砂糖をたっぷり食べて29歳で大腸炎を発症
私は、29歳のとき、難病に指定されている潰瘍性大腸炎を発症しました。
試行錯誤の末、この病気をみずから完治させた私のもとには、さまざまな難病の患者さんが多数来院されます。
特に多いのは、やはり潰瘍性大腸炎、クローン病などの炎症性腸疾患の患者さんです。
病気を治すポイントは、一つではありません。
私は、物質面・精神面・気(生命エネルギーの一種)の三つを正すことを重要視しています。
そのなかで、物質面での原因の一つとして、腸の疾患には砂糖のとりすぎが関係していると感じています。
なぜなら、砂糖は腸内フローラ(さまざまな腸内細菌の集まり)を乱す一因だからです。
ブドウ糖に代表される単糖類は、腸の中で腐敗物質を出す悪玉菌のエネルギー源になると考えられます。
これは、甘いものを食べると、悪玉菌が繁殖して虫歯ができるのと同じです。
口の中も腸内も消化管の一部ですから、腸内でも同じことが起こるはずです。
私自身、病気を発症する前は甘いものが大好きでした。
日本の砂糖消費量が急激に増加したのは、高度経済成長期が始まる1960年代からです。
私は1961年生まれですから、まさに砂糖をたっぷり食べて育った世代です。
潰瘍性大腸炎やクローン病の患者さんに聞いてみても、傾向として、甘いものをよく食べていた人が多いのです。
砂糖や添加物のとりすぎは「リーキーガット症候群」の原因にも
砂糖や添加物のとりすぎは、腸の粘膜を損傷させ、本来なら体内に通すべきものでないものを
通してしまう「リーキーガット症候群」の原因にもなります。
特に、クローン病は、リーキーガット症候群の関連で炎症を起こしているといわれています。
そしてもう一つ、砂糖の怖いところは、麻薬のような中毒性があることです。
麻薬は、常習者の体内からへると、イライラするなどの禁断症状が起こります。
それをおさえようと、さらに薬物をとります。
そうして、しだいに薬物なしでは生きていけなくなってしまうのが麻薬中毒です。
砂糖も同じです。砂糖のような直接糖は、とると急激に血糖値を上げてインスリンの分泌を促します。
その後、今度は血糖値が下がり過ぎて低血糖になり、イライラしてきます。
だから食べずにいられない、というぐあいに、どんどん中毒化してしまうのです。
中毒性は、砂糖の精製度が上がるほど、高くなります。
ですから、白砂糖は特にとらないことです。
1日1食は糖質をとらないのがお勧め!
私のクリニックでは、毎月1回、食事療法の一環として、患者さんを集めて3日間の「糖質制限食」を実践しています。
1日1食で、その食事内容は、みそ汁、納豆、豆乳ヨーグルトなどの発酵食品と、野菜が中心です。
糖質は、果物などで少量とりますが、1日20g以下に制限しています。
そして、その後も砂糖や小麦などを使った糖質の多い食品は、できるだけ控えるようにしてもらいます。
糖質をとらないと、エネルギーが産生できないと思う人もいるかもしれません。
しかし、私たちの体には、エネルギーを作るしくみがいくつかあります。
まず、血液中のブドウ糖をエネルギー源にします。
それが不足したら、肝臓に蓄えられたグリコーゲンからブドウ糖を作ります。
それも使い果たしたら、筋肉などに含まれるたんぱく質からブドウ糖を作り、エネルギー源にするのです。
それでも足りない場合、ブドウ糖ではなく、脂肪酸を分解したケトン体をエネルギー源にするようになります。
ケトン体からエネルギーを産生する回路が働き出せば、ブドウ糖がなくても人は活動できるのです。
つまり、糖質を制限することで、糖質だけに頼らない体づくりができます。
糖質を制限すれば、血糖値の上昇や、インスリンの分泌もおさえられるため、低血糖状態を防げ、イライラなどの中毒症状も少なくなります。
砂糖などの糖質をへらす方法

1日1食だけ糖質をとらない
こうして腸に悪影響を与える糖質をへらすとともに、発酵食や野菜を中心にとることで、腸内フローラの状態は改善。
実際、糖質制限食を実践している潰瘍性大腸炎やクローン病の患者さんたちにも、多くの改善効果が現れています。
ケトン体をエネルギー源にするには、少なくても5時間は炭水化物などの糖質をとらないことです。
そうしないと、ケトン体回路が動き出しません。
ですから、毎日の食事では、1食だけ、糖質をとらないようにするといいでしょう。
そしてふだんから、白砂糖はできるだけ控えましょう。
甘いものが欲しくなったら、果物を食べるほうが安全です。
ただし、果物も熟せば熟すほどブドウ糖がふえます。
とりすぎにはくれぐれも注意してください。
かむことで脳が満足する場合もあるので、甘いものの代わりにスルメ、コンブ、ナッツ類などを食べるのもお勧めです。
もし、砂糖を含む食品をとった場合は、その後に、歌を歌ったり、運動したりするなど、自分に合った方法で、エネルギーを消費するといいでしょう。
解説者のプロフィール

西本真司(にしもと・しんじ)
西本クリニック院長。
1961年、和歌山県生まれ。近畿大学医学部卒業。熊本大学医学部附属病院麻酔科、熊本赤十字病院麻酔科、山鹿市立病院をへて、1996年、西本第2クリニックを開業。2006年、西本クリニックと西本第2クリニックを統合し、西本クリニック院長に就任。自らの潰瘍性大腸炎の闘病経験を活かしたホリスティックな医療を実践する。著書に『潰瘍性大腸炎 医師も患者もこうして治った』(マキノ出版)などがある。
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