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腸内フローラを元気にする食事 昔ながらの和食をとれば万病は防げる

腸内フローラを元気にする食事 昔ながらの和食をとれば万病は防げる

日本人の腸内細菌は、日本の伝統的な食事を好むのです。とはいえ、いきなり全部を変えるのは難しいでしょうから、白米を玄米に替える、有機野菜や発酵食品(納豆、みそ汁、ぬか漬けなど)をとる、肉を控えるなど、できるところから始めてください。【解説者】本間真二郎(七合診療所所長)

偏った食事で腸内フローラが荒廃!

私は、5年前に栃木県那須烏山市に移住し、小児科医として地域医療に携わる傍ら、「自然農」を行うようになりました。
自然農とは、自然のしくみを壊さない、自然の営みに沿った農業のことです。

農薬や化学肥料はいっさい使いません。
それは、微生物と共存する農業といってもいいでしょう。

植物に養分を供給しているのは、微生物です。
微生物は、土の中の有機物を分解して無機物とし、土を介して植物に養分を渡しています。

しかし、農薬や化学肥料を一度でも使うと、大事な微生物が大きなダメージを受け、偏った状態になります。
すると、土は力を失い、植物に養分を供給できなくなってしまいます。

私たちの腸も、同様です。
偏った食事をして腸に栄養が届かないと、腸内細菌は減り、悪玉菌が増えて、腸内フローラが荒廃してきます。
すると、体の中では次のようなことが起こります。

●腸の動きが悪くなって、便秘や下痢を起こす。

●腸内の腐敗が進み、アンモニア、硫化水素、インドールなどの有害物質ができる。
これらは腸管や腸内細菌にダメージを与え、肝機能異常を引き起こす。

●発ガン物質をつくる。

●免疫力を低下させ、あらゆる病気の原因となる。

●慢性炎症を引き起こし、高血圧、ガン、動脈硬化などさまざまな病気の原因となる。

●腸の粘膜が慢性的に損傷し腸内の細菌やウイルス、未消化の食品などが体内に漏れて、アレルギーや自己免疫疾患を起こす(リーキーガット症候群)。

こうして、現代特有のさまざまな病気を発症しやすくなるのです。

大腸まで腸内細菌の栄養を届けることが大事

人の健康をいちばん根底で支えているのは、腸内細菌です。
ですから、腸内細菌が元気になり、腸内フローラが豊かになるような食事が、人の健康にとっても、いちばんよい食事です。

では、具体的にどのような物を食べればいいのでしょうか。
腸内細菌の多くは、大腸にいます。

ですから、大腸までしっかり届いて腸内細菌の栄養になる物を食べればいいのです。
炭水化物、たんぱく質、脂質の3大栄養素のなかで、たんぱく質と脂質は、一部を除いてほとんどが大腸まで届きません。

ですから、いくら食べても腸内細菌の栄養にはなりません。
腸内細菌の栄養になるのは、主に炭水化物です。

炭水化物は、食物繊維と糖質に分けられます。
このなかで、大腸まで届くのは、水溶性食物繊維と、多糖類(でんぷん)、オリゴ糖です。

食物繊維は、不溶性と水溶性があります。
どちらも人間の消化酵素では分解できません。

しかし、水溶性食物繊維は腸内細菌の栄養になり、さまざまな働きをしてくれます。
水溶性食物繊維が多く含まれる食品は、納豆、大麦、ゴボウ、ニンニク、ラッキョウ、アボカド、プルーンなどです。

一方、不溶性食物繊維は、腸内細菌の栄養にはなりませんが、便のカサを増し、大腸を刺激して、便通をよくします。
糖質は、糖がたくさんつながった大きい糖ほど消化されにくく、大腸の奥まで届きます。

単糖類や砂糖のような二糖類は、小腸の入り口ですぐに吸収されてしまうため、血糖値を上げるだけで、腸内細菌の栄養にはなりません。
糖が3個以上つながったオリゴ糖は、ビフィズス菌や乳酸菌の栄養になりとても有益ですが、大腸の途中で吸収されてしまいます。

また、オリゴ糖を含む食材は少なく、食材からはとりにくいものです。
ベストは、糖が10個以上つながった多糖類です。

多糖類は難消化性なので大腸に届いて、腸内細菌のよい栄養になります。
米、大麦、豆類、イモ類をよく食べてください。

腸内細菌の栄養となる食べ物

日本人の腸内細菌は、日本の伝統的な食事を好む


お米は、白米より玄米のほうが、ゆっくり消化されて、大腸の奥まで届きます。
大事なことは、特定の菌を増やすことではなく、腸内細菌全体を増やして、腸内フローラを活性化することです。

そのために、大腸全体に栄養を届けることが肝心なのです。
以上のことから、どういう食事がよいか、おのずとわかってくるでしょう。

それは、自然の食材を使った昔ながらの和食です。
日本人の腸内細菌は、日本の伝統的な食事を好むのです。

とはいえ、いきなり全部を変えるのは難しいでしょうから、白米を玄米に替える、有機野菜や発酵食品(納豆、みそ汁、ぬか漬けなど)をとる、肉を控えるなど、できるところから始めてください。
人の腸内フローラは、3歳までにほぼ決まるので、3歳までの食事は特に大事です。

といっても、一生を通じて食べ物やいろいろなものが腸内フローラに影響を与えます。
食事以外では、添加物と抗生物質を避けることが重要です。

抗生物質は細菌などの微生物を殺す薬で、腸内細菌に大きな被害を与えます。
重篤な感染症の場合は必要なこともありますが、安易に使うのは禁物です。

また最近は、極端な除菌・抗菌の傾向があり、微生物を排除し過ぎる風潮があります。
行き過ぎた清潔志向は、かえって病気を招きます。

微生物と共存し、自然に沿った暮らしをすることが、人にとって健康になる道なのです。

※これらの記事は、マキノ出版が発行する『壮快』『安心』『ゆほびか』および関連書籍・ムックをもとに、ウェブ用に再構成したものです。記事内の年月日および年齢は、原則として掲載当時のものです。

※これらの記事は、健康関連情報の提供を目的とするものであり、診療・治療行為およびそれに準ずる行為を提供するものではありません。また、特定の健康法のみを推奨したり、効能を保証したりするものでもありません。適切な診断・治療を受けるために、必ずかかりつけの医療機関を受診してください。これらを十分認識したうえで、あくまで参考情報としてご利用ください。

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