腸内細菌だけでは 腸の健康は守れない
意外に思われるかもしれませんが、腸の調子がよくない人は、実年齢よりも老けて見えることが多いようです。これは、消化器内科医として、日々多くの患者さんを診察し、これまで4万件以上の大腸内視鏡検査を行ってきた、私の実感です。
私たちが食べた物は、消化器を通る過程で消化・吸収され、血流に乗って全身を巡ります。ですから、栄養素を体内に取り込む小腸と、不要な物を排泄する大腸が不調だと、血液が栄養失調になったり、血液に老廃物が混ざったりして、全身の細胞が老化してしまうのです。
特に、皮膚の細胞は血管の末端にあるため、血液の栄養状態が端的に現れます。「顔色が悪い」「皮膚にハリがない」といった見た目は、すなわち血液の状態、ひいては腸内環境を表しているのです。
最近、テレビや雑誌などで、「腸内フローラ(腸内細菌叢)=腸内環境」という説明を目にしますが、これは間違いです。腸内フローラは、腸内環境の一要素にすぎません。腸内細菌だけに着目していては、腸の健康は守れません。
腸内環境は、次の三つの要素で構成されています。
❶食事因子(何を食べるか)
❷腸管機能(腸管がしっかり動いているか)
❸腸内フローラ(腸内細菌の状態)
そう考えると、腸内環境を改善するには、腸に好影響を与える食品を摂取することと、腸の働きをよくする食べ方も、大きなポイントだといえるのです。
オリーブオイルを1日大さじ1杯とろう
そこでお勧めしたいのが、私が考案した「地中海式和食」です。「地中海型食生活」と「和食」、それぞれの欠点を補い、長所を合わせた食べ方です。
ここでいう和食とは、一汁三菜をそろえた食卓を指します。一汁三菜というと大変そうですが、ご飯とみそ汁、納豆や漬物などの発酵食品(植物性乳酸菌)、野菜の煮物やおひたし、これに焼き魚があれば完璧です。
ただ、和食には、砂糖を使って甘辛く味つけする料理があります。その際、砂糖をオリゴ糖に替えるといいでしょう。オリゴ糖は小腸で吸収されにくく、血糖値への影響が少ないうえ、大腸では善玉菌の代表であるビフィズス菌のエサとなり、腸内の善玉菌を増やし、腸内環境を改善します。
地中海型食生活は、野菜と魚、エキストラバージン・オリーブオイルをふんだんに使い、肉と乳製品は控えめです。また、デザート以外には砂糖を使わず、老化予防に効果的な食事といえます。
エキストラバージン・オリーブオイルには、32種類ものポリフェノールが含まれています。現在使われている食用油のなかでは、老化の元凶物質である活性酸素を除去する作用が、最も高いことがわかっています。
ポリフェノールには、動脈硬化、糖尿病、骨粗鬆症、アルツハイマー病、リウマチ、大腸ガンや乳ガン、潰瘍性大腸炎の予防効果が判明しています。
便秘の人にもお勧めです。エキストラバージン・オリーブオイルを大さじ1〜2杯とることで、便秘が改善されるケースが少なくありません。
全身に有効なので、健康な人でも1日大さじ1杯(15ml)程度とるといいでしょう。
地中海式和食で全身の老化を抑制
地中海式和食の特徴を挙げると、以下のようになります。
1野菜と魚介類を中心とした食生活。
2発酵食品を含む一汁三菜の典型的な和食に、オリーブオイルをプラスする。
3料理に使う砂糖をオリゴ糖に替える。
私自身も毎日、地中海式和食を心がけています。
例えば、私は納豆を食べる際、添付のたれとオリーブオイルを入れます。クリーミーな食感で、食べやすくなります。
マグロの刺し身にオリーブオイルをかけてカルパッチョにしてもいいですし、豆腐にオリーブオイルと塩コショウをかけるとチーズのような味わいです。
エキストラバージン・オリーブオイルは、加熱してはいけないと思っている人が多いようですが、黒煙が出るほど熱しなければ、炒め物などに使ってけっこうです。
地中海式和食では、主食となる穀物もしっかりとります。
お勧めは、麦飯です。特に、最近話題のもち麦は、水溶性食物繊維であるβグルカンの含有量が多いのが特長です。米ともち麦を2対1の割合で合わせて炊くと、おこわに近い食感になり、おいしく食べられます。腸の不調に悩む人は、3食のうち1〜2食の主食を、もち麦ご飯にすることをお勧めします。
人は皆、老化から逃れることはできません。しかし、その老化の速度を緩めることはできます。全身の老化を抑制するために、地中海式和食で、腸の機能を健康に保ちましょう。
納豆+オリーブオイルはお勧め!