとアセチルコリンについて

そもそも、なぜ薬は体によくないのでしょうか?あらゆる多細胞生物は、細胞どうしが共通した情報のもとで働き合い、生命活動を行っています。その情報伝達を専門に行う組織が神経です。しかし、私たちが神経を発達させたのは、動物に進化してからです。【解説】高木智司(日本自律神経免疫治療研究会会員・心身診療室院長)


アセチルコリンは 情報伝達の仲介役

 そもそも、なぜ薬は体によくないのでしょうか?

 あらゆる多細胞生物は、細胞どうしが共通した情報のもとで働き合い、生命活動を行っています。その情報伝達を専門に行う組織が神経です。
 しかし、私たちが神経を発達させたのは、動物に進化してからです。すなわち、福田-安保理論に示される自律神経と白血球の連動した働きは、生物が植物から動物、さらには人間へと進化する過程で備えた機能の一つです。

 つまり、自然治癒力の原点は、多細胞生物を誕生させたしくみのなかにあるはずです。

 そこで注目したのが、植物の情報伝達システムです。
 神経を持たない植物は、細胞から細胞への直接的な伝言ゲームによって、情報を伝達します。
その伝言ゲームの仲介役が、アセチルコリンという物質です。
 多細胞生物の先輩である植物は、すべての情報をアセチルコリンの出し入れだけでやり取りし、栄養・成長・修復などの生命活動を営んでいるのです。

 一方、私たち人間は、副交感神経の伝達物質にアセチルコリンを利用しています。人間を含む動物は、植物の基本能力に、運動(移動)能力を上乗せさせた存在といえます。すると私たちにも、アセチルコリンを直接使って情報を伝える能力は残り、活用しているはずです。

 そう考えて調べると、2012年に共立薬科大学名誉教授の川島絋一郎先生が、「哺乳動物も、全身のさまざまな非神経細胞や組織でアセチルコリンを合成・放出し、局所における細胞間の情報伝達を行っている」と発表されていました。
 また、さかのぼって2004年には、マクロファージとリンパ球はコリン系神経細胞であり、副交感神経と一体であることが判明し、自律神経の白血球支配が証明されています。

 つまり、私たちの意思疎通の基本もアセチルコリン系にあり、自律神経系、脳精髄神経系などの高度な伝達手段は、すべてアセチルコリン系の上に成り立ち、統括されているのです。

 一方、副交感神経が脳の指令を受けてアセチルコリンを放出するように、非神経性のアセチルコリンにも、その働きをコントロールする指揮官が存在するはずです。

 ヒントは白血球の防御のしくみにありました。

 白血球は、顆粒球、リンパ球、単球(マクロファージ)で構成されますが、マクロファージ以外の細胞は、自分の意思で働くことができません。
 顆粒球とリンパ球は、いずれも防御力の強化を目的に、マクロファージが自ら生み出した細胞です。しかし、両者は備えた武器が異なり、攻撃相手を間違えると逆に危険を生みます。

 そのため、マクロファージはその見極めを、親である自分の仕事としたのです。

マクロファージの起源は万能細胞!

 マクロファージは、周囲の細胞と交信しながら全身をパトロールします。危険信号をキャッチした場合は、自ら現場に駆けつけ、敵の種類と危険の度合いを確認します。

 そのうえで、顆粒球とリンパ球のうち、敵にふさわしい部隊に情報を伝え、出動させます。こうして、マクロファージはミスを防いでいるわけです。

 このように、白血球による防御力は、マクロファージを中心とした細胞どうしのコミュニケーションのうえに成立しています。その連携が可能になったのは、白血球を含むすべての細胞が、マクロファージと親子関係にあるからでしょう。

 というのも、マクロファージの起源は、海中の単細胞生物を多細胞生物へと進化させた、いわゆる万能細胞にあります。そして、そのマクロファージに確認されているのが、アセチルコリンを受け止める受容体であり、アセチルコリンの合成・分解能力です。

 すなわち、マクロファージが万能細胞であると同時に、アセチルコリンを自在に操る能力を持った神経細胞だったからこそ、多細胞生物は生まれ、進化し、繁栄できたと考えられるのです。

 人間は、そのマクロファージによるアセチルコリン支配が、最も高度化した存在です。
 しかし、進化の過程でマクロファージが神経組織を作ったのは、実は、運動能力のアップが目的です。そのため、神経のネットワークは、すべての細胞を網羅しているわけではありません。

