【心と脳の健康】速歩きする時間を増やすと脳が活性化し、うつ・認知症も防げる

【心と脳の健康】速歩きする時間を増やすと脳が活性化し、うつ・認知症も防げる

中之条町での調査では、家にこもるなど、1日当たり4000歩未満の歩数では、うつ病が発症しやすいという結果が出ました。私が行ったその他の研究でも、農村地域の主婦にうつ傾向の人が多いとわかっています。【解説】青栁幸利(東京都健康長寿医療センター研究所 老化制御研究チーム副部長)


→「中之条研究」とは

速く歩くことが、うつを防ぐポイント

 中之条町での調査では、家にこもるなど、1日当たり4000歩未満の歩数では、うつ病が発症しやすいという結果が出ました。
 私が行ったその他の研究でも、農村地域の主婦にうつ傾向の人が多いとわかっています。農作業のない時期には外に出る機会が少ないこと、車での移動が多いことが、理由として考えられます。

 ところで、中之条町の70代の男性が、強いうつ傾向になったケースがありました。1日に1度、犬の散歩を習慣にし、1日の平均歩数は4000歩程度でした。

 身体活動計のデータから理由がわかりました。犬の散歩以外はあまり活動していなかったのです。また、4000歩の中にほとんど速歩きがありませんでした。
 この男性に日々の過ごし方を聞いたところ、散歩に行くと疲れてしまい、帰ってすぐ横になってしまうのだそうです。居間に布団を敷きっぱなしで、就寝時間を除く日中の間、ほとんど家の中でごろごろしていました。
 本人は健康のために毎日の散歩を自分に課しているようでしたが、これでは効果が上がりません。

 ほかにも、1日平均8000歩以上歩いているのに、強いうつ傾向と診断された男性がいました。この男性の場合は、歩く速度が遅いことが原因でした。
 私たちの調査では、8000歩を歩けば、速歩きは20分程度になるケースが多いのですが、この男性は、ほとんどなかったのです。

 これらの例からもわかるように、毎日散歩しても、家の中で活動していなかったり、歩くスピードが遅かったりすれば、健康を保つ効果は得られにくくなります。

「脳トレ」よりも歩くほうが効果的

 うつ病だけでなく、認知症の予防と改善についても、歩くことが役立ちます。
 アメリカの研究で、歩いて全身の血流がよくなると、脳の血流もよくなることがわかっています。実際、認知症の患者さんの治療に、ウォーキングを取り入れている病院もあります。

 私たちの行っている調査では、1日当たり5000歩を歩き、そのうちに速歩きが7・5分以上含まれていると、認知症が防げることがわかっています。

 脳を鍛えるゲームやパズルがありますが、それよりも外に出て速歩きをするほうが、脳を活性化するのに効果的だと、私は思います。

青栁幸利
1962年、群馬県生まれ。筑波大学卒。トロント大学大学院医学系研究科博士課程修了。医学博士。高齢者の運動処方ガイドラインの作成に関する研究に携わり、内外の公的プロジェクトのメンバーとして老人保健事業等を支援。『あらゆる病気を防ぐ「一日8000歩・速歩き20分」健康法』(草思社)など著書多数。

※これらの記事は、マキノ出版が発行する『壮快』『安心』『ゆほびか』および関連書籍・ムックをもとに、ウェブ用に再構成したものです。記事内の年月日および年齢は、原則として掲載当時のものです。

※これらの記事は、健康関連情報の提供を目的とするものであり、診療・治療行為およびそれに準ずる行為を提供するものではありません。また、特定の健康法のみを推奨したり、効能を保証したりするものでもありません。適切な診断・治療を受けるために、必ずかかりつけの医療機関を受診してください。これらを十分認識したうえで、あくまで参考情報としてご利用ください。

この健康情報のエディター

関連する投稿


【認知症・MCI】予防には「緑茶」が最適!飲む頻度も高いほど良いと追跡調査でわかった!

【認知症・MCI】予防には「緑茶」が最適!飲む頻度も高いほど良いと追跡調査でわかった!

調査開始時と追跡調査時のデータを解析したところ、調査開始時から日常的に緑茶を飲まない人と比べて、緑茶を飲んでいる人のほうが、認知症やMCIの発症率が低いことが判明したのです。【解説】山田正仁(金沢大学附属病院神経内科長・金沢大学神経内科学教授)


【認知症とうつ病の違い】取り違えると悪化する恐れも 見分ける3つのポイントを伝授

【認知症とうつ病の違い】取り違えると悪化する恐れも 見分ける3つのポイントを伝授

認知症とうつ病は、どちらも高齢者に多く見られる病気です。高齢者のうつ病は、認知症を引き起こす原因の一つとされている一方、認知症がうつを併発することも少なくありません。認知症とうつ病の間には密接な関係があり、二つの病気には似た症状を呈する場合もあるので、取り違えやすいのです。【解説】長谷川洋(長谷川診療所院長)


