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【頭位めまい症】は自分で治せる!専門医が考案「寝返り体操」のやり方

【頭位めまい症】は自分で治せる!専門医が考案「寝返り体操」のやり方

良性発作性頭位めまい症は、ぐるぐる回る回転性、もしくは、ぐらぐら・ふわふわする動揺性のめまいが特徴です。女性、特に高齢者に多いのも特徴ですが、若い人に無縁という訳ではありません。サッカー女子元日本代表の澤穂希さんがかかった病気として知られています。【解説】肥塚泉(聖マリアンナ医科大学教授)

解説者のプロフィール

肥塚 泉
1981年、聖マリアンナ医科大学卒業。
東大阪市立中央病院耳鼻咽喉科部長等を経て、2000年より現職。
めまい外来でこれまで5万人以上を診察、改善に導いた。
テレビなどでめまいの解説を行うほか、乗り物酔い、宇宙酔いの研究も行う。

良性発作性頭位めまい症とメニエール病との違い

 めまいの約半数は、良性発作性頭位めまい症によるものです。このめまいは、自分である程度は改善できます。
 良性発作性頭位めまい症では、周囲や自分がグルグル回っているように感じる回転性、もしくは、頭や体がグラグラしたりフラフラしたりする、動揺性のめまいが特徴です。

 めまいは、起床時や靴ひもを結んだり洗濯物を干したりするときなど、頭の位置を変えたときに生じます。美容院などで横になったときにめまいがした、という例も少なくありません。通常、めまいは30秒~1分ほどで治まります。
 ちなみに、メニエール病では耳鳴りや耳の聞こえの悪さなどを伴うのに対し、良性発作性頭位めまい症では、こうした症状はありません。

 良性発作性頭位めまい症は、女性に多くみられます。患者数は、女性が男性の4~5倍というデータもあります。
 また、高齢者に多いのも特徴です。だからといって、若い人に無縁の病気という訳ではありません。サッカー女子元日本代表の、澤穂希さんがかかった病気として記憶している人も多いでしょう。
 澤さんの例のように、サッカーやスケートなどの、頭部に衝撃を受けやすいスポーツで発症する例もあります。その一方で、運動不足の人にも多い病気です。こうした患者さんの傾向は、良性発作性頭位めまい症が起こる原因を考えれば納得できます。

はがれた耳石が三半規管に入って発症。運動不足の人にも多い

 耳の奥には、内耳という器官があります。この内耳の耳石器と呼ばれる部分には、耳石(じせき)という小さな石があります。
 耳石は頭部が傾くと耳石器の中で、その重みによって移動します。耳石の動きを感覚細胞が感知して、その情報を脳へ送っています。主成分は、骨と同じ炭酸カルシウムです。

 耳石は、老化や頭部への衝撃ではがれ落ちることがあります。このはがれ落ちた耳石が、耳石器とつながる管状の部分、三半規管に入り込んでしまうのが、良性発作性頭位めまい症の原因です。

 三半規管の内部はリンパ液で満たされています。頭が動けばこのリンパ液に流れが生じます。その流れを三半規管の付け根にあるクプラという膜状の構造物が感知し、脳へ情報を送ることで、脳は頭の動きを判断するのです。

 三半規管に耳石が入るとリンパの流れが乱れます。頭の動きが止まっても耳石は転がり続けるため、脳へは「まだ頭は動いている」という誤った情報が送られるからです。
 しかし、視覚や関節からは「頭は止まっている」という情報が送られます。この情報の差異に脳が混乱し、めまいが生じるのです。

 良性発作性頭位めまい症が中高年女性に多いのは、骨粗鬆症と同様、ホルモンのバランスの乱れによって耳石がもろく、はがれやすくなるためでしょう。頭部への衝撃も、耳石がはがれる原因となります。

