骨も鍛えることができる
すばらしい健康効果が期待できる、オステオカルシン、通称「骨ホルモン」。骨が再構築される際に分泌されるたんぱく質にこれが含まれているということは、前の記事で説明しました。
つまり、血液中に骨ホルモンを増やすには、骨の再構築を促せばよいということになります。では、骨はどんなときに作り替えられるのでしょうか。
骨に負荷がかかると、その力に耐えられるよう、骨を作る細胞が活発に動き始めます。骨の質を強くして、骨量を増加させるよう、働きかけるのです。
この指令を受けて、古くなった骨の表面は一度壊され、新しい基盤が作られます。その上にミネラルが沈着し、より太く、丈夫な骨になるわけです。
実際、骨の成長が著しい10代のときに、バレーボールやバスケットボール、陸上競技など、ジャンプ系の動きが多いスポーツを続けていた人は、大人になっても、骨が丈夫であることがわかっています。
ジャンプによって強い衝撃を受けたことで、その負荷に耐えられるよう骨が再構築を進めた結果、強い骨に作り替えられたのです。
体重を利用して骨を直接刺激しよう!
一方で、負荷が全くかからないと、骨はどうなるのでしょうか。無重力空間である宇宙ステーションで暮らす宇宙飛行士は、1ヵ月で骨量が約1・5%減るそうです。6ヵ月間滞在した場合、骨量は10%も減ってしまいます。こうなると、骨はもろく、折れやすくなります。
筋肉は、体を動かして負荷を高めるほど、鍛えられます。骨も同様です。「鍛える」というと、なじみがないかもしれませんが、衝撃を加え、負荷をかけることで、強く丈夫な骨を育むことができるのです。骨を鍛えることで、骨の再構築が促進されると、骨が強固になるだけでなく、血液中に骨ホルモンを増やすことにつながります。
かかと落としのやり方
そこでお勧めなのが、「かかと落とし」です。
かかとをトントンと床に落とすことで、体重を利用して骨に重力をかけ、直接刺激を与えることができる、骨を鍛えるのに適した運動です。

わずか2週間の実験で半数に明らかな効果!

かかと落としは実際に、骨ホルモンを増やすのでしょうか。検証のため実験を行いました。
協力してもらったのは、30代、40代、50代、60代の男女、計8人。1日に30回のかかと落としを、2週間、毎日継続してもらいました。その前後で、骨ホルモンの分泌量を計測し、比較したのです。
結果はグラフのとおり。
30代、40代の女性と、50代の男女の計4人に、1・4~1・5倍の、骨ホルモン量の増加が見られました。8人中4人と、半数に明らかな効果が出て、3人は微増かほぼ維持、減ったのは1人のみでした。
加齢により、骨が徐々に衰えていくことを考慮すれば、かかと落としを続けることで、骨ホルモンの現状維持、あるいは微増が続くと期待できます。長期にわたって継続すれば、増加率もより高まるでしょう。
ちなみに、より強い衝撃がかかる「ミニジャンプ運動」でも実験してみました。40代、50代の男性2人と、30代、40代、50代の女性3人の、計5人に、1日に30回、高さ20㎝の台からストンと降りる運動を、1週間継続してもらったのです。その結果、5人中4人に、骨ホルモンの増加が見られました。
ミニジャンプのほうが、かかと落としより効果的とも考えられますが、衝撃が強い分、強い負荷がかかります。まずはかかと落としから始め、慣れたら移行してもいいかもしれません。
かかと落としをする回数は、ご自分の体力に合わせて調整してけっこうです。継続することが肝心なので、無理のない目標を設定するようお勧めします。
医療機関で骨ホルモンの量を測定することは、残念ながらまだ一般的ではありません。けれども、かかと落としを続けるうちになんらかの効果を実感できたなら、それが骨ホルモンが増えている証といえるでしょう。
解説者のプロフィール

平田雅人
福岡歯科大学口腔歯学部客員教授・歯学博士。
1976年九州大学歯学部歯学科卒業。
その後教授を経て、九州大学大学院歯学研究院長。
2014年10月、骨で作られるたんぱく質である「オステオカルシン」を経口投与することで血糖値が下がり、全身代謝が活性化することを発見した。
17年4月より現職。
著書に、『1日1分「かかと落とし」健康法』(カンゼン)がある。
●福岡歯科大学
http://www.fdcnet.ac.jp/col/