【自律神経の乱れ】自律神経を整える方法は "前腕をゆっくり撫でる" と良いと判明

【自律神経の乱れ】自律神経を整える方法は "前腕をゆっくり撫でる" と良いと判明

不安や緊張を感じたとき、親しい人から体をなでられて気持ちが落ち着いた経験は、誰にでもあるでしょう。慣れない場で心細いときに、無意識のうちに腕をさすっていたこともあると思います。近年の研究により、肌をゆっくりなでることが、自律神経の乱れの改善に効果があることが分かってきたのです。【解説】山口創(桜美林大学教授)


快の感情を生む特殊な神経が発見された

 不安や緊張を感じたとき、親しい人から体をなでられて、気持ちが落ち着いた経験は、誰にでもあるでしょう。また、慣れない場にひとりでいて心細いときに、無意識のうちに腕などをさすっていたこともあるかと思います。

 近年の研究により、肌をなでることが、脳や自律神経にどのような効果をもたらすかということが、次第にわかってきました。

 皮膚は「第二の脳」ともいわれ、触覚や温度感覚など、さまざまな刺激を感知して脳に伝える、人体最大の感覚器官です。

 触覚を感知する神経の末端には、「受容器」という器官がついています。受容器が刺激を受け取り、それを脳に伝えているのです。

 ところが最近になって、受容器を持たずに刺激を受け取っている、特殊な神経が発見されました。
 それが「C触覚線維」です。

C触覚線維とは?

 C触覚線維の末端は、毛根にからみつくように伸びていて、肌をなでたときに生じる、毛の振動による刺激を、脳に伝えます。

 そのため、C触覚線維は、皮膚の無毛部、つまり、人間でいえば手のひらと足の裏には存在しません。
 C触覚線維が受け取った情報は、脳の広い範囲に伝わります。

 具体的には、脳の呼吸や血圧など生命活動の根幹を司る「脳幹」、自律神経やホルモンの調節を司る「視床下部」、感情に関わる「扁桃体」、情動に関わる「島皮質」などに、C触覚線維から情報が伝えられます。

 これにより、肌に触れられたことに対する、「気持ちいい」「気持ち悪い」という快・不快の感情が生まれます。「触れられているのは自分だ」という自己意識や、触れてきた相手への愛着や信頼感も、同時に形成されます。

C触覚線維をなでると自律神経が整う

 C触覚線維には、「ゆっくりと動く刺激にだけ反応する」という特徴があります。
 研究によると、秒速3〜10cmの速度で触れたときだけ反応し、それ以下でも、それ以上の速度でも反応しません。
 つまり、C触覚線維は、スキンシップのように、肌をゆっくりとなでるような刺激にだけ反応するのです。
 C触覚線維が刺激されることで生じる、「心地よい」という快の感情には、自律神経のバランスを整える効果があることがわかっています。

 また、C触覚線維への刺激は、ストレス解消にもつながります。

 私たちの体は、ストレスを感じると、脳の視床下部から下垂体、副腎皮質の順に反応が起こり、副腎皮質から、ストレスに対抗するためのホルモンが分泌されます。

 しかし、ストレスが強すぎて、ホルモンが過剰に分泌されると、脳や内臓に、悪影響をもたらします。
 そこで有効なのが、C触覚線維への刺激です。C触覚線維への刺激は脳の視床下部に伝わるため、ストレスが打ち消されて、その後のストレス反応を、弱めてくれる効果があるのです。

前腕にはC触覚線維が集中している

 ヒトの場合、C触覚線維は前腕に多く存在しているので、乱れた自律神経を整えたり、ストレスを癒したりするときは、前腕をなでるとよいでしょう。

 前腕をなでるコツは、心地よさを感じながらなでることです。
 そのためには、手を動かすときに1秒間に5cmくらいのゆっくりした速度でなでること。C触覚線維は、秒速5cm前後の速さで触れたときに、もっとも興奮し、体をリラックスした状態に導く副交感神経を優位にすることがわかっています。

秒速5cmで皮膚をなでると副交感神経が優位に!

