MENU
医療情報を、分かりやすく。健康寿命を、もっと長く。医療メディアのパイオニア・マキノ出版が運営
【発見】アレルギーの原因は「傷ついた腸」だった!対策は腸内フローラを変えること

【発見】アレルギーの原因は「傷ついた腸」だった!対策は腸内フローラを変えること

長年アレルギーと腸内細菌の関係に注目し、研究を続けてきました。アトピー性皮膚炎でステロイド薬を使い続けると、だんだんと効かなくなり、さらに強い薬を使わざるを得なくなるのです。アレルギーを引き起こす根本原因の大元は、腸にあると、私は考えています。【解説】藤田紘一郎(東京医科歯科大学名誉教授) 

解説者のプロフィール

藤田紘一郎
東京大学医学系大学院修了。東京医科歯科大学教授を経て、現在、同大学名誉教授。2000年、ヒトATLウイルス伝染などの研究で日本文化振興会・社会文化功労賞、国際文化栄誉賞を受賞。著書に『隠れ病は「腸もれ」を疑え!』(ワニブックス)など多数。

腸内フローラを変えればアレルギーはよくなる

 アレルギーと腸内細菌の関係がテレビで話題になっているようですが、私も長年この関係に注目し、研究を続けてきました。

 アレルギーは、免疫反応の一種です。本来、免疫は外敵となる異物(病原体)を攻撃・排除する体のしくみです。しかし、アレルギーの場合、人体にとって無害な物質(食物、花粉など)を敵と見なし、攻撃・排除しようと、体内の粘膜で炎症を起こしてしまうのです。

 西洋医学は、体に現れる一つの症状を薬で抑えたり、手術で取り除いたりすることは得意です。一方で、アレルギーのように、全身にかかわる疾患を根本的に治すことは苦手です。

 アレルゲン(原因物質)を排除したり、ステロイド薬を処方したりすることで、当座の症状は抑えることができるかもしれません。しかしそれは、あくまでも対症療法に過ぎません。

 だから、アトピー性皮膚炎でステロイド薬を使い続けると、だんだんと効かなくなり、さらに強い薬を使わざるを得なくなるのです。
 では、アレルギーを引き起こす根本原因とはなんでしょう。

 その大元は腸にあると、私は考えています。腸は、人体最大の免疫器官です。その腸の働きが低下すれば、免疫システムが正しく機能しなくなります。

 腸の免疫機構に深くかかわるのが腸内細菌です。人の腸には、3万種以上、100兆個以上もの腸内細菌が存在します。それは、お花畑(フローラ)のように美しいので「腸内フローラ」と呼ばれています。この腸内フローラを変えれば、アレルギーはよくなるのです。

血液中から生きた腸内細菌が見つかった!

腸内にデブ菌が増えると腸もれを引き起こす

 腸内細菌の研究が進展し、さまざまな新しい事実が判明しています。腸内細菌には、乳酸菌などの善玉菌と、悪玉菌、どちらにも属さない日和見菌がいます。ここで重要なのが日和見菌の役割です。

 腸内細菌は、およそ1割が善玉菌、1割が悪玉菌で、残りの8割が日和見菌になります。日和見菌が善玉菌に味方すれば、健全な腸内フローラができますが、悪玉菌に味方すると、腸内フローラは悪化します。

 日和見菌を大別すると、「フィルミクテス門」と、「バクテロイデス門」に分けられます。「フィルミクテス門」の一部は宿主を太らせる性質がある腸内細菌です。私は「デブ菌」と呼んでいます。「バクテロイデス門」の一部は太りにくい体質をつくります。そこでこちらは「ヤセ菌」です。

 デブ菌とヤセ菌は、互いに拮抗しながら腸内に存在しています。デブ菌が増えればヤセ菌が減り、反対に、ヤセ菌が増えればデブ菌が減ります。

 デブ菌が増えると、宿主であるその人は太りやすくなり、かつ、腸内フローラは悪玉菌優位に傾きます。この腸内フローラの悪化が、免疫機能にも大きな影響を与えるのです。

 腸管の粘膜にはバリア機能があって、病原菌やウイルスの侵入を防御しています。腸内フローラは、この腸粘膜の防御機能の一つとして働いています。ところが、デブ菌が増えて悪玉菌が優勢になると、腸内フローラのバランスがくずれ、防御機能が低下し腸粘膜が傷つきやすくなります。

 加えて、ふだんの食事で、食品添加物や保存料を多く含んだ加工食品をとっていると、それが腸管に対する攻撃因子となります。含まれる乳化剤や㏗調整剤なども腸の粘膜を傷つけるのです。

 こうした攻撃が重なった結果、起こるのが「腸もれ(リーキーガット症候群」です。腸粘膜のバリア機能が弱まり、腸管に穴が開くのです。穴といっても、人の目に見えるような穴ではなく、細胞レベルの話です。