 耳石は小さな粒の集まりです。三半規管に入っても、体(頭)を動かしていれば自然と砕け散り、リンパ液の流れを大きく乱すことはありません。ちなみに、砕けた耳石は耳石器の奥のほうで吸収されます。
 しかし、運動不足では耳石が砕ける機会がありません。また、長時間頭を動かさないでいると砕けた耳石が一ヵ所に集まり、再び大きな塊になってしまいます。
 運動不足の人に良性発作性頭位めまい症が多いのは、このためです。

頭を動かすことで、物理的に耳石を取り除くことができる

 良性発作性頭位めまい症の治療法で有効なのは、「エプレイ法」です。
 エプレイ法は、1980年代に、アメリカの開業医・エプレイ医師によって考案されました。私も92年にエプレイ医師の講演を聞いています。

 エプレイ法は、めまいのときに生じる眼振(意思とは無関係に起こる眼球の揺れ)を確認しながら、医師が患者の頭を動かすことで、三半規管に入った耳石を物理的に取り除きます。

 薬物療法もありますが、これらはふらつきなどの副作用が少なくありません。その点、エプレイ法であればその心配はなく、1回の治療で7割程度の患者さんでめまいが消失することが知られています。
 ただ、エプレイ法は医師の手で頭を動かすため、患者さんの首や腰に負担がかかる場合もあります。また、一人で行うことはできません。

 そこでお勧めしたいのが、私どもが考案した「寝返り運動」です。
 寝返り運動は、患者さん自身が自分で頭を動かすことで、エプレイ法と同様、三半規管に入った耳石の排除・破砕が期待できます。
 首や腰に不調のある人や、運動の苦手な高齢者でも行いやすい体操です。良性発作性頭位めまい症でお悩みの人は、ぜひお試しください。

 良性発作性頭位めまい症は、再発することもありますが、寝返り運動を続けていれば再発しづらいことがわかってきました。
 ただし、めまいは脳梗塞(脳の血管が詰まって起こる病気)など、他の病気が原因で生じる場合もあります。めまいが生じたら、念のため専門医の診察を受けてください。

寝返り運動のやり方

寝返りをしない人に、めまいを起こす人が多い

 ちなみに、寝返り運動考案のきっかけは、長崎大学の発表した論文でした。
 そこに、腰などに問題があって睡眠中に寝返りが打てない人に、良性発作性頭位めまい症が多いということが紹介されていたのです。おそらく、睡眠中の寝返りは、三半規管に入った耳石の排除・粉砕に役立っているのでしょう。

 そこで、寝返りの姿勢とエプレイ法を参考に、寝返り運動を考案しました。2000年ごろから、良性発作性頭位めまい症の患者さんに自宅でできる治療法として勧めていますが、「自分で治せる」と好評です。

 寝返り運動は、三つの動作しかないので覚えやすく、簡単で時間もかかりません。基本は1日2回、起床時と就寝前に布団の上で行うとよいでしょう。

 特に起床時の体操は、日中のめまいの予防に有効です。めまいが消えた後も回数を減らして習慣にすれば、再発の予防になります。
 首だけを左右に動かすやり方が基本ですが、腰が痛い人でもこれならできるでしょう。もし、腰に痛みがなく、首に痛みがあれば体ごと左右に動かします。それでも痛みが生じてつらいという人は、左右への傾きの角度を浅くして無理のない範囲で続けてください。

 人によっては、寝返り運動でめまいが生じる場合もあります。ただ、良性発作性頭位めまい症の場合、めまいが続くと脳が慣れて、つらく感じにくくなる例が少なくありません。できる範囲でいいので続けることをお勧めします。

この記事のエディター

※これらの記事は、マキノ出版が発行する『壮快』『安心』『ゆほびか』および関連書籍・ムックをもとに、ウェブ用に再構成したものです。記事内の年月日および年齢は、原則として掲載当時のものです。

※これらの記事は、健康関連情報の提供を目的とするものであり、診療・治療行為およびそれに準ずる行為を提供するものではありません。また、特定の健康法のみを推奨したり、効能を保証したりするものでもありません。適切な診断・治療を受けるために、必ずかかりつけの医療機関を受診してください。これらを十分認識したうえで、あくまで参考情報としてご利用ください。

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