大学生が2人組になり、一方が相手の背中を3種類の速度でなでたときの、なでられた人の自律神経の活動を測定した。
その結果、秒速5cmの速度でなでたときに副交感神経が優位になる(リラックスする)ことが判明。秒速20cmの速い速度や、秒速1cmのゆっくりした速度では、反対に交感神経が優位になり、違和感や緊張感を引き起こした

 また、手のひら全体を使って触れることと、軽くさするのではなく、やや圧をかけて触れることもポイントです。

 秒速5cmと聞くと難しく思われるかもしれませんが、私たちがたいせつな人やペットなどに触れるときは、無意識のうちに、こうしたなで方をしています。

 相手を思いやり、慈愛の気持ちをもって触れると、人は自然と、このゆっくりした速度で触れるようになるのです。

 しかも、これは人間だけに見られる現象ではありません。

 C触覚線維は、ほとんどのほ乳類に存在し、親が子の体をなめるときや、仲間同士で毛づくろいをするときも、秒速5㎝前後の速さで行うことがわかっています。

 また、スキンシップによって、「オキシトシン」というホルモンが分泌されることもわかっています。
 オキシトシンは、別名を「絆ホルモン」とも言い、相手との信頼を強めるほか、ストレスホルモンを減少させる効果や、鎮痛効果、導眠作用があるホルモンです。

 現代人の生活環境はストレスが多く、スキンシップも減ってきています。ストレスを感じたときや、たいせつな人を癒してあげたいとき、自分や相手をいたわる気持ちで、ぜひ前腕をなでてみてください。

親ゾウが子ゾウをなでるときのスピードも、秒速5cmといわれる

前腕をなでるコツ

C触覚線維の多い、ひじから手首にかけての前腕の外側を、秒速5cm程度のゆっくりした速度で、手のひら全体を使って、やや圧をかけてやさしくなでる。
心をこめて、慈愛の気持ちを持って腕をなでれば、自然とこのスピードになる。素肌を直接なでても、服の上からなでてもOK

山口 創
1967年、静岡県生まれ。早稲田大学大学院人間科学研究科博士課程修了。専攻は、健康心理学・身体心理学。現在、桜美林大学リベラルアーツ学群教授。臨床発達心理士。『皮膚は「心」を持っていた!』(青春出版社)など、著書多数。

【トラウマ】心の傷を癒やす方法 "不安・心配・恐怖が消える音楽" を無料視聴

※これらの記事は、マキノ出版が発行する『壮快』『安心』『ゆほびか』および関連書籍・ムックをもとに、ウェブ用に再構成したものです。記事内の年月日および年齢は、原則として掲載当時のものです。

※これらの記事は、健康関連情報の提供を目的とするものであり、診療・治療行為およびそれに準ずる行為を提供するものではありません。また、特定の健康法のみを推奨したり、効能を保証したりするものでもありません。適切な診断・治療を受けるために、必ずかかりつけの医療機関を受診してください。これらを十分認識したうえで、あくまで参考情報としてご利用ください。

この健康情報のエディター

関連する投稿


【ストレス対策】幸せホルモン「オキシトシン」 分泌を高める「お祈り」の効果

【ストレス対策】幸せホルモン「オキシトシン」 分泌を高める「お祈り」の効果

オキシトシンは以前から幸福感や愛情と深い関わりがあること、母乳の分泌を促す作用があることがわかっていました。近年の研究からストレスを抑えたり自律神経を調整したり、免疫力が高まったり、体の痛みを抑えたりといった効果があることが次々と証明されてきたのです。【解説】高橋徳(ウィスコンシン医科大学教授・統合医療クリニック院長)


集中力を高め学習能力がアップする「15秒丹田呼吸」は自己治癒力も高める

集中力を高め学習能力がアップする「15秒丹田呼吸」は自己治癒力も高める

15秒丹田呼吸は呼吸ですから、体に悪いということはまずありません。時と場所を選ばず、お金もまったくかかりません。誰にでも手軽にできて効果の高い健康法ですので、ぜひ皆さんも試してください。【解説】川嶋朗(東京有明医療大学保健医療学部教授・医師)


【No.1ブロガー】田宮陽子さん "メンタルブロック" を外せば心身が健康になる

【No.1ブロガー】田宮陽子さん "メンタルブロック" を外せば心身が健康になる

「豊かで幸せになることを自分に許可できていない」ということを「メンタルブロック」といいます。いったいどうしたらメンタルブロックが外れるのかしら?私は必死になってその方法を探しました。その方法はとってもカンタンなことでした。しかも0円(タダ)でできることだったのです。【解説】田宮陽子(エッセイスト)


