【突発性難聴とは】ステロイドに代わる新しい治療法 クラシック音楽で症状が改善

【突発性難聴とは】ステロイドに代わる新しい治療法 クラシック音楽で症状が改善

これまで一般的に、突発性難聴を発症した際には、なるべく安静に過ごすことが推奨されてきました。しかし、検証の結果、難聴を発症したほうの耳を積極的に使ったほうが、脳が刺激されて、症状の改善につながることが判明したのです。【解説者】岡本秀彦(自然科学研究機構生理学研究所准教授)


ステロイド治療でも改善しないケースは多い

皆さんは、突発性難聴をご存じでしょうか。
なんの前ぶれもなく、突然耳の聴こえが悪くなったり、耳鳴りが起こったりする症状のことをいいます。

突発性難聴は、耳の内耳にある、蝸牛という組織が機能低下を起こして発症すると、一般的にはいわれています。
しかし実際のところ、いまだにその原因はよくわかっておりません。
詳しい原因がわからないので、現在、多くの医療現場で行われているステロイドによる治療法も、どこまで効果的なのか、不明といえます。

突発性難聴の治癒には、早期治療が鉄則とされています。
しかし、発症してから早期にステロイドを投与した場合でも、全く回復しなかったり、改善したとしても完全には機能が回復しなかったりするケースが多いのです。


さらに、ステロイド治療は、高い副作用のリスクも伴います。
このような状況を考えると、現在主流となっているステロイド治療は、必ずしも万全の方法とはいえないのではないでしょうか。
そこで私は、ステロイドに代わる治療法の研究を始めました。

そのなかで試みたのが、クラシック音楽を使った治療法です。
これは、聴こえが悪くなったほうの耳を積極的に使うことによって、その機能を回復させようとするものです。
私たちの体は、一部の機能が低下してしまうと、無意識にそこを回避して、あまり使おうとしなくなります。

使う頻度が下がれば、当然さらにその能力も衰えていきます。
そこで、機能低下した部位を積極的に使い、症状を回復させようとする治療法があります。

半身マヒのときなどに行う、リハビリ治療などがその例です。
私は、突発性難聴に対しても、その方法が効果的ではないかと考えました。

そして、突発性難聴の患者さんたちに協力していただき、次のような検証を行ったのです。

難聴の耳は積極的に使ったほうがいい!

対象は、突発性難聴で入院した患者53名です。
このうち、31名の患者さんに対しては、ご自身の希望によって、一般的なステロイド治療のみを行いました。

そして、残りの22名のかたには、ステロイド治療に加え、1日につき6時間、クラシック音楽を聴いてもらったのです。
使用した音楽は、モーツァルトやベートーベンなど、複数の作曲家によるもので、比較的穏やかな曲が多かったと思います。

正常なほうの耳に耳栓をし、外界からの音を聴こえないようにしたうえで、聴力の衰えたほうの耳だけで音楽を聴きます。
音楽は6時間聴き続けてもいいですし、断続的に聴いてもかまいません。

また、その間は本を読んだりすることも許可しました。
さらに、日常においても、すべて難聴の耳だけで過ごしてもらいました。

治療日数は人によって異なりますが、7〜10日です。
このようにして、ステロイド治療だけの人と、ステロイド治療に加えて音楽療法を行った人とで、症状の回復経過を比較しました。

その結果、みごと後者のほうが、治癒効果が高くなることが判明したのです。
治療前では、正常な耳と、難聴の耳との聴力差の平均値は、25dBでした(dBは音の大きさを表す値)。
そして、治療後に再び測ると、ステロイド治療だけの人が平均して15dBの差だったのに対して、音楽療法も行った人は、なんと平均して7dBにまで回復したのです。

さらに、退院してから3ヵ月後の状態も調べました。
すると、ステロイド治療だけの人たちの完治率は58%だったのに対し、音楽療法も行った人たちは、86%にも及びました。

これまで一般的に、突発性難聴を発症した際には、なるべく安静に過ごすことが推奨されてきました。
しかし、この結果により、難聴を発症したほうの耳を積極的に使ったほうが、脳が刺激されて、症状の改善につながることが判明したのです。

皆さんも、もし突然耳の聴こえが悪くなった際には、積極的に音楽を聴くことをお勧めします。

岡本秀彦
大阪大学卒業。ドイツのミュンスター大学の生体磁気研究所研究員を経て、平成22年8月から自然科学研究機構生理学研究所の統合生理研究系准教授に就任。医学博士。専門は、神経科学、聴覚生理学。

※これらの記事は、マキノ出版が発行する『壮快』『安心』『ゆほびか』および関連書籍・ムックをもとに、ウェブ用に再構成したものです。記事内の年月日および年齢は、原則として掲載当時のものです。

※これらの記事は、健康関連情報の提供を目的とするものであり、診療・治療行為およびそれに準ずる行為を提供するものではありません。また、特定の健康法のみを推奨したり、効能を保証したりするものでもありません。適切な診断・治療を受けるために、必ずかかりつけの医療機関を受診してください。これらを十分認識したうえで、あくまで参考情報としてご利用ください。

この健康情報のエディター

関連するキーワード


突発性難聴

関連する投稿


【突発性難聴】耳鳴りと音割れの症状が「耳こすり」で改善!あご痛も軽減した

【突発性難聴】耳鳴りと音割れの症状が「耳こすり」で改善!あご痛も軽減した

2年前の冬の朝、テレビの音が聞こえないことで、左耳の不調に気づきました。 検査の結果、突発性難聴で「症状は重め」と診断されました。ステロイド剤の点滴などで、低い音域は聞こえるようになりましたが、高い音域は戻らなかったのです。そうこうするうちに、耳鳴りが始まりました。【体験談】佐藤沙織(仮名・会社員・32歳) 


