【医師考案】自律神経を整えうつや不眠症に効く「筋膜はがし」で膝の痛みも改善

【医師考案】自律神経を整えうつや不眠症に効く「筋膜はがし」で膝の痛みも改善

私は、整形外科医ではないので、「ひざ痛」については、門外漢です。ところが、長年、治療を続けてもよくならない、手術を勧められている、そういうかたのひざ痛が、私が考案した「筋膜はがし」でたちまち軽快したという例があるので、ご紹介したいと思います。【解説】荒木隆次(あらき心療クリニック院長)


筋肉を覆う膜を伸ばし 痛みやコリを取り除く

 私は、整形外科医ではないので、「ひざ痛」については、門外漢です。ところが、長年、治療を続けてもよくならない、手術を勧められている、そういうかたのひざ痛が、私が考案した「筋膜はがし」でたちまち軽快したという例があるので、ご紹介したいと思います。

 私が診療を行う心療内科には、さまざまな悩みを持つ患者さんが来られます。不眠やうつはもちろんのこと、原因不明の痛みやしびれ、倦怠感、便秘、下痢、腰痛、ひざ痛、肩こりなど、心身の不調を複数抱えている人も少なくありません。
 そうした不調を少しでも和らげられないかと、私は長年、患者さんが自分でできるセルフケアを考えてきました。

 その一つが、今回ご紹介する筋膜はがしです。これは、平たくいうと、筋肉を覆っている筋膜(後述)を伸ばして、痛みやコリを取り除くストレッチです。
 以前から私は、漠然と、全身は膜でつながっているのではないかと感じていました。

 例えば、リラックスして横になっているとき、足の指を曲げると、手の指にその動きを感じます。あるいは、首すじに手を当て、まぶたを閉じて目を左右に動かすと、目の動きに合わせて首すじが動くのがわかります。
 そういう体験があり、筋肉や筋膜のことを調べるうちに、漠然とした感覚は確信に変わりました。体は、全身くまなく、膜のようなものでつながっているのです。そして、体のどこを伸ばせば、別のどこが伸びるという関係性までわかってきました。そうした経験の積み重ねから完成したのが、筋膜はがしです。

 私はこの筋膜はがしを、当院を受診する患者さんにもやってもらいました。すると、ほとんどの人が、リラックスできて気持ちがいいと答えられます。
 特に、過度の緊張でうつ症状のある人に効果が顕著でした。そういう人は、心だけでなく体も緊張しており、ひざや腰、肩などに痛みやコリがあります。

 しかし、筋膜はがしで筋膜がほぐれると、体の緊張が取れて、うつや不眠の症状が改善する患者さんもいました。おそらく、心身の緊張がほぐれて、自律神経(内臓や血液の働きを支配する神経)のバランスがよくなるのでしょう。

「足をゆっくり伸ばすだけで筋膜の癒着ははがれる」と荒木先生

半月板損傷によるひざ痛が軽快した!

 筋膜はがしを試すうちに、ひざや腰の痛みに劇的な効果があることがわかってきました。

 ひざ痛が改善したかたの例をご紹介しましょう。

●Aさん(82歳・女性)
 Aさんは、私の患者さんの母親です。2013年の11月20日、いつものように娘さんに同伴してきたAさんから、ひざが痛くて困っているという話を聞きました。
 ひざの痛みは何年も前からあり、通っている整形外科では、1年以上、痛みを抑えるヒアルロン酸注射を打ち続けてきたそうです。しかし、なかなかよくなりませんでした。そのうち、朝、布団から起き上がるのも難しくなり、娘さんがベッドを購入することになりました。
 Aさんの妹さんもひざが悪く、大きな病院で内視鏡手術を受けて痛みが軽くなったそうです。それを聞いてAさんも、手術を受けてみようと、同じ病院で診てもらいました。検査の結果、「半月板(ひざの円滑な動きを助ける、ひざ関節にある三日月型の軟骨組織)が傷んでいる」と医師からいわれ、年明けに手術をする予定でした。

 そこで私は、試しに筋膜はがしを勧めてみました。Aさんは、半信半疑の様子でしたが、治療用ベッドに寝てもらい、私が痛みのあるほうの足をゆっくり伸ばすと、ひざが伸びて楽になったとおっしゃいます。そこで自宅で行う方法(筋膜はがし)を教え、試してもらうことにしました。

 2週間後、娘さんといっしょに来られたAさんが、「先生、ひざがいいみたいです」とうれしそうに報告してくれました。その後、痛みはさらに軽くなり、年明けの1月6日(1ヵ月半後)の病院の診察で、「痛みが軽くなったのなら、しばらく様子を見ましょう」と、手術は見送りになりました。その後、通院をやめていますが、ひざはほとんど問題ないそうです。

血管や神経が解放され 痛みが取れていく!