【医師も実践】私が「情報断食」をお勧めする2つの理由 ニュースが心身に与える影響とは

【医師も実践】私が「情報断食」をお勧めする2つの理由 ニュースが心身に与える影響とは

「特に理由もなく不安になる」「なんとなく鬱々とする」「ストレスで息苦しい」「なぜか体調が優れない」ネガティブな状態にいるあなたに試していただきたいのが「ニュース断ち」です。テレビや新聞、スマホ、ネットなどからあふれているニュースをすべてシャットアウトするいわば情報の断捨離です。【解説】西脇俊二(ハタイクリニック院長)


【夜間頻尿・便秘を改善】30秒当てるだけで自律神経が整う「仙骨シャワー」のやり方

【夜間頻尿・便秘を改善】30秒当てるだけで自律神経が整う「仙骨シャワー」のやり方

「腰が痛くて長時間座れない」「体がいつも疲れている」「夜中に何度も目が覚めてトイレに行く」「不妊治療を続けているが妊娠の兆しがない」――。根本的な原因を探っていくと、すべて2つの原因(①血流の悪化②自律神経の乱れ)に集約されます。【解説】中野朋儀(自治医科大学附属病院麻酔科・鍼灸師)


最新の投稿


【ブロッコリーの栄養】茹ですぎに注意!便秘解消・シワ対策に効果のある食べ方・使い方

【ブロッコリーの栄養】茹ですぎに注意!便秘解消・シワ対策に効果のある食べ方・使い方

ブロッコリーは、野菜の中でも栄養が飛び抜けて豊富で、多くの健康効果や美容、ダイエットにも効果を期待できる、まさに「野菜の王様」です。体にいい成分の宝庫であるブロッコリーを、積極的に食生活に取り入れない理由はありません。【解説】木村至信(秋山眼科医院耳鼻咽喉科部長、木村至信BANDリーダー)


【肩こり・五十肩を改善】痛みやしびれをすぐに解消する体操「手首振り」

【肩こり・五十肩を改善】痛みやしびれをすぐに解消する体操「手首振り」

手のしびれ、肩こり、五十肩、腱鞘炎、腕や手の疲れとそれによる痛みなど、手・腕・肩のトラブルに悩まされている人は多いものです。わずか1〜2分で簡単にできるバンザイ手首振りは、血液とリンパ(体内の余分な水分や老廃物、毒素などを運び出す体液)の流れを劇的に改善させます。【解説】宮本啓稔(新宿西口治療院院長)


【直腸性便秘】便を出す効果的な方法「考える人のポーズ」 大腸肛門科専門医が実験で確認

【直腸性便秘】便を出す効果的な方法「考える人のポーズ」 大腸肛門科専門医が実験で確認

便秘は①大腸の動きが遅く便がなかなか直腸まで下りてこない②便は直腸まで下りてきているが、うまく排出できない のタイプです。②を「直腸性便秘」と呼びます。便意を感じにくくなる、便が非常に硬くなる、残便感がある、排便時に痛みや違和感があるなどの特徴があります。【解説】高野正太(大腸肛門病センター高野病院肛門科部長)


【生活習慣病を予防】漬けるだけで超簡単「酢ピーナッツ」の作り方

【生活習慣病を予防】漬けるだけで超簡単「酢ピーナッツ」の作り方

ピーナッツと酢を組み合わせた「酢ピーナッツ」は、さまざまな健康効果をいいとこ取りした食品です。カリカリ食感とほどよい酸味が絶妙で、お茶請けやお酒のおつまみなどにぴったり!漬けるだけでできる超簡単な酢ピーナッツを、ぜひ皆さんもお試しください!【料理・栄養計算・スタイリング】五十嵐ゆかり(料理研究家・管理栄養士)


【肝臓病とは】A型肝炎 B型肝炎 C型肝炎の違いは? 急性と慢性の違いは? (子供でも分かる大人の病気)

【肝臓病とは】A型肝炎 B型肝炎 C型肝炎の違いは? 急性と慢性の違いは? (子供でも分かる大人の病気)

肝臓は多数の肝小葉という単位が集まった臓器で、「人体の化学工場」といわれ、胆汁を生成して消化を助けるほか、栄養分の分解や貯蔵、解毒、排泄など、重要な働きをしています。【解説】川嶋朗(東洋医学研究所附属クリニック自然医療部門医師・東京有明医療大学教授)