【メニエール病とは】初期症状は "めまい" 原因は自律神経の乱れ 呼吸法が効果的

【メニエール病とは】初期症状は "めまい" 原因は自律神経の乱れ 呼吸法が効果的

メニエール病をはじめとする、めまいの患者さんと長年接するうちに、私は興味深い点に気付きました。患者さんの多くが、肩と胸を上下させる浅い胸式呼吸をしていたのです。【解説】石井正則(JCHO東京新宿メディカルセンター耳鼻咽喉科診療部長)


めまいの60%以上は良性発作性頭位めまい症、メニエール病、前庭神経炎

 めまいの原因は耳や脳の病気などさまざまです。このうち脳の病気を除くと、めまいの原因となる病気の60%以上は良性発作性頭位めまい症、メニエール病、前庭神経炎で占められるといわれています。

 この三つの病気は、いずれも強いストレスや疲労、睡眠不足などからくる自律神経のバランスの乱れがかかわっていると、私は考えています。
 特に深い関与が考えられるのがメニエール病です。

 メニエール病とは、ある日突然グルグル回る回転性の激しいめまいが起こり、吐き気や冷や汗、嘔吐などの症状を伴います。女性にやや多く、発症年齢のピークは30代後半~50代後半といわれています。

 めまいや耳鳴りが起こるとメニエール病を疑う人が多いようですが、この病気を自己判断して受診するめまいの患者さんのうち、約9割はメニエール病ではありません。残りの約1割の人だけがメニエール病と診断されています。ですから、実際にはそれほど多い病気ではありません。ただ、症状が非常につらく、悩みが深い病気といえるでしょう。

メニエール病の患者は呼吸が浅い

 長年、メニエール病をはじめとするめまいの患者さんと接するうちに、私は興味深い点に気付きました。患者さんの多くが、肩と胸を上下させる浅い胸式呼吸をしていたのです。

 野生のゴリラは、敵と遭遇すると胸を広げてドンドンとたたき、威嚇します。このときのゴリラは強いストレスと緊張を感じており、体が上下に揺れる浅い胸式呼吸になっています。
 人間とゴリラを一緒にするのは乱暴かもしれませんが、浅い胸式呼吸の患者さんも強いストレスを感じているようです。

 実際に患者さんを問診すると、几帳面で真面目な人、責任感の強い人が多いのに気付きます。そうした気質や環境が強いストレスを生み、自律神経のバランスを乱しているのでしょう。事実、メニエール病の人は自律神経失調症も併発している場合が少なくありません。

 そこで私は、治療と並行して患者さんにストレスや緊張を和らげる腹式呼吸を指導してみました。すると、多くの患者さんに改善傾向が見られたのです。

 Aさん(20代女性)は、職場で大きな仕事を任されました。しかし、仕事がうまくいかず、眠れない日が続きました。そして、グルグルと回るめまいと耳鳴りを伴うメニエール病を発症したのです。

 初診時のAさんも、肩と胸が上下に動く浅い胸式呼吸でした。そこで、薬物療法と並行して、呼吸法の指導をしました。Aさんは3ヵ月ほどで腹式呼吸を身に付け、それと同時に、めまいも落ち着きました。また、仕事の緊張も腹式呼吸で解消できると喜んでいました。

めまいの発作前は交感神経が緊張している

 私はこれまでに数回、メニエール病のめまい発作を起こす少し前の患者さんの、自律神経と脳波を測定できました。

 発作直前に測定できたのは偶然ですが、患者さんはみな、交感神経が異常に活性化していました。目を閉じた安静状態にもかかわらず、脳波は興奮状態を示すβ波が多く、リラックス時に出るα波やθ波が少なかったのです。

 この測定結果からも、メニエール病によるめまいは、自律神経のバランスが深くかかわっていると推察できます。

 肩や胸を上下させる浅い胸式呼吸を、ゆっくりと吐く腹式呼吸に変えるだけで、自律神経のバランスはある程度整います。
 腹式呼吸が身につけば、ストレスなどで過剰になりがちな交感神経の働きが抑えられ、自律神経のバランスが整います。