 筋膜はがしをすると、どうしてこのようにひざの痛みが改善するのでしょうか。私は、次のように考えています。

 筋膜は、簡単にいうと、全身の筋肉や内臓、骨、血管などを覆っている薄い網目状の膜です。例えば、鶏肉を調理する際に確認することができます。肉の外側を覆う、薄い半透明の膜です。

 筋肉自体は、収縮か弛緩しかできず、みずから伸びることはありません。しかし、コラーゲンとエラスチンの二つの線維組織で構成された筋膜は、伸縮性や弾力性に富み、自由に伸び縮みできます。この筋膜の柔軟性によって、全身の筋肉をスムーズに動かすことができるのです。
 しかし、加齢や運動不足、悪い姿勢などによって、筋膜がかたくなったり、よじれたり、癒着したりすることがあります。その結果、筋肉の動きが悪くなり、筋膜の中の血管や神経の流れが滞って、コリや痛みが出てくると思われます。最近は、筋膜の中に痛みを感じる神経が多数あることもわかっています。

 筋膜はがしは、筋膜を伸ばして癒着した筋膜部分をはがし、伸縮性のある筋膜に戻すストレッチです。
 足をゆっくり伸ばすと、深部の筋膜まで引っ張られて、癒着した筋膜部分がはがれると考えられます。すると、圧迫されていた血管や神経が解放されて、痛みが取れていくのです。

 ひざの痛みも、ひざ周囲の筋肉を覆う筋膜の癒着が強くて起こります。筋膜を伸ばしてやることで、血液や神経の通りがよくなり、改善していきます。
 ひざ痛に有効な筋膜はがしは、とても簡単です(やり方は図解参照)。あおむけになって足をそろえ、足を片方ずつゆっくり10秒くらいかけて伸ばすだけです。
 伸ばす足側の骨盤を押し下げるようにして、足を伸ばします。コツは、体の力を抜き、かかとを意識して、遠ざけるようなイメージです。
 力を抜いてゆっくり伸ばすと、筋膜がくまなく伸びて、はがれていきます。足に力を入れて強く突っ張るように伸ばすと、表面の筋膜しか伸びません。
 また、足先を少し起こし、かかとを遠ざけるように伸ばすと、足の後ろ側の筋膜がよく伸びます。

 まっすぐ伸ばすだけでなく、足先を内側に向けて伸ばすと足の外側の筋膜、足先を外側に向けて伸ばすと足の内側の筋膜が伸びます。また、反対側の腕を足先のほうに下げて伸ばすと、さらに足の筋膜がよく伸びます。
 筋膜はがしは、痛い側の足だけ行ってもかまいませんが、予防のために両足行うことをお勧めします。まっすぐ、内側、外側を1セットとして、1回に2〜3セットずつ、1日数回を目安に行ってください。就寝前に行うと、寝つきがよくなるので特にお勧めです。

荒木隆次
 1975年、九州大学医学部卒業。同精神医学教室、産業医科大学、松尾病院副院長を経て、あらき心療クリニック開院。著者に『やせる!デルデル呼吸ダイエット』(マキノ出版)などがある。

※これらの記事は、マキノ出版が発行する『壮快』『安心』『ゆほびか』および関連書籍・ムックをもとに、ウェブ用に再構成したものです。記事内の年月日および年齢は、原則として掲載当時のものです。

※これらの記事は、健康関連情報の提供を目的とするものであり、診療・治療行為およびそれに準ずる行為を提供するものではありません。また、特定の健康法のみを推奨したり、効能を保証したりするものでもありません。適切な診断・治療を受けるために、必ずかかりつけの医療機関を受診してください。これらを十分認識したうえで、あくまで参考情報としてご利用ください。

この健康情報のエディター

関連する投稿


【突発性難聴】聴力が「首のV字筋マッサージ」で回復し、耳鳴りも改善

【突発性難聴】聴力が「首のV字筋マッサージ」で回復し、耳鳴りも改善

いきなり、右の耳が聴こえなくなったのは62歳のときです。突発性難聴と診断され、すぐに入院して治療を受けところ、ほんの少しだけ音が聴こえるまでに回復しました。【体験談】橋本洋子●東京都●72歳●主婦


