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【医師解説】認知症は医師選びが重要!抗認知症薬の多剤投与の危険とは

【医師解説】認知症は医師選びが重要!抗認知症薬の多剤投与の危険とは

日本で認知症の患者さんが急増している理由として、世界一の長寿化や、糖尿病患者の増加などが指摘されていますが、私は、多剤投与や抗認知症薬の副作用も、大きく関与していると考えます。【解説者】長尾和宏(長尾クリニック院長)

薬の増量規定が撤廃され少量投与が容認された!

年々、患者数が増えている病気の代表が、認知症です。
厚生労働省によると、2025年には、国内の認知症の患者数が700万人に達すると推定されています。

諸外国に比べても、かなり早いペースです。
日本で認知症の患者さんが急増している理由として、世界一の長寿化や、糖尿病患者の増加などが指摘されていますが、私は、多剤投与や抗認知症薬の副作用も、大きく関与していると考えます。

現在、保険適用になっている抗認知症薬は、「ドネぺジル塩酸塩(商品名=アリセプト。
通称ドネぺジル)」や「ガランタミン臭化水素酸塩(商品名=レミニール)」など、4種類あります。

なかでも、10数年前から使われてきた最も有名な物が、「ドネペジル」です。
ドネペジルは、神経伝達物質(アセチルコリン)の濃度を高めることで、認知機能の温存を目指す薬です。

認知症にはさまざまな種類がありますが、ドネペジルは、全体の約半数を占めるといわれている、「アルツハイマー型認知症」に加え、第二の認知症として知られるようになった「レビー小体型認知症」にも適応があります。
しかし、抗認知症薬が禁忌である「前頭側頭型認知症(ピック病)」の患者さんにも、ドネペジルなどが処方されているのが現状です。

このように、抗認知症薬が適応以外に処方されると、深刻な副作用が起こります。
例えば、レビー小体型認知症は、薬剤過敏が特徴です。

そこに、大量のドネペジルを投与すると、歩行障害や幻覚などの症状が現れます。
ましてや、前頭側頭型認知症にドネペジルを投与すると、本来は禁忌であり、実際、興奮して大暴れします。

認知症医療の歴史はまだ浅く、認知症と診れば「とりあえずドネペジル」と処方する医師も少なくありません。
誤診・誤処方が発生する場合はありますが、やや過激ないい方をするなら、抗認知症薬をやめるだけで、認知症が劇的に改善した例は、いくらでもあるのです。

そもそも、ドネペジルのような脳に作用する薬の効果は、個人差が非常に大きく、人によって数百倍違うものです。
しかし、10数年続いてきた「抗認知症薬の増量規定」なる規則が、こうした個別性を重視する医療を阻んできました。

「抗認知症薬の増量規定」とは、薬品の添付文書どおり、段階的に量を増やし、最大量で維持しなければならないという、処方の際の規則です。
ドネペジルの場合は、3mgで投与を開始したら、2週間後には必ず5mgに増量しなければ、医師が保険診療上のペナルティを受けていたのです。

抗認知症薬は、基本的に興奮剤ですから、効き過ぎると興奮作用や攻撃性が高まります。
しかし、「効いていない」と誤った判断により、さらに薬を増量した結果、ますます攻撃性が高まり、向精神薬までも与えられるという悪循環がくり返されるのです。

そのような医療・介護現場は、少なからず存在します。
そんな大きな矛盾に気がついた現場の医療・介護関係者、市民が立ち上がり、2015年11月に「抗認知症薬の適量処方を実現する会」が結成され、私が代表理事に就任しました。

抗認知症薬の副作用を集計し、国やマスコミに提言した結果、2016年6月には、増量規定が事実上撤廃され、患者さんの個別性に応じた少量投与が容認されました。

薬よりも外出や運動を勧める医師を選ぼう!

こうして、多くの誤診や抗認知症薬の過剰投与が、認知症の人たちを苦しめてきたことが、徐々に知られるようになりました。
抗認知症薬は、患者さん一人ひとりへのきめ細やかな処方が基本になります。

もし患者さんが怒りっぽくなったら、薬の副作用と考え、減薬しなければなりません。
また、意思疎通ができなくなれば、抗認知症薬は意味がないので、ただちに中止すべきです。

こう考えると、薬害を回避し、認知症の人の尊厳を守る第一歩は、以上のことに理解がある医師選びになります。
ですから、初診時に患者さんや家族のいうことに、じっくり耳を傾けてくれる医師を選んでください。

最初から患者さんと真摯に向き合う姿勢が希薄な医者は、認知症の人を幸せにすることはできません。
患者さんやご家族側も、漠然と「認知症を治してくれ」ではなく、具体的にどんな症状を改善してほしいのか、初診時に医師にハッキリと伝えることが大切です。

そして、刻々と変わるさまざまな症状に対して、「今、誰がどんな症状にどれだけ困っているのか」を、医師が診察のたびに聞いてくれるのかをチェックしてください。
家族が薬の副作用と思われる症状を一生懸命訴えても、「認知症は進行性の病気ですから」と薬の増量だけを提案する医師であれば、迷わず別の医師に代えたほうがいいでしょう。

困った症状をよく聞き、必要最低限の薬を調節できてこそ、ほんとうに認知症を診られる医師です。
さらに、薬物治療よりも、非薬物療法に力を入れている医師であれば理想的です。

具体的には、買い物や食事などの外出や旅行の機会を増やしたり、歩行や運動習慣を勧めたりする、熱心な医師です。
介護の世界から見ると、認知症は「関係性の障害」といわれています。

ですから、予備軍から認知症に至らないためのさまざまな予防法や、認知症の人が心地よいと感じる環境作りが大切です。
薬に過剰な期待をせず、今できることを見守りながら、しっかり患者さんを支えることを第1に考えてください。

怒りっぽくなったなど副作用が出たら減薬・断薬を検討すべき

この記事のエディター

※これらの記事は、マキノ出版が発行する『壮快』『安心』『ゆほびか』および関連書籍・ムックをもとに、ウェブ用に再構成したものです。記事内の年月日および年齢は、原則として掲載当時のものです。

※これらの記事は、健康関連情報の提供を目的とするものであり、診療・治療行為およびそれに準ずる行為を提供するものではありません。また、特定の健康法のみを推奨したり、効能を保証したりするものでもありません。適切な診断・治療を受けるために、必ずかかりつけの医療機関を受診してください。これらを十分認識したうえで、あくまで参考情報としてご利用ください。

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