切り替えた患者さんから問題点が続々寄せられた
世界屈指の薬大国である日本。
80~90代のかたが毎日、20種類もの薬を飲んでいる例は、珍しくありません。
特に、高齢者へのこうした薬の多剤投与は、世界に冠たる国民皆保険制度の、負の側面であるといってもいいでしょう。
その背景には、臓器別の専門医療という、西洋医学的思考の行き詰まりがあります。
「薬剤で病気を治す」という思考では、若年者には有効でも、高齢者には対応できません。
そして、製薬会社による利益追及などの要素も絡み合った結果が、多剤投与というわけです。
多剤投与は、医療費増加の一因です。
よって、医療費削減のためにも、そして患者さんの尊厳を守るためにも、多剤投与の改善が、国家にとっても急務となっています。
しかし、医療費削減のために国が推し進めているのは、減薬ではなく、「ジェネリック医薬品」の普及運動でした。
薬価が「先発薬」の7掛けという低価格がウリの「ジェネリック薬」は、「後発薬」とも呼ばれています。
新薬の有効性や安全性が特許として認められるのは、10年間です。
この期間が過ぎると、さまざまな製薬メーカーが同じ成分の薬であるジェネリック薬を製造できるようになります。
ジェネリック薬は、数百億円もの開発費用と長い開発期間が不要なため、薬価が新薬の7割以下なので、確かに医療費削減につながります。
特に5~6年前からは、「有効成分が同じで低価格」という触れ込みで、マスコミを通じたジェネリック薬への誘導が盛んに行われています。
テレビ広告では、「安かろう、よかろう」のイメージを前面に出し、ジェネリック薬を宣伝しています。
政府は2020年までに、現在60%のジェネリック薬の普及率を、80%までに上げる目標を掲げています。
また、薬局に対しても、ジェネリック薬の処方割合が高い薬局ほど診療報酬が高くなるしくみとし、ジェネリック誘導が強化されています。
実際、ジェネリック薬の処方割合が低い薬局ほど、経営が難しくなっているのが現状です。
このように、国があの手この手で急速に進めるジェネリック誘導。
しかし、本来あるべき「安かろう、よかろう」のジェネリック薬が、「安かろう、悪かろう」ではないかという声が挙がっています。
実際、ジェネリック薬に変更した患者さんたちから、「効き方が違う」「変えてから体調が優れない」「副作用が現れた」といった問題点が指摘されるようになったのです。
すべての成分が同じではないため危険性が高まる

なぜ、このような問題が起こるのでしょうか。
アメリカやイギリスなどの先進国にもジェネリック薬はありますが、それらの国には、専門の審査機関があり、厳しい品質管理が行われています。
残念なことに、日本には、ジェネリック薬専門の審査機関がありません。
医薬品の品質管理の遵守は、製造するメーカーごとに義務づけられていますが、第三者によるチェックは行われていないため、品質管理が甘くなる場合があります。
そのうえ、新薬とは違い、開発費用のかからないジェネリック薬を製造するメーカーには、小規模の会社も多く存在します。
こうして製造される薬の品質は、大手製薬会社による一流のジェネリック薬がある一方、三流のジェネリック薬も存在するのが現状です。
また、ご存じのように、一つの薬には、いくつもの成分が含まれています。
ジェネリック薬の場合も、主成分が新薬と同じでも、すべての成分が同じというわけではありません。
よって、新薬と比べて、効果が明らかに劣る薬が製造されてしまう可能性があるのです。
新薬では出なかった副作用が出る可能性も、十分考えられます。
ですから、ジェネリック薬を選択する際には、すべてが新薬と同じ成分、同じ効き目ではないことなど、不安要素をあらかじめ知っておく必要があるでしょう。
少なくとも、ジェネリック薬に切り替えたあとに効き目がなくなったり、これまでになかった副作用が続いたりする場合は、症状の悪化を考える前に、「ジェネリック薬のせいかな」と疑ってみてください。
そして、遠慮なく正直に医師や薬剤師に相談してください。
ジェネリック薬と先発品のどちらを選ぶかは、患者さん側に権利があります。
しかし、「安い」という触れ込みに安易に乗り後悔するのも、患者さん側です。
よく理解し十分に納得したうえで、先発品かジェネリック薬かを選んでください。