目の疲れを感じるのは18時からが大多数
私たちの目の表面は、常に涙によって覆われています。
涙は異物に対するバリアの機能を持ち、目を守ったり、栄養を供給したり、視力を発揮したりする重要な役目を果たしています。
まばたきが少なければ、当然ながら、涙が蒸発し、目の表面が乾きます。
また、まばたきが涙腺を刺激することで涙が分泌されるため、まばたきの不足は、ドライアイを招くのです。
ドライアイを放置すると、目の表面が傷つきます。そこから細菌に感染することもあり、視力低下の原因にもなるので要注意です。
とはいえ、ふだんからまばたきの回数を意識している人は、あまりいないでしょう。
ある人の1分間のまばたきの回数を調べたところ、街の中では39回まばたきしているのに、パソコン使用中は、たった3回しかしていませんでした。
パソコンやスマートフォン(スマホ)の画面を見続けていると、まばたきする回数が、極端にへるのです。
ドライアイになると、目の乾きによる不快感だけでなく、目が疲れやすくなり、「物が見えづらい」「かすんで見える」といった、老眼にも似た症状が出てきます。
老眼といえば、皆さんは、「夕方老眼」あるいは「週末老眼」という言葉を、耳にしたことがあるでしょうか。
現代人は、1日じゅう、目を酷使する生活を続けています。
パソコンやスマホを、それこそ朝から晩まで使っていると、目には疲労がたまる一方です。
私たちのクリニックでの、患者さんへの聞き取り調査でも、実に9割以上の人が、パソコンや携帯、スマホが原因で、目の疲れを感じると答えています。
私たちが物を見るときには、目の周囲にある「毛様体筋」という筋肉が収縮します。
これにより、レンズの役目をする「水晶体」の厚みが変わり、見たいものにピントが合うのです。
しかし、パソコンやスマホを長時間使い続けていると、この毛様体筋が疲労し、筋肉がかたくなるため、ピント合わせがスムーズにできなくなります。
実際、先の聞き取り調査で、目の疲れを感じる時間帯についても尋ねたところ、8割以上の人が、「夕方以降18時から」と回答しています。
こうして疲労が蓄積してくると、夕方には、加齢による老眼と同じように、目がかすんで物が見えづらくなることがあります。
こうしたケースを、夕方老眼と呼んでいます。
そして、平日の疲労がたまった週末に、同様の症状が起こるのが、週末老眼。
両方合わせて、「疲れ老眼」ともいえるでしょう。
加齢による老眼の進行も抑制する!
私たちの研究では、眼精疲労の原因のおおよそ6割を、ドライアイが占めています。
残りの4割は、目の中の毛様体筋などの筋肉の疲れや、脳の疲労によるものです。
疲れ目くらい、とほうっておくと、眼病や視力低下、頭痛や不眠などを招くことがあるので、甘く見てはいけません。
本来は、目の疲れを感じたらパソコンやスマホを使う環境から遠ざかり、意識して目を休めたり、遠くを見たりするのがベストです。
しかし、実際はなかなか、そうもいかないでしょう。
そこで、疲れ老眼の解消にお勧めなのが、今回ご紹介する、目の温パック。
また、目の温パックは、毛様体筋をほぐすだけでなく、ドライアイにも効果があります。
ドライアイのなかでも、近年になってふえているのが、女性のアイメイクが原因で起こるドライアイです。
まつ毛の際の内側には、涙に含まれる油分を分泌する、マイボーム腺せんという皮脂腺があります。
目の際ギリギリにつけたアイラインやマスカラがはがれ落ち、このマイボーム腺を詰まらせてしまうことがあるのです。
メイク落としを使っても、粘膜に入った成分は取れにくく、蓄積されます。
すると、質のいい涙が分泌されず、ドライアイになるだけでなく、ほかの眼病の原因にもなりえます。
目の温パックは、マイボーム腺の油分の循環をよくして、汚れを浮かし、この詰まりを解消するのに有効です。
蒸しタオルがめんどうな人は、薬局などで売られている、市販のホットアイマスクを利用するといいでしょう。
ドライアイや疲れ老眼をこまめにケアすることが、加齢による老眼の進行を遅らせることにもつながるのです。
やり方は、左の図解を参照してください。目の周囲を温めると、こりかたまった毛様体筋がほぐれてきます。
筋肉の緊張がほぐれると、血流が改善。それに伴い、目のショボショボ感や、かすみも取れるのです。
実際に、1日じゅうパソコン作業をして、夕方老眼状態になっている人の目に温パックをすると、徐々にピント調節力が改善してきます。
目が疲れたと感じたときはもちろん、夕方や就寝前などに行うよう、毎日の習慣にすれば、その日の目の疲れがリセットされます。
数日分の眼精疲労がたまって起こる、週末老眼の予防にもなります。