 ただ、呼吸を変えるのは容易ではありません。まずは最低でも1日1回、12週間(3ヵ月)以上続けてください。寝る前や入浴後など決まった時間に行えば習慣にしやすいはずです。

 ストレスや自律神経が特に深くかかわっているのはメニエール病ですが、そのほかのめまいも、ストレスが関係しています。良性発作性頭位めまい症は、ストレスで体が硬直してしまい、睡眠時の寝返りが減少していることも要因だといわれています。
 また、前庭神経炎はウイルスによる感染症ですが、ストレスで免疫力が低下すれば、感染症にもかかりやすくなります。

 いずれにしても、めまいで悩み、強いストレスの自覚があるかたは、一度この呼吸法を取り入れてみてください。
 ただし、腹式呼吸を身に付けても、ストレスの原因が解消しないかぎり、自律神経のバランスは完全には整いません。ストレスマネジメントも並行して行うようにしましょう。

石井正則
1984年、東京慈恵会医科大学大学院修了。2000年より同大学准教授。現在はJCHO東京新宿メディカルセンター耳鼻咽喉科診療部長として耳鼻咽喉科関連の診察に当たるとともに、スタジオ・ヨギー公認ヨガインストラクターとしても活動中。新刊に『耳鳴りがスッキリする呼吸がわかった』(マキノ出版)がある。

※これらの記事は、マキノ出版が発行する『壮快』『安心』『ゆほびか』および関連書籍・ムックをもとに、ウェブ用に再構成したものです。記事内の年月日および年齢は、原則として掲載当時のものです。

※これらの記事は、健康関連情報の提供を目的とするものであり、診療・治療行為およびそれに準ずる行為を提供するものではありません。また、特定の健康法のみを推奨したり、効能を保証したりするものでもありません。適切な診断・治療を受けるために、必ずかかりつけの医療機関を受診してください。これらを十分認識したうえで、あくまで参考情報としてご利用ください。

この健康情報のエディター

関連するキーワード


めまい症 メニエール病

関連する投稿


梅干し 生姜 緑茶の効果【良性発作性頭位めまい症】メニエール病の症状改善に

梅干し 生姜 緑茶の効果【良性発作性頭位めまい症】メニエール病の症状改善に

患者さんと雑談する中で梅ショウガ茶を飲んで良性発作性頭位めまい症が治ったと効いたのです。これは頭の位置が変化することで、回転性のめまいが短い時間生じる症状です。なぜめまいに効くのかを私なりに考察したところ、その成分はメニエール病などにも有効だろうと結論に達しました。【解説】水嶋丈雄(水嶋クリニック院長)


【めまいの専門医】メニエール病と似た症状「良性発作性頭位めまい症」とは ― 9割が治る簡単な治し方

【めまいの専門医】メニエール病と似た症状「良性発作性頭位めまい症」とは ― 9割が治る簡単な治し方

メニエール病は、治りにくい原因不明の病気です。難聴、耳鳴り、耳閉感などの症状があり、さらに、めまいの発作が反復して起こっていると、たいていの耳鼻科では、メニエール病と診断します。しかし、それは誤診です。メニエール病に似た症状を持つめまいの病気があるのです。【解説】高橋正紘(めまいメニエール病センター院長)


【頭や体がふわふわ】「めまい」がふくらはぎマッサージで改善 耳閉感も取れた

【頭や体がふわふわ】「めまい」がふくらはぎマッサージで改善 耳閉感も取れた

体や頭がフワフワと浮いているような、浮動性のめまいを発症するようになったのは、半年ほど前からです。最初のころは、寝た状態から起き上がったときに、そうした感覚に襲われていました。そのうち、急に体を動かしたときにもめまいが起こり、その浮遊感がしばらく続くようになったのです。【体験談】埼玉県◎40歳◎会社員 大石悦子(仮名)