【耳鳴り・難聴を改善】ブーンという低音ならこのツボ刺激が有効!「耳こすり」のやり方

【耳鳴り・難聴を改善】ブーンという低音ならこのツボ刺激が有効!「耳こすり」のやり方

「ジー」「ブーン」といったボイラー音のような低い音の場合は東洋医学でいう「腎」の弱りが考えられます。「ピー」「キーン」という高音の耳鳴りなら肝臓の機能の低下、「ザァー」「サァー」といった風のような音は胃腸の機能低下が関わっていると考えられます。【解説】藤井清史(呑気堂Fujii鍼灸治療院・Tomo整骨院総院長)


歯周病を改善しサラサラ唾液にする「耳の下もみ」で血圧も下がる理由

歯周病を改善しサラサラ唾液にする「耳の下もみ」で血圧も下がる理由

「耳の下もみ」は文字どおり、耳の下をもんでマッサージする健康法です。歯周病だけでなく、生活習慣病の予防・改善などに効果的ですが、高血圧の解消に特に効果を上げています。では、なぜ、耳の下もみが高血圧の予防・改善に役立つのでしょうか。【解説】齋藤道雄(齋藤ファミリーデンタル院長・医学博士)


【突発性難聴】聴力が「首のV字筋マッサージ」で回復し、耳鳴りも改善

【突発性難聴】聴力が「首のV字筋マッサージ」で回復し、耳鳴りも改善

いきなり、右の耳が聴こえなくなったのは62歳のときです。突発性難聴と診断され、すぐに入院して治療を受けところ、ほんの少しだけ音が聴こえるまでに回復しました。【体験談】橋本洋子●東京都●72歳●主婦


【鍼灸師】10年以上悩まされた「耳鳴り」が治った 心掛けたあることとは?

【鍼灸師】10年以上悩まされた「耳鳴り」が治った 心掛けたあることとは?

耳鳴りの患者さんには、首や肩に、異常なほど頑固なコリが見られます。これを鍼灸で治療すると、症状がある程度まで改善します。それに加えて、食事の内容を見直すと、さらに治療効果がアップするのです。【解説】野村哲也(はり・きゅう丙辰堂治療院院長・養鶏家)


最新の投稿


【セラピーキャットとは】認知症や精神疾患の患者さんに変化!「猫」は五感を刺激し心を癒す存在

【セラピーキャットとは】認知症や精神疾患の患者さんに変化!「猫」は五感を刺激し心を癒す存在

私たちにとって、猫は五感を心地よく刺激する存在です。見れば愛らしく、触ってなでれば快く、鳴けば美しい旋律となって、えもいわれぬ刺激となります。それは、病気のあるなしに関係なく、すばらしい経験だといえるでしょう。【解説】小田切敬子(NPO法人アニマルセラピー協会理事長・生物科学博士)


首こり・肩凝り 症状別【チェックリスト】あなたの頚椎症は軽症?重症?

首こり・肩凝り 症状別【チェックリスト】あなたの頚椎症は軽症?重症?

頸椎症スペクトラムの全体像がわかったところで、あなたの首がいま、どんな状態にあるかチェックしてみましょう。チャートの「スタート」から始め、イエスかノーか答えながら進んでください。ゴールは1~5のどれになりましたか。それが、あなたの現在の首の状態の目安です。【解説】竹谷内康修(竹谷内医院カイロプラクティックセンター院長)


【美白・美肌を作る】アンチエイジングには「はと麦酒」がお勧め!その効果は化粧品同等 ダイエット効果も

【美白・美肌を作る】アンチエイジングには「はと麦酒」がお勧め!その効果は化粧品同等 ダイエット効果も

ハトムギは、昔から「肌にいい」といわれ、ヨクイニンという生薬として使われています。そこで、私たちはまず、ハトムギの肌への効果に着目しました。その結果、ハトムギには紫外線ダメージによる肌の乾燥や、シミを防ぐ働きのあることが明らかになったのです。【解説】清水邦義(九州大学農学部研究院森林圏環境資源科学研究分野准教授)


【血管強化食材】動脈硬化を撃退する絶品「ローストピーナッツ」レシピ

【血管強化食材】動脈硬化を撃退する絶品「ローストピーナッツ」レシピ

ピーナッツといえば、「太る」「ニキビができる」など、健康とは縁遠い食材だと思われがち。しかし、最近、その豊富な栄養素が、巷で大きな話題を集めています。便秘が解消して、やせやすくなる、血管も肌も若返ると、まさにピーナッツは優良健康食材なのです。【料理・栄養計算・スタイリング】五十嵐ゆかり(料理研究家・管理栄養士)


血糖値が正常値に下がった!「玉ねぎのオイル漬け」は親子三代に伝わる健康常備食!

血糖値が正常値に下がった!「玉ねぎのオイル漬け」は親子三代に伝わる健康常備食!

タマネギのオイル漬けを口にしているおかげか、我が家は皆、いつも元気に過ごせています。今年はインフルエンザが猛威を振るっていましたが、長男はカゼひとつ引かず、無事に受験を乗り切ることができました。【解説】奥津純子(フードデザイナー・「タラゴンの挿し木」主宰)


ランキング


>>総合人気ランキング