MENU
医療情報を、分かりやすく。健康寿命を、もっと長く。医療メディアのパイオニア・マキノ出版が運営
【かかと落とし】の健康効果とやり方 骨ホルモンを増やし骨密度を高める

【かかと落とし】の健康効果とやり方 骨ホルモンを増やし骨密度を高める

かかと落とし(踵落とし)とは、私たちの骨からオステオカルシンという長寿ホルモンを効率よく分泌させることができる、新しい運動療法です。骨も、筋肉と同じように鍛えられます。骨に一定の刺激や負荷を加えると、血液中に骨ホルモンが増え、様々な健康効果が得られるのです。【解説】平田雅人(福岡歯科大学口腔歯学部客員教授・歯学博士)

骨も鍛えることができる

 すばらしい健康効果が期待できる、オステオカルシン、通称「骨ホルモン」。骨が再構築される際に分泌されるたんぱく質にこれが含まれているということは、前の記事で説明しました。


 つまり、血液中に骨ホルモンを増やすには、骨の再構築を促せばよいということになります。では、骨はどんなときに作り替えられるのでしょうか。

 骨に負荷がかかると、その力に耐えられるよう、骨を作る細胞が活発に動き始めます。骨の質を強くして、骨量を増加させるよう、働きかけるのです。

 この指令を受けて、古くなった骨の表面は一度壊され、新しい基盤が作られます。その上にミネラルが沈着し、より太く、丈夫な骨になるわけです。

 実際、骨の成長が著しい10代のときに、バレーボールやバスケットボール、陸上競技など、ジャンプ系の動きが多いスポーツを続けていた人は、大人になっても、骨が丈夫であることがわかっています。
 ジャンプによって強い衝撃を受けたことで、その負荷に耐えられるよう骨が再構築を進めた結果、強い骨に作り替えられたのです。

体重を利用して骨を直接刺激しよう!

 一方で、負荷が全くかからないと、骨はどうなるのでしょうか。無重力空間である宇宙ステーションで暮らす宇宙飛行士は、1ヵ月で骨量が約1・5%減るそうです。6ヵ月間滞在した場合、骨量は10%も減ってしまいます。こうなると、骨はもろく、折れやすくなります。

 筋肉は、体を動かして負荷を高めるほど、鍛えられます。骨も同様です。「鍛える」というと、なじみがないかもしれませんが、衝撃を加え、負荷をかけることで、強く丈夫な骨を育むことができるのです。骨を鍛えることで、骨の再構築が促進されると、骨が強固になるだけでなく、血液中に骨ホルモンを増やすことにつながります。

かかと落としのやり方

 そこでお勧めなのが、「かかと落とし」です。

かかとをトントンと床に落とすことで、体重を利用して骨に重力をかけ、直接刺激を与えることができる、骨を鍛えるのに適した運動です。

わずか2週間の実験で半数に明らかな効果!

 かかと落としは実際に、骨ホルモンを増やすのでしょうか。検証のため実験を行いました。

 協力してもらったのは、30代、40代、50代、60代の男女、計8人。1日に30回のかかと落としを、2週間、毎日継続してもらいました。その前後で、骨ホルモンの分泌量を計測し、比較したのです。

 結果はグラフのとおり。
30代、40代の女性と、50代の男女の計4人に、1・4~1・5倍の、骨ホルモン量の増加が見られました。8人中4人と、半数に明らかな効果が出て、3人は微増かほぼ維持、減ったのは1人のみでした。

 加齢により、骨が徐々に衰えていくことを考慮すれば、かかと落としを続けることで、骨ホルモンの現状維持、あるいは微増が続くと期待できます。長期にわたって継続すれば、増加率もより高まるでしょう。

 ちなみに、より強い衝撃がかかる「ミニジャンプ運動」でも実験してみました。40代、50代の男性2人と、30代、40代、50代の女性3人の、計5人に、1日に30回、高さ20㎝の台からストンと降りる運動を、1週間継続してもらったのです。その結果、5人中4人に、骨ホルモンの増加が見られました。

 ミニジャンプのほうが、かかと落としより効果的とも考えられますが、衝撃が強い分、強い負荷がかかります。まずはかかと落としから始め、慣れたら移行してもいいかもしれません。

 かかと落としをする回数は、ご自分の体力に合わせて調整してけっこうです。継続することが肝心なので、無理のない目標を設定するようお勧めします。

 医療機関で骨ホルモンの量を測定することは、残念ながらまだ一般的ではありません。けれども、かかと落としを続けるうちになんらかの効果を実感できたなら、それが骨ホルモンが増えている証といえるでしょう。