 通常、たんぱく質は分解されて、より小さなペプチドという単位になって腸から吸収されます。しかし、腸もれが起こると、ペプチドに分解される前のたんぱく質がそのまま、腸の穴から吸収されてしまいます。その物質は人体にとっては明らかに異物です。その異物を排除しようとして、アレルギー反応が生じます。これこそがアレルギーの真の原因なのです。

 しかも、腸もれが起こると、アレルギーが引き起こされるだけではありません。2014年、衝撃的な報告がありました。順天堂大学とヤクルト中央研究所の研究で、健康な人50人のなかの2人の血液から、生きた腸内細菌が見つかりました。

 この事実は、腸もれの証拠といってもいいものです。腸に穴が開いた結果、腸壁を守るべき腸内細菌が腸から吸収され、血管内に入り込んでいるのです。

 血管内に入り込んだ腸内細菌は、体の慢性炎症の原因物質となっています。こうして起こった慢性炎症が、糖尿病やガン、脳卒中など、さまざまな症状や疾患を引き起こすのです。

 そこで、アレルギーを予防・改善するためには、まず腸内環境を整え、腸もれを防ぐ必要があります。

※これらの記事は、マキノ出版が発行する『壮快』『安心』『ゆほびか』および関連書籍・ムックをもとに、ウェブ用に再構成したものです。記事内の年月日および年齢は、原則として掲載当時のものです。

※これらの記事は、健康関連情報の提供を目的とするものであり、診療・治療行為およびそれに準ずる行為を提供するものではありません。また、特定の健康法のみを推奨したり、効能を保証したりするものでもありません。適切な診断・治療を受けるために、必ずかかりつけの医療機関を受診してください。これらを十分認識したうえで、あくまで参考情報としてご利用ください。

この記事のエディター
関連記事
特に思い当たる原因もなく、体調が優れない……。食べて数時間後〜数週間後と、アレルギー症状が遅れて出てくる「遅発型食物アレルギー」をご存知でしょうか。じんましんなどが出る「即時型食物アレルギー」とは違いあまり知られていません。【解説】澤登雅一(三番町ごきげんクリニック院長) 
近年、腸の免疫機能に「腸内細菌」が深く関わっていることが明らかになり始めています。中でも注目を集めているのが、「クロストリジウム」という種類に属する腸内細菌です。クロストリジウム菌の作り出す酪酸こそ、免疫のカギを握る物質だったのです。【解説】大野博司(理化学研究所粘膜システム研究チームリーダー・医学博士)
ある日、テレビで、「天然の酵母を起こし、それでパンを作る」という映像を見ました。おもしろそうだったので、私も作りたくなり、自己流でやってみました。ところが、酵母を起こす段階でカビが生えてしまい、うまくいきませんでした。【体験談】竹内悦子(51歳・主婦)
オクラには、細胞保護成分や保湿成分として化粧品にも広く使用されているムチンをはじめ、美肌づくりやダイエットにも役立つ栄養素が多く含まれています。腸内環境が整えば便通の改善はもちろんのこと、美肌づくりや血糖値のコントロールに役立ちます。【体験談】居場京子(I.B.A. TOTAL BEAUTY CONSULTING代表)
私は食べ歩きが好きで、おいしい物やお店を、インターネットで探すことがよくあります。ウエダ家さんの酵母パンを見つけたのも、インターネットでした。「油も砂糖も使わない天然酵母パン」に興味がわき、すぐにウエダ家さんのパン作り講座に通い始めました。もう10年になります。【体験談】多羅裕子(62歳・主婦)
最新記事
熱中症は7月8月の日中に最も多く見られます。熱中症は、乳幼児から高齢者まであらゆる年代で起こる病気です。なかでも高齢者は重症化する場合が多いのです。また服薬や持病のある方も熱中症にかかりやすいリスクがあるといえるでしょう。【解説】大澤直人(高知大学医学附属病院老年病・循環器内科)
熱中症は私たちの日常生活の中での注意や工夫で予防することができます。たとえば、服装です。また、水分補給についても、実は「水分」だけを補給するのではいけません。そのほかに、エアコン等の空調の使い方のコツなどをご紹介します。【解説】大澤直人(高知大学医学附属病院老年病・循環器内科)
手洗いの時間の目安は、おおよそ30秒。次のような手順で洗っていくと、少なくともそれくらいの時間が必要であることが実感できるでしょう。
新型コロナウイルスには、まだ特効薬やワクチンはなく、感染しないための予防法を徹底することが重要です。自分一人ひとりができる感染症対策のポイントをチェックしてみましょう。
コンブを水に漬けて冷蔵庫で10日ほど発酵させ、乳酸菌と酵母を培養する「コンブ酵母」が話題になっています。コンブ特有のにおいが軽減し、旨みが濃くなるので、そのまま飲んでも、料理に使ってもよし!食生活に取り入れる人が急増中です。コンブ酵母の作り方と、コンブ酵母の活用レシピをご紹介します!【レシピ】COBOウエダ家

ランキング

総合ランキングarrow_right_alt
get_app
ダウンロードする
キャンセル