【精神治療の現場より】ウォーキングは心の健康に効果有り ― うつ・不安障害・統合失調症の改善例

【精神治療の現場より】ウォーキングは心の健康に効果有り ― うつ・不安障害・統合失調症の改善例

ウォーキングには、特別な器具や場所が必要ありません。患者さんにも安心して勧められます。いつからでも簡単に始められますし、家にこもりがちな人には屋外に出るよい機会になります。【解説】大西 守(精神科医)


【医師解説】首の後ろを温めると、糖尿病、高血圧、顎関節症の改善に効果あり

【医師解説】首の後ろを温めると、糖尿病、高血圧、顎関節症の改善に効果あり

高血圧や糖尿病などの生活習慣病をはじめ、体に起こるさまざまな不調の原因は、脳幹と呼ばれる部位の機能低下にあると私は考えています。【解説】沼田光生(海風診療所院長)


突発性難聴による耳鳴りが改善し、飛蚊症も解消した秘密は「指の○を叩く」こと

突発性難聴による耳鳴りが改善し、飛蚊症も解消した秘密は「指の○を叩く」こと

全身の気や血液の流れがよくなり、耳鳴りや飛蚊症が改善する「指の股たたき」をご紹介します。【解説】留目昌明(和楽堂治療院院長)


【首の後ろ】を押すと、さまざまな病気や症状が改善する不思議

【首の後ろ】を押すと、さまざまな病気や症状が改善する不思議

「ピンポイント療法」には、第1頸椎と第2頸椎の二つのポイントを押す方法があります。ここでは、それぞれの押すポイントの見つけ方と、ピンポイント療法のやり方を説明しましょう。【解説】松久 正(鎌倉ドクタードルフィン診療所院長)


最新の投稿


食事制限なし運動なしで糖尿病・痛風を克服!実践した「耳もみ」のやり方とは

食事制限なし運動なしで糖尿病・痛風を克服!実践した「耳もみ」のやり方とは

私の治療室ではフランスのノジェ博士が提唱した「耳介医学」に沿って、耳針治療をしています。私が特に注目しているのは、耳の中央付近にある「星状神経節」に対応するポイントです。私は自分の糖尿病も耳への刺激治療で治しました。また、血糖値の高い患者さんに「耳もみ」を勧め効果を上げているのです【解説】塚見史博(塚見鍼灸治療室院長)


皮ごと摂取で飛蚊症改善!ダイエットや関節痛にも高い効果を発揮する【ショウガ氷】

皮ごと摂取で飛蚊症改善!ダイエットや関節痛にも高い効果を発揮する【ショウガ氷】

ショウガに含まれる、ジンゲロールとショウガオール(ショウガを加熱または乾燥すると、ジンゲロールがショウガオールに変化する)という二つの薬効成分が、病気や症状を改善する優れた効能をもたらします。【解説】石原新菜(イシハラクリニック副院長)


今日からあなたもジンジャラー!体の機能を高める【ショウガ氷】基本の作り方

今日からあなたもジンジャラー!体の機能を高める【ショウガ氷】基本の作り方

ショウガは、漢方薬の材料としても使われ、体のさまざまな機能を高めてくれることはよく知られています。ショウガを日常的に活用している人を「ジンジャラー」と呼びますが、私自身、自他ともに認めるジンジャラーです。1日に取るショウガの量は、およそ30g。さまざまな料理にショウガを使います。【解説】浜内千波(料理研究家)


【インフルエンザ予防に】ミカン丸ごと美味レシピ(2)

【インフルエンザ予防に】ミカン丸ごと美味レシピ(2)

ミカンの持つ、驚くべき薬効を知ったら、できれば皮ごとミカンを食べたくなってしまいますよね。そこで、このレシピでは、ミカンを皮ごとおいしくいただくレシピをご紹介します!どれも短時間で簡単に作れるものばかりです。【料理・レシピ考案】神田美紀(薬膳料理研究家)


【体質別】血圧を下げる「降圧食」 ― 体力のある人は椎茸スープ、ない人は小豆昆布

【体質別】血圧を下げる「降圧食」 ― 体力のある人は椎茸スープ、ない人は小豆昆布

私のクリニックでは、現代医学や漢方などのほか、食事療法をベースとした、薬に頼りすぎない治療を提案しています。具体的には、日本の伝統食にのっとった食事法の一つ、マクロビオティックをもとに、食事の指導をしているのです。ここでは高血圧を食事で改善する「血圧を下げる降圧食」をご紹介します【解説】三浦直樹(みうらクリニック院長)


ランキング


>>総合人気ランキング