アレルギー性疾患や糖尿病が激増、牛乳が原因!?
私が医師になったのは、1955年。この年の総医療費は、年間約2388億円でした。
それから、50年以上経過した2014年度の総医療費は、約40兆円。
この間に人口は、3260万人ほどふえただけですが、医療費は、168倍近く、爆発的にふえています。
また、1950年代の死因のトップ3は結核、脳血管障害、気管支炎でした。
ところが、1980年代に入ると、ガン、脳血管障害、心疾患がトップ3になります。
このほかに、アレルギー性疾患や糖尿病も激増しています。
日本人に、いったい何が起こったのでしょうか。
1945年以降、たくさんの人が「牛乳」を飲み始めました。
そのことが日本人に大きな変化を、しかも、悪い影響をもたらしたと、私は考えています。
それは、こういう考えからです。
4500種類ともいわれる哺乳動物は皆、自分のお母さんの乳を飲みます。
4500種類の哺乳動物がいれば4500種類の乳があり、それぞれの乳の成分はすべて異なります。
そして、同種の動物にとってのみ、完全栄養食品なのです。
つまり、それぞれの哺乳動物は、お母さんのおっぱい以外、飲んではいけないのです。
人間以外の動物は、すべて、この原則を守っています。
しかし、人間は、この原則を破ったため、さまざまな病気が発生しました。
牛乳の脂肪分は人体では溶け残る
乳というのは、最初は赤い血液です。
本来赤い血が、お母さんの乳房を通ると、白く変わるのです。
ですから、私は乳は「白い血液」といっています。
A型の血液を、A型の人に輸血しても問題ありませんが、A型の血液を、A型以外の人に輸血すると、死んでしまいます。
人間どうしの血液でも問題があるのに、ウシの血液を、人間の子供の血管に入れたら、すぐに死んでしまうでしょう。
輸血ではなく、経口投与であろうとも、その影響は甚大。
また、人間も含めて、哺乳動物は恒温動物です。
それぞれの動物の体温は異なり、しかも一定しています。
人間の平均体温は、36度台です。ウシの平均体温は38・5度。
つまり、ウシの乳は、平均体温が38・5度のウシに適したものなのです。
ところが、38度台のウシの乳が、36度台の体温の人間の体に入ったとしたら、どうなるでしょう。
その答えは、人間のほうが体温が低いので、牛乳に含まれる脂肪分は完全には溶けず、溶け残った脂肪は、人間の皮下脂肪に留まるということです。
さらに、血液中の余った脂肪は動脈硬化を進行させ、血管を詰まらせて、脳梗塞などの脳血管障害や心筋梗塞などの心疾患を引き起こします。
動物性たんぱく質のとりすぎが、現代日本の3大疾患を増やす原因
また、ガンのいちばんの原因は、牛乳に含まれるたんぱく質の一つ「カゼイン」と、考えられています。
1990年、アメリカ、コーネル大学のコリン・キャンベル博士が、アメリカと中国のガン患者の調査「チャイナプロジェクト」を行いました。
牛乳を飲まない中国人は、アメリカ人より、動物性たんぱく質の摂取量が大幅に少なく、しかも、ガン患者が圧倒的に少ないことがわかりました。
そのうえ、ガン患者の割合は、アメリカ人が12〜13%に対し、中国人はわずか0・8%。
牛乳などの動物性たんぱく質の摂取量が、ガンと密接な関係があることは明らかです。
このように見てくると、牛乳などの動物性たんぱく質のとりすぎが、脳血管障害や心疾患、ガンといった、現代日本の3大疾患をふやす原因となっていることがおわかりになるでしょう。
牛乳を飲んでも骨は丈夫にならない!
では、私たちはどうしたらいいでしょうか。
私の提案は、きわめてシンプルです。
それは、できる限り、1945年以前の、日本本来の食生活に戻すということです。
牛乳や乳製品、肉食をやめ、昔の日本人が食べていた魚や穀類、そして、野菜中心の食生活に切り替えてください。
牛乳を飲めば骨が丈夫になるなどといわれますが、それはウソです。
なぜなら、世界的に、牛乳や乳製品を多くとる北欧では、骨粗鬆症(骨がスカスカになる病気)の発生率が、日本の何倍にもなっているからです。
確かに牛乳には、カルシウムが含まれていますが、一方、たんぱく質も豊富です。
私たちの体は、たんぱく質を過剰摂取すると、体内のカルシウムが排泄されるという働きがあります。
このため、牛乳を飲めば飲むほど、骨からカルシウムが脱落してしまうのです。
昔の日本人は、海や畑(干しエビや小魚、コマツナなど)でとれる食品から、カルシウムを摂取していました。
それでいいのです。

和食中心の食事にすると精神面での変化も現れる
次のような例があります。
洋風中心の食事から、和食に切り替えると、精神面での変化が現れるといいます。
私が、気管支ぜんそくやアトピー性皮膚炎のお子さんたちの保護者に、食事指導をしたところ、「このごろ、親のいうことをよく聞くようになった」とか「友達と協調性をもって遊べるようになった」という声を聞くようになりました。
これは、ぜんそくやアトピーがよくなってくると、子供の心の偏かたよりも改善してきたということでしょう。
今からでも遅くありません。
本来の日本人にあった食や文化を取り戻しましょう。
解説者のプロフィール

真弓定夫
1931年、東京都生まれ。東京医科歯科大学卒業後、佐々病院小児科医長を務めた後、1974年、真弓小児科医院を開設。“薬を出さない・注射をしない”自然流の子育てを提唱。『自然にかえる子育て』(芽生え社)、『長寿の条件』(桃青社)、『子どもは病気を食べている』(家の光協会)など著書多数。