 例えば、副交感神経の枝は腹腔神経節で途絶え、脾臓に達していません。それで困らないのは、脾臓がマクロファージの集まる免疫組織であり、非神経性アセチルコリンによる情報伝達システムが、最も発達した組織だからでしょう。
 さらに考察すれば、脾臓は白血球が一堂に介して情報交換を行う集会所だからこそ、マクロファージはあえて神経を通さなかったとも考えられます。

 脳は、しばしば間違いを犯すことが知られています。つまり、免疫組織が脳の支配を受けると情報が混乱し、体を守りきれない危険があるのです。

 そこで、マクロファージは免疫機能に造血機能を備えた脾臓を、自然治癒力の砦とし、脳の支配から切り離すことによって、万全の態勢を整えたのではないでしょうか。

 このように、私たちの情報伝達システムは生命の存続を基盤に、いっさいのすきなく設計されています。生命の存続に、最も重要な自然治癒力は、マクロファージとアセチルコリンという、動物進化を支えた絶対的な力で守られているのです。
 福田-安保理論を導いた立役者の一人である、故・福田稔先生も、「リンパ球の回復が悪くても、マクロファージをふやす力があれば心配ない」とおっしゃっていました。その答えが、実は、マクロファージによるアセチルコリン支配にあったわけです。

西洋薬はアセチルコリンの作用を阻害するから治せない

 そして、マクロファージとアセチルコリンに注目してわかったのが、現代医学の根本的な矛盾でした。それも単純明快な話です。西洋薬の大部分が、神経伝達によって最終的にアセチルコリンの作用を阻害するから、病気が治らないのです。

 しかも、アセチルコリンの働きは実に多様です。細胞膜の重要な成分として膜の機能を調整しているし、脳では体の日内リズムの形成や記憶、感情などを司る働きもしています。

 アメリカには、「抗アセチルコリン剤を継続的に服用している高齢者の8割に、軽度の認知障害が認められる」との報告があります。これは、弊害の一つにすぎません。抗アセチルコリン薬の常用は老化を促進し、脂肪肝、腎臓の壊死、動脈硬化、脳出血、うつ病、統合失調症、発達障害などの発症リスクを高める事実を知るべきでしょう。

 一方、消化機能促進薬、重症筋無力症治療薬、アルツハイマー型認知症治療薬など、少数派ながらアセチルコリン系に作用する薬もあります。

 しかし、アセチルコリンの鍵穴はたんぱく質で非常に壊れやすく、薬効成分がスルリと通り抜けるほどの余裕もありません。やがて薬が効かなくなるのも、鍵穴が詰まって、二度と開かなくなるためです。

 そして、さらなる危険をはらんでいるのが、医学の行き詰まりを打開する新薬として注目される、分子標的治療薬です。それも、分子標的薬の多くが、マクロファージの働きを阻害する目的で開発されているからです。

 その理由は、マクロファージが血管を新生し、炎症やガンの成長を促進し、病状を重くするからだそうですが、それは大いに疑問です。

 マクロファージが免疫細胞として処理しているのは、主に老廃物や、古くなった細胞です。炎症は代謝の亢進反応ですから老廃物がふえますし、ガン細胞も新陳代謝をくり返しながら成長します。

 ですから、マクロファージが集まってくるのは当然ですし、そのマクロファージが血管を作るのも、老廃物や老化したガン細胞の処理能力を高めるためでしょう。

 このように、マクロファージが引き起こす反応にはすべて意味があります。しかもそれらはすべて自分の分身、さらにいえば自分自身を守るための反応だからこそ、間違いはありえなかったのです。その大原則を理解してほしいと思います。

 最後に、このように体内で重要な働きをする白血球、特に、リンパ球と単球の割合と数を、医療機関で測定しない動きが広まっているのは大問題であると、強く訴えたいと思います。

※これらの記事は、マキノ出版が発行する『壮快』『安心』『ゆほびか』および関連書籍・ムックをもとに、ウェブ用に再構成したものです。記事内の年月日および年齢は、原則として掲載当時のものです。

※これらの記事は、健康関連情報の提供を目的とするものであり、診療・治療行為およびそれに準ずる行為を提供するものではありません。また、特定の健康法のみを推奨したり、効能を保証したりするものでもありません。適切な診断・治療を受けるために、必ずかかりつけの医療機関を受診してください。これらを十分認識したうえで、あくまで参考情報としてご利用ください。

この健康情報のエディター

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