【高齢者の便秘】即効解消のポイントは排便時の「腸腰筋」 一番簡単な鍛え方はコレ

【高齢者の便秘】即効解消のポイントは排便時の「腸腰筋」 一番簡単な鍛え方はコレ

日本人の平均寿命は男女とも80歳を超えました。一方「健康寿命」は2013年時点で女性が74・21歳、男性が71・19歳―。10年近く、不健康な状態で過ごすことになるのです。元気な高齢者の便に含まれる腸内細菌を解析した結果、全身の健康をつかさどる菌を特定したのです。【解説】辨野義己(理化学研究所特別招聘研究員・農学博士)


元気な高齢者の便に多い健康にかかわる菌を特定

 日本人の平均寿命は、女性が87・14歳、男性が80・98歳と、男女とも80歳を超えました(2017年厚生労働省調べ)。
 一方、健康な日常生活が送れる期間を示す「健康寿命」は、2013年時点で女性が74・21歳、男性が71・19歳。つまり、10年近く、不健康な状態で過ごすことになるのです。

 私は長年、腸内細菌と健康の関係を研究し、「長寿村」と呼ばれる地域を訪ね歩いています。元気な高齢者の便に含まれる腸内細菌を解析した結果、全身の健康をつかさどる菌を、ついに特定しました。

 それは、酪酸(短鎖脂肪酸)を産生する大便菌(大便棹菌と大便球菌)と、ビフィズス菌でした。私はそれらの菌を「長寿菌」と名づけました。

 大便菌が腸内で産生する酪酸は、脂肪の蓄積を防ぎ、ガン細胞の抑制、免疫力の向上などにも関与します。また、ビフィズス菌は、乳酸と酢酸を産生して腸内を酸性に保つことで、病原菌を抑制します。

 一般の60代以上では、長寿菌は腸内細菌の30%ですが、長寿村の高齢者は50%以上もありました。この結果から私は、長寿菌を増やすことが、健康寿命延伸のカギだと確信したのです。

 島根県の知夫里島は、65歳以上の島民の要介護期間が平均0・51年という「ピンピンコロリの島」です。
 島の食生活は、野菜と海藻が中心。野菜には、ダイズと麦で作るみそをつけ、海藻は酢みそで和えたり、漬物にしたりしています。食物繊維と発酵食品を、日常的にとっているのです。

 また、鹿児島県の奄美大島で、100歳の女性の便を調べたところ、1g当たりのビフィズス菌が、60〜80歳平均の30倍以上もありました。食事は、豆入りがゆ、海藻のみそ汁、野菜のサラダと酢漬けと、食物繊維たっぷりのメニューでした。

 食事以外にも、健康長寿を実現するための重要な要素があります。皆さん、農作業などで体を動かしているのです。つまり、「運動」です。

口からとる乳酸菌は「優秀な短期アルバイト」

 腸内環境を良好に維持するには、便を❶作る❷育てる❸出す、の三つの条件が必要です。

 ①の「作る」は、食物繊維の豊富な野菜や海藻を食べて、バナナ状のよい便を作ること。②の「育てる」は、ヨーグルトなどのビフィズス菌・乳酸菌をとって、腸内の善玉菌を増やすことです。
そして、③の「出す」。いくら「いい便」を作って育てても、出せなければ意味がないのです。「出すことが生きること」といっても過言ではありません。

 便を出すためには、腸腰筋が重要な役割を果たします。腸腰筋とは、腰椎(背骨の腰の部分)と大腿骨(太ももの骨)を結ぶ筋肉群の総称で、股関節を動かしたり、骨盤を安定させたりしています。この筋肉群が弱ると、排便時に力が入らず、せっかく作って育てた便を出せません。

 高齢者がケガなどで入院すると一気に老化が進むのは、腸腰筋が衰えて排便が滞り、腸内環境が悪化するからです。

 腸内環境を良好に保ち、長寿菌を増やす「快腸生活」は、次のとおりです。

 まず、野菜や海藻を積極的に食べ、水溶性・不溶性の食物繊維を摂取すること。食物繊維は、長寿菌である大便菌とビフィズス菌のエサになります。

 これらの菌は、食物繊維を利用して、乳酸と酢酸、酪酸を産生し、体の免疫力を高め、悪玉菌の増殖も抑えます。

 水溶性食物繊維は、オクラや納豆、メカブ、ナメコ、ヤマイモなどの「ネバネバ食品」に含まれます。葉野菜や根菜、キノコ、豆に多く含まれる不溶性食物繊維と合わせ、1日当たり350gを目安にとりましょう。

 また、ビフィズス菌・乳酸菌を含む食品をとることで、腸内に棲む善玉菌が活性化します。

 私はよく、腸内常在菌を「正社員」、食品中のビフィズス菌や乳酸菌を「優秀な短期アルバイト」にたとえます。口からとったビフィズス菌や乳酸菌は腸内に定着しませんが、短時間で腸内の善玉菌を助け、元気づけ、去っていく(排出される)のです。ですから、毎日とり続けることが大切になります。

 一方、病原性大腸菌やウェルシュ菌に代表される悪玉菌は、腸内で有害物質を産生します。腸に直接ダメージを与えて大腸ガンを引き起こすほか、有害物質が血流に乗って全身に巡り、乳ガンや肝臓ガンなどの原因にもなります。腸内の悪玉菌が、脳機能に関与することも判明しています。

便秘になると、悪玉菌が優勢になります。腸内環境をよくする食品をとっても、排便できなければ悪玉菌が増えてしまうのです。

 前述したように、排便のためには、腸腰筋を強くしなやかに保つ必要があります。いちばん簡単なのは、歩くこと。1日9000歩を目標にしましょう。階段の上り下りも、腸腰筋の鍛錬になるのでお勧めです。

 私は、腸内細菌の構成パターンと、年齢・性別・居住地域・食生活・運動習慣・健康状態との関連を調査し、データベース化を進めています。解析の結果、生活習慣が腸内細菌の構成・機能に及ぼす影響や、腸内細菌が健康状態にどう作用しているか、わかってきました。

 その後さらに集めた約1万人分の便の解析が、2018年6月ごろに完了する予定です。近い将来、腸内細菌の状態から、食事内容や生活習慣をアドバイスするなど、健康管理の一助となるでしょう。

「快腸生活」を実践する辨野先生

※これらの記事は、マキノ出版が発行する『壮快』『安心』『ゆほびか』および関連書籍・ムックをもとに、ウェブ用に再構成したものです。記事内の年月日および年齢は、原則として掲載当時のものです。

※これらの記事は、健康関連情報の提供を目的とするものであり、診療・治療行為およびそれに準ずる行為を提供するものではありません。また、特定の健康法のみを推奨したり、効能を保証したりするものでもありません。適切な診断・治療を受けるために、必ずかかりつけの医療機関を受診してください。これらを十分認識したうえで、あくまで参考情報としてご利用ください。

この健康情報のエディター

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