耳周辺の血流がよくなりめまいや難聴が改善!
私と山岸茂則先生は、もう20年以上のつきあいです。
山岸先生は、非常に優秀な理学療法士であり、多くの患者さんと同様、私も大きな信頼を寄せています。
その山岸先生が、舟波真一先生とタッグを組んで、豊富な臨床経験をもとに考案されたのが「うつぶせユラユラ」です(やり方は別記事参照)。
私は呼吸器外科が専門ですが、全身の膜組織に注目されたことは、非常に興味深いと思いました。
実際に呼吸器の手術をする際は、筋肉を包む筋膜、骨を包む骨膜、血管や神経を包む膜など、さまざまな膜組織を目の当たりにします。
これらを、いかに適切に処置するか否かで、術後の経過が大きく左右されることを、私は身を持って知っています。
それほど膜組織は、各器官を守る非常に重要な組織なのです。
さらに私が注目したのは、うつぶせユラユラが、神経を介して全身に作用している点です。
うつぶせの姿勢や、ユラユラと揺れることが、腸への物理的な刺激となり、それが神経に働きかけていると推察できます。
腸と深い関係があるのが、自律神経です。
自律神経は、私たちの意志とは無関係に働き、体調を整えている神経です。
自律神経には、交感神経(活動時に働く神経)と副交感神経(休息時に働く神経)があり、互いにバランスを取りながら、内臓の働きや血流、体温など、生命維持に必要なあらゆる機能をコントロールしています。
自律神経は、多くの神経細胞が集まっている脳がコントロールしていますが、腸にも、脳に匹敵するほどの神経細胞が存在します。
近年の研究で、腸と脳は、お互いに作用しながら、自律神経を調節していることが判明しているのです。
このことから、「腸は第二の脳」とも呼ばれます。
うつぶせユラユラは、自律神経のバランスを調節する働きがありますが、特に副交感神経を優位にさせる力が大きいのでしょう。
うつぶせユラユラを行っているかたに話を聞くと、「心も体もリラックスする」「寝る前に実行すると、スーッと入眠できる」という声が多いそうです。
私もうつぶせユラユラを行いましたが、心身が深くリラックスすることを実感しました。
これこそ、副交感神経が優位になっている端的な証拠です。
副交感神経が優位になると、末梢血管が拡張し、全身の血行改善につながります。
血行が促されれば、冷え症やむくみはもちろん、高血圧や糖尿病など、生活習慣病の改善も期待できます。
また、耳周辺の微小血管の血流もよくなるので、難聴や耳鳴り、めまいの改善にもつながるでしょう。
さらに、腸管の動きが向上するので、便秘の改善にも役立ちます。
実際、便通がよくなったかたは多いそうです。
便秘が改善すれば、腸内環境も整うので、さまざまな健康効果が期待できます。
このように、自律神経のバランスが整うことで、さまざまな好循環が生まれます。
就寝前にユラユラすれば睡眠の質が高くなる!
聞いたところによれば、うつぶせユラユラを行うと、呼吸が深くなったり楽になったりするかたが多いそうです。
うつぶせの姿勢で、呼吸が楽になることはありません。
呼吸が楽になる姿勢は、あおむけから少し上半身を起こした状態です。
ですから、うつぶせユラユラで呼吸が楽になるというのは、やはり、自律神経が調節される働きによるものでしょう。
うつぶせユラユラは、忙しい現代人でも、簡単に実行できるので、ぜひ試していただきたいものです。
もちろん、体の不調を感じたときは、まずは専門の医療機関で診察を受けて、しかるべき治療を受けましょう。
そのうえで、セルフケアとしてうつぶせユラユラを試されることをお勧めします。
副交感神経が優位になれば、全身の筋肉の緊張がほぐれていき、筋肉のコリや痛みの緩和につながります。
呼吸器に関していえば、肋間筋(肋骨の間にある筋肉)の緊張が和らぎ、胸郭(胸部をとりまく骨格)や横隔膜(肋骨の内側にある筋肉)の動きがよくなにより、うつぶせユラユラの最も優れた点は、誰でも簡単に実行できることです。
やり方がとてもシンプルで、そしてなにかしらの効果をすぐに実感できる、実にすばらしい体操だと思います。
現代人は、過度のストレスや誤った生活習慣などで、自律神経のバランスが乱れ、さまざまな心身の不調に悩んでいるかたがたくさんいます。
よりリラックス効果を得たいかたは、副交感神経が優位になりやすい夜の時間帯や、就寝前に実行するといいでしょう。
速やかな入眠や深い睡眠は、心身の修復を促します。