解説者のプロフィール

三浦直樹(みうら・なおき)
●みうらクリニック
大阪市北区東天満1-7-17東天満ビル9F
TEL 06-6135-5200
https://www.miura-cl.jp/
みうらクリニック院長。
肉親のがんをきっかけに、西洋医学の限界と矛盾を強く認識。
以来、約20年間、治療法の選択肢を広げるべく、自然療法の研究・実践を開始。
病気にならない生活習慣のアドバイスを行う一方で、「難病と言われてもあきらめない」をモットーに、他の病院では行っていない治療法なども効果や安全性を考えながらとり入れている。
著書『週1断食で万病が治る』『顔を見れば隠れた病気がわかる』(ともにマキノ出版)が好評発売中。
「甘い野菜スープ」は万人向けの健康食
私のクリニックでは、必要に応じて西洋医学と自然療法を組み合わせながら、自然治癒力を引き出す「統合医療」を実践しています。
薬だけに頼らず、生活習慣の改善から病気を治すことを目指し、マクロビオティックや漢方薬膳の考えを取り入れた食事療法や断食の指導などを行っています。
もちろん、一人ひとりの症状やライフスタイルによって、勧められる養生法や食事療法の内容は変わってきます。
その中でも、マクロビオティックの代表的な養生メニューの一つ「甘い野菜スープ」は、効果・効能の面では万人向けの健康食といえるでしょう。
理由は、大きく三つ挙げられます。
甘い野菜スープの作り方は、↓の記事で詳しく紹介されています。
(理由1)血糖値の乱高下を防ぎ膵臓の負担が減る!
まず一つめは、甘い野菜スープを飲んでも、血糖値の上昇が緩やかなことです。
精製された白砂糖などの甘みは、体内への吸収が早く、短時間で急激に血糖値を上げます。
そして、膵臓からインスリン(血糖値を下げるホルモン)が大量に分泌されると、今度は血糖値が急激に下がります。
この血糖値の急激な上がり下がりが、体に過度な負荷をかけるのです。
そして、血管や臓器、筋肉など、体の諸機能の働きをつかさどっている自律神経に乱れが生じてきます。
自律神経は、生命活動の根幹を担っており、その乱れは万病の元といえます。
高血圧や糖尿病といった生活習慣病をはじめ、うつや不眠といった精神疾患まで、あらゆる病気の誘因となるのです。
一方、甘い野菜スープは、タマネギ、キャベツ、カボチャ、ニンジンを細かく切り、水で煮出して作るスープです。
野菜の自然な甘みは、摂取しても血糖値の上昇は緩やかです。
そのため、血糖値の乱高下を防ぐことができて、自律神経のバランスが整い、健康の維持に役立つのです。
血糖値の乱高下が防げると、精神面も安定します。
うつや不眠にお悩みのかたにもお勧めできます。
また、当然ながら、膵臓への負担も減るので、糖尿病や膵臓の病気のかたにも大いに勧められます。
(理由2)腸内環境を整える
甘い野菜スープを万人に勧められる理由の二つめは、腸の環境を整える働きがあるからです。
食生活の乱れやストレスなどが原因で、現代人の多くは腸内環境が悪化しています。
便秘にお困りの人も多いことでしょう。
便通の悪い人は、腸のぜん動能力(便を肛門に送り出す動き)が低下しています。
便秘解消のために食物繊維をたくさんとっても、それを出し切る力がないのです。
甘い野菜スープは、煮出したあとの野菜をこして、スープだけを飲みます。
このスープには、水溶性の食物繊維やオリゴ糖が豊富に含まれています。
これらは、腸の中をキレイに大掃除し、腸の働きを正常化してくれます。
便秘の症状がひどくて困っている人は、朝食をこのスープだけで過ごしてみてはいかがでしょうか。
私の患者さんの中にも、朝食を甘い野菜スープだけにしたら、便通がよくなったという人がおおぜいいらっしゃいます。
便通がよくなって腸内環境が整うと、やせやすい体になります。
その点から、肥満が大きな誘因である高血圧の改善も期待できるでしょう。
私がマクロビオティックの食事指導をメインに行っていたときは、甘い野菜スープで糖尿病の薬がいらなくなったり、高血圧が改善したりした例をたくさん見てきました。
胃腸が整えば肝機能も整うので、肝臓の病気にもよい効果が得られるはずです。
(理由3)ファイトケミカルを効率的に摂取できる
理由の三つめは、ビタミンやミネラル、そして、ファイトケミカルを効率的に摂取できる点です。
甘い野菜スープは、タマネギ、キャベツ、カボチャ、ニンジンに含まれているこれらの成分が溶け出した、非常に栄養価の高いスープです。
液状なので胃腸への負担も少なく、吸収がいいことも利点です。
ファイトケミカルとは、植物に含まれる機能性成分のことを指し、ポリフェノールやカテキン、フラボノイド、カロテン類などが有名です。
体の酸化を防いで老化を遅らせたり、免疫力を上げてガンなどを予防したりする効果があります。
ファイトケミカルは、野菜の皮の部分に特に多く含まれています。
甘い野菜スープは、タマネギを除いて皮ごと使うため、ファイトケミカルを多く摂取できるのです。
甘い野菜スープは、200mlぐらいの量を1日1杯飲むのがいいでしょう。
野菜の自然な甘みで、おなかも満たされるので、間食も少なくなると思います。
体が冷えやすい人は、温めて飲むことをお勧めします。
夏は冷やして、冬は温めてといったぐあいに、季節によって使い分けてもよいでしょう。
私も、甘い野菜スープをよく飲んでいます。
飲むだけで、心も体もホッと温まってきますよ。