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"血糖値スパイク"を防ぐ方法(食べ物) 低血糖症の症状を改善

糖尿病の薬物治療で最も心配な副作用は、実は低血糖です。低血糖をくり返すと、認知症、心不全といった病気の発症率が高くなります。特に高齢者の場合は、無自覚性の低血糖をくり返すうちに、認知症になる例がよくあります。同じく気をつけたいのが「血糖値スパイク」と呼ばれる状態です。【解説者】長尾和宏(長尾クリニック院長)

高齢者の血糖値目標が昨年緩和された!

インスリンは、膵臓内のβ細胞で作られる、ホルモンの一種です。
インスリンには、食事で上がる血糖値を一定に保つ役割があります。

膵臓からインスリンが全く出なくなるⅠ型糖尿病や、生活習慣の乱れからインスリンの分泌が低下するⅡ型糖尿病を発症すると、インスリン注射薬や飲み薬が処方されます。

患者さんの病態や重症度によっては、注射と飲み薬を併用する場合もあれば、糖尿病と診断されてから、何年も複数の糖尿病薬を服用し続けている場合も多くあるでしょう。

しかし、その薬物治療で最も心配な副作用が、実は低血糖であることをご存じですか。
インスリンが連続投与されて体内で過剰になると、血糖値が下がり過ぎてしまいます。

低血糖による健康被害は、高血糖以上に深刻です。
低血糖が起こると、体のふらつきや脱水症状が現れたり、意識レベルが低下したりします。

加えて、低血糖をくり返すと、認知症、心不全といった病気の発症率が高くなります。
特に高齢者の場合は、低血糖でも症状が出ない無症状性低血糖をくり返すうちに、認知症になる例がよくあります。

また、極度の低血糖状態が続いて心不全が起こると、突然死する危険性さえあるのです。
そもそも血糖値は、加齢によるインスリン分泌率の低下により、高齢になると高くなりがちです。

一方で、これまでは年齢に関係なく、ヘモグロビンA1c(過去1~2ヵ月の血糖値がわかる指標)が、6・5%を超えると糖尿病と診断され、薬で血糖値を下げるのが基準でした。
その結果、多くの高齢者が糖尿病患者になり、薬を飲むことになってしまいました。

幸い、2016年の5月に、その間違いに気づいた日本糖尿病学会と日本老年医学会から、「高齢者や認知症の人は、低血糖を起こさない程度の血糖値管理でいい」という見解が出されました。
具体的には、健康で日常生活を自力でこなせる65歳から74歳ならば、ヘモグロビンA1cは7・5%未満。

75歳以上は8%未満。
認知症のかたや、自力で生活することが難しいかたは、8・5%未満であれば、必ずしも薬を飲む必要はない、となったのです。

この目標値は、非常に理にかなった数値です。
ところが、患者さんの多くが、この新基準をまだ認識していません。

65歳以上のかたでインスリン薬やほかの薬を飲んでいるかたは、主治医とよく相談してください。

食べる順番と食後のウォーキングを意識せよ

さて、若いかたも含め、低血糖と同じように気をつけていただきたいのが、「血糖値スパイク」と呼ばれる状態です。
これは、空腹時の血糖が基準値(110mg/dl未満)であっても、食後1時間で血糖値が、140mg/dl以上に急上昇する動きを指します。

この血糖値の急変動がくり返されると、血管内の有害な活性酸素が増え、動脈硬化を招きます。
つまり、まだ糖尿病とは診断されていなくても、重大な血管障害が起こる可能性があるのです。

食後1時間後の血糖値は、大手薬局などで売られている血糖簡易測定器を使えば、簡単に調べることができます。
糖尿病ではないかたも、ぜひ習慣的に測っていただきたいものです。

それでは、インスリン薬を使用せずに、血糖値の急上昇を抑える方法をご紹介しましょう。
それは、「食べる順番」と「食後のウォーキング」を、習慣づけることです。

まず食べる順番ですが、食事の際、ご飯から箸をつけると、血糖値が急上昇します。

血糖値を抑えるためには、
(1)野菜やサラダ
(2)魚やおかず
(3)ご飯
の順に食べ切ってください。

この「食べる順番」を守りながら、よく噛んで食べることが効果的です。
よく噛み、時間をかけて食事をする人ほど、食後の血糖値の上昇が抑えられます。

また、朝食抜きや1日1食の食事習慣は、ドカ食いを増長し、血糖値が急上昇するため、お勧めできません。
1日3食、おかず多めでご飯は少なめ、の食事を心がけましょう。

次に、ウォーキングです。
血糖値が高い人は食後に、なるべく時間をおかずに歩いてください。

食後すぐに体を動かすと、小腸からのブドウ糖の吸収が穏やかになり、食後の血糖値が安定します。
いい姿勢を保ちながら腕を振るなど、上半身も使うことを意識し、少し歩幅を広げましょう。

毎日5~10分でもいいので、とにかく習慣づけてください。
もし糖尿病のかたで、薬の量を減らしたい、または薬をやめたいと考えているかたは、まずはこうした生活習慣の改善から取り組みましょう。

糖尿病の改善・予防のためには、この心がけが不可欠です。

解説者のプロフィール

長尾和宏
1958年生まれ。長尾クリニック院長。東京医科大学客員教授。医療法人社団裕和会理事長。医学博士。95年に長尾クリニックを開業。2006年より在宅療養支援診療所として、外来診療と24時間体制での在宅診療を続ける。また、講演活動なども精力的に行っている。近著に『薬のやめどき』『痛くない死に方』(どちらもブックマン社)などがある。
●長尾クリニック
http://www.nagaoclinic.or.jp/

この記事のエディター

※これらの記事は、マキノ出版が発行する『壮快』『安心』『ゆほびか』および関連書籍・ムックをもとに、ウェブ用に再構成したものです。記事内の年月日および年齢は、原則として掲載当時のものです。

※これらの記事は、健康関連情報の提供を目的とするものであり、診療・治療行為およびそれに準ずる行為を提供するものではありません。また、特定の健康法のみを推奨したり、効能を保証したりするものでもありません。適切な診断・治療を受けるために、必ずかかりつけの医療機関を受診してください。これらを十分認識したうえで、あくまで参考情報としてご利用ください。

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