【セラピーキャットとは】認知症や精神疾患の患者さんに変化!「猫」は五感を刺激し心を癒す存在

【セラピーキャットとは】認知症や精神疾患の患者さんに変化!「猫」は五感を刺激し心を癒す存在

私たちにとって、猫は五感を心地よく刺激する存在です。見れば愛らしく、触ってなでれば快く、鳴けば美しい旋律となって、えもいわれぬ刺激となります。それは、病気のあるなしに関係なく、すばらしい経験だといえるでしょう。【解説】小田切敬子(NPO法人アニマルセラピー協会理事長・生物科学博士)


【糖尿病が改善】ウォーキング後の「チーズ」摂取で筋力がアップ!生活習慣病を予防できる

【糖尿病が改善】ウォーキング後の「チーズ」摂取で筋力がアップ!生活習慣病を予防できる

「ウォーキング後にチーズなどの乳製品を食べると、筋力がアップするうえに、生活習慣病の予防・改善にも役立つ」ことが、私たちの研究で判明しました。さらに最近の研究では、インターバル速歩後に乳製品をとると、実際に糖尿病や動脈硬化が改善することもわかりました。【解説】能勢博(信州大学大学院医学系研究科教授)


【認知症・軽度認知障害(MCI)とは】誤解や偏見を捨てよ!認知症改善の心構え

【認知症・軽度認知障害(MCI)とは】誤解や偏見を捨てよ!認知症改善の心構え

日本では、認知症に対する医療や社会の理解が非常に遅れています。結果、誤った対応によって症状がより深刻化し、ご本人や周りの人たちがつらい思いをしてしまうケースが後を絶ちません。医師や介護職の人はもちろん、家族も病気に対する正しい知識を持つ必要があります。【解説】長尾和宏(長尾クリニック院長)


最新の投稿


「キーン」と鳴り響く耳鳴りが「耳こすり」で解消し不眠改善!ぐっすり眠れる

「キーン」と鳴り響く耳鳴りが「耳こすり」で解消し不眠改善!ぐっすり眠れる

ストレスが積み重なったのでしょう。気がついたら「キーン」という高音の耳鳴り が聞こえるように。最もいやだったのは、寝るときでした。シーンと静かな中、キーンという音だけが聞こえるので不眠になってしまいました。そこで藤井先生の治療院に行き、教わったのが「耳こすり」でした。【体験談】長谷川真由美(会社員・33歳)


【咳止め効果】のどの炎症を抑え気管支を広げる「蜂蜜コーヒー」は薬並み!と呼吸の名医が推奨

【咳止め効果】のどの炎症を抑え気管支を広げる「蜂蜜コーヒー」は薬並み!と呼吸の名医が推奨

ハチミツには、優れた抗炎症作用、抗酸化作用があります。特に抗炎症作用により、のどの炎症が抑えられるため、セキが軽くなると考えられます。ハチミツ以外では、コーヒーにも、セキの予防効果があることが報告されています。【解説者】大谷義夫(池袋大谷クリニック院長)


退職後の検査・降圧剤はどこまで必要?「高血圧」との付き合い方を医師が指南

退職後の検査・降圧剤はどこまで必要?「高血圧」との付き合い方を医師が指南

人間の三大欲は、食欲・性欲・睡眠欲といわれています。それに加え、昨今は「健康長寿欲」に多くの人がとらわれています。2016年の調査で「欲しい物」の1位が「健康」で、「幸せ」を大きく上回ったのです。「幸せよりも健康が欲しい」という結果に私は衝撃を受けました。【解説】名郷直樹(武蔵国分寺公園クリニック院長)


【首が痛い!の原因】チェックリストで分かる症状、対処法はこれ!

【首が痛い!の原因】チェックリストで分かる症状、対処法はこれ!

首の痛みの場合、適切な対策をとり損ねるおそれがあります。首の骨が悪くなっているといわれれば、多くの患者さんは「それなら痛みが出るのもしようがない」「薬で痛みを抑えるしかないのだろうな」と考え、それ以上の対策を取らなくなってしまうからです。【解説】竹谷内康修(竹谷内医院カイロプラクティックセンター院長)


【健康レシピ】脳を活性化する「卵」アレンジ薬膳(卵黄みそ漬け)

【健康レシピ】脳を活性化する「卵」アレンジ薬膳(卵黄みそ漬け)

卵は、アミノ酸、ビタミン、ミネラルをバランスよく含んだ「完全栄養食品」といわれています。加熱しても、栄養価に大きな変化が見られず、どのように調理しても必要な栄養を摂取できるので、夏バテ撃退には最適な食材といえるでしょう。【解説・料理・栄養計算】検見﨑聡美(管理栄養士・料理研究家)


ランキング


>>総合人気ランキング