解説者のプロフィール

小指にシップをすると首の緊張がゆるむ
私は10年以上前に、手の小指にシップをはる「小指シップ」を考案し、それ以来、多くの患者さんに小指シップを試してもらい、その効果を検証してきました。
これまでに私が確認した、小指シップが効果を発揮した主な症状は、下記のとおりです。

小指シップの効果がこれほど多岐にわたるのは、小指シップが交感神経の緊張をゆるめ、首すじのこりをほぐすからです。
交感神経は、ご存じのように自律神経のうちの一つで、副交感神経と対になって働き、内臓や血管などの働きを調整しています。交感神経が緊張して自律神経のバランスがくずれると、さまざまな不調が出てきます。
小指シップには、それを抑える作用があるのです。
小指シップで交感神経の緊張が取れることは、科学的に証明されています。交感神経が緊張すると瞳孔が開き、緊張がゆるむと小さくなりますが、小指シップをすると、瞳孔が小さくなるのです。
また、小指シップをすると、明らかに首が細くなります。これは、交感神経の緊張がゆるんで、首の筋肉がほぐれるからです。小指シップの効果は、この二つの作用によってもたらされます。それを説明しましょう。
①交感神経の緊張がゆるむ
交感神経を緊張させるセンサーは、全身の筋肉と腱(筋肉と骨をつなぐ組織)の間にあります。なかでも重要なのが、小指の深指屈筋という筋肉にあるセンサーです。小指シップはこのセンサーの緊張を取って、交感神経の緊張をゆるめるのです。
交感神経は、一般に血管を収縮させると考えられていますが、実は拡張させる作用もあります。交感神経が緊張して血管が広がり過ぎると、細菌やアレルギーの原因物質であるアレルゲンが血管に入りやすくなり、アトピーや花粉症を引き起こします。
しかし、交感神経の緊張がゆるめば、顔の器官などの開き過ぎた血管が元に戻り、それらの症状が治まるのです。
また、交感神経の緊張がゆるめば、自律神経のバランスが整い、めまい、不眠、イライラ、不安、高血圧といった、自律神経失調に由来する症状が改善します。
うつなどの心の不調にも効果が期待できる
②首すじがゆるむ
交感神経の緊張がゆるむと、首すじの筋肉もほぐれます。首すじには、私がネック・ホムンクルス(首のこびと)と名付けた、顔の器官(目、鼻、口、耳)と1対1で対応するポイントがあります。首すじがゆるむと、ネック・ホムンクルスもほぐれて、首と対応する顔の症状が改善するのです。
たとえば、右の耳に耳鳴りがある人は、右耳の耳たぶの少し下の首すじがこっています。ここが耳に対応するポイントで、このこりがほぐれると、それに対応する耳鳴りの症状もよくなります。
また、首すじがゆるむと、筋肉の間を通っている神経の圧迫が取れるので、手のふるえやしびれといった神経性の症状が改善します。首のこりが原因で起こる頸性めまいにも、大きな効果が期待できるでしょう。

以上のことから、小指シップは、交感神経の過緊張によって起こる症状や、首から上の症状によく効きます。
交感神経は筋肉と深い関係があり、筋肉が硬くなると、交感神経も緊張します。
女性は、生理前や更年期になると怒りっぽくなったり、イライラしやすくなったりします。これは、背中から首すじの筋肉が硬くなって交感神経が緊張するためで、たいてい肩がこっています。
しかし、小指シップをすると、交感神経の緊張が取れて筋肉がほぐれるので、更年期の症状や肩こりも改善します。
最近、小指シップがうつ病や心身症にも効くことがわかってきました。小指シップには交感神経を安定させる作用があるため、心の病気にもよい影響を与えるのでしょう。
こうした効果をもたらすのは、シップの保湿剤として使われている、グリセリンの作用です。グリセリンが小指に浸透し、深指屈筋にあるセンサーの緊張をゆるめるのです。
小指シップは、基本的には両手の小指にはります。ただし、症状が片側にだけ出ているような場合は、症状のある側だけでもいいでしょう。シップをはる目安は6~8時間です。それ以上はっても害はありませんが、水仕事などでシップがふやけると、効果は薄れます。
使用するシップは、白いネバネバした薬剤のついている、冷感タイプのパップ剤です。
ただし、アスピリンぜんそくや、非ステロイド系の消炎鎮痛薬に過敏反応がある人は、パップ剤を使えません。その場合は、小さく切ったガーゼにグリセリンを浸し、シップと同じ場所にはって、ラップで巻いてください。
小指湿布のやり方

【用意するもの】
・市販のシップ(冷感タイプのパップ剤)
・固定用のテープ(紙バンソウコウなど、なんでも可)

【小指シップのやり方】
❶市販のシップを、7mm×7mmくらいの大きさに切る。

❷❶を、手の小指(手のひら側)の第1関節と第2関節の間にはる。

❸❷ではったシップの上から、テープで巻いて固定する。
※両手の小指にはる。
※はる時間の目安は6〜8時間程度。それ以上はっても問題はないが、シップがふやけると効果が薄れるので、適宜新しいものに替えるとよい。
安田譲(やすだ・ゆずる)
安田医院院長・神経内科専門医。医学博士。小指シップをはじめ、自律神経を整えることで健康に役立てる診療、療法を得意としている。著書に『かんたん自律神経健康法』(PHP出版)、『シップかんたん自律神経健康法』(アマゾン電子出版)がある。