
しっとり潤った粘膜が病気やアレルギーを防ぐ
「鼻水やくしゃみがひどい」「目や肌がかゆい」「まぶたが腫れる」といったアレルギー症状にお困りのかたはいませんか。それらは、粘膜に原因があるかもしれません。
粘膜とは、口や鼻、内臓などの内側を覆う膜状のやわらかい組織のこと。私は、40年以上にわたり免疫学を研究してきましたが、人間の免疫機能を左右するのは、粘膜といっても過言ではありません。
例えば、毎年冬になると世間を騒がせるインフルエンザですが、口や鼻の中の粘膜がよい状態の人ほどかかりにくいことがわかっています。今の時期、人々を大いに悩ませている花粉症も同様です。
粘膜がよい状態とは、粘液が潤沢に出ていて、しっとりと潤っていることを指します。粘液は、全身の粘膜から分泌されます。例えば、唾や鼻水は粘液であり、涙の一部にも粘液が含まれています。粘液は、アレルギー物質や病原体が体内へ侵入するのを防ぐ第一のバリアであり、健康を維持するうえで重要な役割を担っているのです。
粘液には複数の防御物質が含まれていますが、そのなかの代表格がムチンです。ムチンは、粘液の主成分で、これが粘り気の元。異物が粘膜に付着するのを防いで体外へ排出し、粘膜を保護してくれるのです。
しかし現代人の多くは、粘液が十分に産生されず、粘膜がカサカサに乾いてしまっています。過度なストレスや不規則な生活によるものですが、これでは粘膜が異物をブロックできずに、さまざまなアレルギー症状を招きかねません。
しかし、ストレスがたまるからといってすぐに仕事を辞めたり、生活習慣を変えたりするのは容易ではないでしょう。そこで私が勧めたいのが、粘液の元となるネバネバ成分を食べ物によって摂取することです。
アレルギーを抑制するとヒトの実験で判明!
その成分が、糖たんぱく質です。糖たんぱく質は、体内のムチンと類似の働きをします。外部から摂取することで体内のムチンが補充され、乾いた粘膜がしっとりと潤った状態になり、花粉などを防いでくれます。
この糖たんぱく質を多量に含む食材こそ、レンコンなのです。生のレンコンは強い粘り気が特徴ですが、そのネバネバとした成分が糖たんぱく質です。
糖たんぱく質は、70度以上で20〜30分加熱すると活性が失われます。なるべく生で摂取するのがいいでしょう。生のレンコンをしっかりと洗って泥を落とし、皮がついたまま薄切りにして食べるのがいちばんのお勧めです。
皮をむかないのは、ポリフェノールのフラボノイドという成分が皮付近に多く含まれているからです。フラボノイドは、アレルギー症状を引き起こすヒスタミンが放出されるのを防いでくれるため、アレルギーの抑制につながります。
つまり、レンコンは糖たんぱく質とフラボノイドによる二重の働きによって、アレルギーを強力に防いでくれるのです。
実際に私は、このフラボノイドの働きについて、ヒトで実験を行いました。レンコンエキスを9週間摂取してもらい、血中にあるIgEというアレルギー抗体の濃度を計測したのです。すると、レンコンによってアレルギー症状を引き起こすIgEが抑制されることがわかりました。
さらに抗酸化作用を示すフラボノイドは、老化や病気を招く要因としてよく知られる「活性酸素」の産生を防いでくれます。活性酸素は、粘膜の働きも低下させますから、この点からも粘膜の機能向上に有効だといえるでしょう。
糖たんぱく質だけを考えるなら、レンコンのほかにも、サトイモやヤマイモなど豊富に含んでいる食材はあります。しかし、私はレンコンを最強の抗アレルギー食材と考えており、その理由はこの多様な健康成分にあるのです。
先述したように、レンコンの力を余すことなく摂取するなら、生で皮ごと食べるのが最良ですが、アクが強いために抵抗を感じるかたもいらっしゃるでしょう。そんな人にお勧めなのが、レンコンパウダーです。
よく洗ったレンコンを皮つきのまま2〜3mmの厚さに切り、2〜3日の間、天日干ししてカラカラになるまで乾燥させます。それをフードプロセッサーやミルミキサー(なければミキサーでも可)で細かく粉砕し、ヨーグルトやみそ汁、スープ、サラダ、炒め物などに振りかけて使ってください。
なかでも、ヨーグルトとレンコンパウダーは最高の組み合わせです。なぜなら、ヨーグルトに含まれる乳酸菌が、腸内の環境を整えて、より抗アレルギー効果が高まるからです。実際に、レンコンエキスと有胞子乳酸菌(生きたまま消化管に到達する乳酸菌)を混ぜた錠剤を花粉症に悩む人に3ヵ月間摂取してもらったところ、実に81%の人の症状が改善しました。
レンコンは古来、アレルギー改善の漢方薬として用いられてきました。昔の人もその効果をよくわかっていたのでしょう。皆さんもアレルギー対策にぜひレンコンを活用してください。
解説者のプロフィール

和合治久
1950年生まれ。埼玉医科大学短期大学名誉教授。東京農工大学大学院修士課程修了。京都大学にて理学博士取得。元埼玉医科大学短期大学教授・ 学科長・学長補佐。専門は、比較免疫生物学、免疫音楽医療学。