解説者のプロフィール

平田雅人
福岡歯科大学口腔歯学部客員教授・歯学博士。
1976年九州大学歯学部歯学科卒業。
その後教授を経て、九州大学大学院歯学研究院長。
2014年10月、骨で作られるたんぱく質である「オステオカルシン」を経口投与することで血糖値が下がり、全身代謝が活性化することを発見した。
17年4月より現職。
著書に、『1日1分「かかと落とし」健康法』(カンゼン)がある。

●福岡歯科大学
http://www.fdcnet.ac.jp/col/

※これらの記事は、マキノ出版が発行する『壮快』『安心』『ゆほびか』および関連書籍・ムックをもとに、ウェブ用に再構成したものです。記事内の年月日および年齢は、原則として掲載当時のものです。

※これらの記事は、健康関連情報の提供を目的とするものであり、診療・治療行為およびそれに準ずる行為を提供するものではありません。また、特定の健康法のみを推奨したり、効能を保証したりするものでもありません。適切な診断・治療を受けるために、必ずかかりつけの医療機関を受診してください。これらを十分認識したうえで、あくまで参考情報としてご利用ください。

この記事のエディター
関連記事
熱中症は7月8月の日中に最も多く見られます。熱中症は、乳幼児から高齢者まであらゆる年代で起こる病気です。なかでも高齢者は重症化する場合が多いのです。また服薬や持病のある方も熱中症にかかりやすいリスクがあるといえるでしょう。【解説】大澤直人(高知大学医学附属病院老年病・循環器内科)
熱中症は私たちの日常生活の中での注意や工夫で予防することができます。たとえば、服装です。また、水分補給についても、実は「水分」だけを補給するのではいけません。そのほかに、エアコン等の空調の使い方のコツなどをご紹介します。【解説】大澤直人(高知大学医学附属病院老年病・循環器内科)
これまで、疲労が起きるのは、「エネルギーがなくなるから」「疲労物質が筋肉にたまるから」と考えられてきました。しかし、最新の研究によって、疲労が起きるほんとうの理由は、「自律神経の中枢である、脳がサビつくから」ということが、わかっています。【解説】梶本修身(東京疲労・睡眠クリニック院長)
症状の原因ははっきりとはわかりませんが人工透析を行う人には老若男女問わずよく現れるものです。これに薬で対応しようとすると体にもっと大きな負担がかかってしまいますし、副作用も心配です。少しでも患者さんの体に負担をかけずに症状をやわらげるのに「手のひら押し」が有効だと思っています。【解説】佐藤孝彦(浦安駅前クリニック院長)
東洋医学には五行思想というものがあり、人の体に起きるあらゆることは五臓につながっていると考えられています。涙がすぐに出るのは、「憂い、悲しむ」感情からです。 これは、五臓の中の「肺」の弱りから発する感情です。肺が弱い体質、もしくは肺が弱っているのかもしれません。【解説】田中勝(田中鍼灸指圧治療院院長)
最新記事
熱中症は7月8月の日中に最も多く見られます。熱中症は、乳幼児から高齢者まであらゆる年代で起こる病気です。なかでも高齢者は重症化する場合が多いのです。また服薬や持病のある方も熱中症にかかりやすいリスクがあるといえるでしょう。【解説】大澤直人(高知大学医学附属病院老年病・循環器内科)
熱中症は私たちの日常生活の中での注意や工夫で予防することができます。たとえば、服装です。また、水分補給についても、実は「水分」だけを補給するのではいけません。そのほかに、エアコン等の空調の使い方のコツなどをご紹介します。【解説】大澤直人(高知大学医学附属病院老年病・循環器内科)
手洗いの時間の目安は、おおよそ30秒。次のような手順で洗っていくと、少なくともそれくらいの時間が必要であることが実感できるでしょう。
新型コロナウイルスには、まだ特効薬やワクチンはなく、感染しないための予防法を徹底することが重要です。自分一人ひとりができる感染症対策のポイントをチェックしてみましょう。
コンブを水に漬けて冷蔵庫で10日ほど発酵させ、乳酸菌と酵母を培養する「コンブ酵母」が話題になっています。コンブ特有のにおいが軽減し、旨みが濃くなるので、そのまま飲んでも、料理に使ってもよし!食生活に取り入れる人が急増中です。コンブ酵母の作り方と、コンブ酵母の活用レシピをご紹介します!【レシピ】COBOウエダ家

ランキング

総合ランキングarrow_right_alt
get_app
ダウンロードする
キャンセル