【簡単】メニエール病のめまいに効果 耳鳴りや難聴も改善 「20秒の耳たぶさすり」

【簡単】メニエール病のめまいに効果 耳鳴りや難聴も改善 「20秒の耳たぶさすり」

昨今、耳鳴りや難聴の症状にお悩みのかたが多くなっています。私の治療院にも、連日、耳の不調を抱えた多くの患者さんが来院されますが、その大半が病院で診てもらったものの改善しなかったかたがたです。【解説】武智大輔(たけちはり灸院院長)


【寝返り体操】しつこいめまいが大改善!再発の不安が消えた

【寝返り体操】しつこいめまいが大改善!再発の不安が消えた

朝、布団から起き上がろうとした瞬間、急に頭がフラフラとしました。メニエール病になったときも、めまいに悩まされましたが、そのときとは違いました。以前は、目の前がグルグルと回るような回転性のめまいでしたが、今回は、地震のように地面がグラグラと揺れるような感じだったのです。【体験談】福島県◎73歳◎主婦 富永和美(仮名)


最新の投稿


ハチミツのダイエット効果は「夜」寝る一時間前に飲んで17kgやせた!

ハチミツのダイエット効果は「夜」寝る一時間前に飲んで17kgやせた!

「どうにかしなければ!」10年前、私は人生で最大の「85.6kg」という体重になってしまい、焦りました(身長は173cm)。始めて半年くらいは、ほとんど体重が変わりませんでした。ところがその後は、毎晩、寝ている間に、必ず0.5~0.7kg減るようになったのです。【体験談】芳賀靖史(翻訳家・58歳)


厚い爪・白い爪は水虫の可能性!爪白癬の治療法と予防について皮膚科医が解説

厚い爪・白い爪は水虫の可能性!爪白癬の治療法と予防について皮膚科医が解説

爪白癬は、中高年を中心に日本人の10人に1人はかかるポピュラーな病気です。単独で生じることもありますが、多くは足の水虫と合併します。白癬菌は、高温多湿な環境で繁殖します。気温と湿度が上がる今の時期は、通気性のいい靴下をはくなどして、足の風通しをよくしましょう。【解説】野田真史(池袋駅前のだ皮膚科 )


生ガキにあたった時に「梅肉エキス」をなめたら痛みが治まった!

生ガキにあたった時に「梅肉エキス」をなめたら痛みが治まった!

友人とフランス料理店に行き、生ガキを食べました。すると、なぜか私だけがカキにあたってしまったのです。胃がねじれるように痛く、脂汗が浮き出てきます。痛みで体がよじれたりのけぞったり。じっとしていることができないほどでした。わらにもすがる思いで、私は梅肉エキスを手に取りました。【体験談】江崎紀子(仮名・主婦・72歳)


ぐるぐるめまいと吐き気が取れる「クチナシの実」の黒焼きの作り方

ぐるぐるめまいと吐き気が取れる「クチナシの実」の黒焼きの作り方

クチナシの実は、キントンや炊き込みごはんなどに色を着ける天然の着色料として利用されるほか、生薬(漢方薬の原材料)としても昔から使われており、髙血圧や肝機能の改善、鎮痛・鎮静作用などの働きがあることが確認されています。【解説】平田眞知子(薬草コンサルタント)


【大根の健康効果】有効成分の酵素・ファイトケミカルはスムージーで取ると良い!

【大根の健康効果】有効成分の酵素・ファイトケミカルはスムージーで取ると良い!

私は、若々しく健康な体を維持するために、食事で酵素をたっぷり取ることを提唱しています。そのために役立つ食材はいろいろありますが、癖のない風味が、多くの人に好まれている大根も、実は、酵素の補給源として、とても優秀な野菜です。【解説】鶴見隆史(医療法人社団森愛会鶴見クリニック理事長)