医師みずから20kgやせ、高血圧、糖尿病にも効く
近年、一般の人に向けた健康法として、「断食」が注目を集めています。
私がご紹介するのは、初心者向けの「週1断食」です。
これは、「断食に関心はあるけれど、経験したことはない」という初心者のかたに、特にお勧めの方法です。
私自身、1年に4回ほど、2泊3日で7食を抜く本格的な坐禅断食を、患者さんや一般の人々に指導し、自分でも実践しています。
2011年からは、日常的に「1日1食」を実践する形式の24時間断食を毎日行うようになりました。
では、なぜ医師である私が断食を実践し、皆さんにもお勧めするのか、その理由からお話ししましょう。
現代の病気のほとんどは、「過食」や「偏食」によって生じています。
過食が続けば、肥満して、さまざまな生活習慣病を引き起こします。
過食が続いた結果、腸の機能は低下し、免疫機能の異常を引き起こしてアレルギー疾患などの原因になります。
さらに、偏食によって神経伝達物質が体内で十分に作られなくなれば、認知症や脳機能の低下、うつなどが引き起こされます。
なかでも、過食による腸への悪影響は甚大です。
食べ過ぎによって腸は消化吸収に時間を取られ、そのうち疲れ果てて動かなくなります。
断食指導の大先達である、故・甲田光雄先生のお言葉を借りれば、これが、「腸マヒ」の状態です。
腸マヒが起こると、便秘が続き、宿便がどんどんたまっていきます。
そうなれば、いよいよ腸は動きにくくなってしまうのです。
断食を行うと、腸を休めることができます。
このため、腸が本来の働きをするようになり、排泄力が高まります。
こうして宿便が出ると、腸がスムーズに機能するようになって、体調まで全般的によくなるのです腸は、全身の健康状態に影響しています。
腸の働きがよみがえると、腸からの栄養の吸収もよくなり、質のいい血液が全身を巡るようになります。
体内に入った多くの有害物質を排出できるようになるのはもちろん、自然に肌が若返るのです。
加えて、断食をすれば、余分な脂肪やコレステロールが消費・排出され、メタボの改善やダイエット効果も得られます。
私自身も、週1断食を実践したことで、合計20kgの減量に成功しています。
ほかにも、ダイエット目的で断食合宿に参加した人のうち、10kg以上キレイにやせる人も少なくありません。
肥満が解消されれば、糖尿病や高血圧といった生活習慣病にもよい影響を及ぼすことはいうまでもありません。
朝と昼を抜くだけで十分な効果が得られる

では次に、週1断食のやり方をお話ししましょう。
断食前の食事は、和食中心の、なるべく体に優しい物を食べるようにします。
動物性の物や脂っこい物は控えます。
ご飯とみそ汁、野菜中心のおかずがいいでしょう。
野菜も、油を使って料理した物より、おひたしや煮物のようなあっさりしたメニューがお勧め。
食事は腹八分めでとどめ、アルコールは控えてください。
朝食と昼食を抜く場合なら、前日の断食前の夕食は、寝る2時間前までにとり終えます。
例えば、前日の夜7時に夕食をとったとしたら、断食当日は、朝食と昼食を抜き、夜7時まで何も食べないようにします。
摂取してよいのは、ゼロカロリー(エネルギー)でカフェインを含まない「水」だけです。
皆さんにお勧めするのは、この24時間断食です。
これを週に1回、4週連続で行えば、3日間で合計7食を抜く本格的な断食と同様の効果が得られます。
24時間断食の間、水以外の物を飲みたければ、番茶か柿の葉茶をお勧めしています。
どうしてもおなかがすいて困るという人は、野菜ジュースや甘酒、くず湯を飲むようにしましょう。
断食中、水分はいつとってもかまいませんが、とり過ぎには注意してください。
断食中は口寂しさから、水をたくさん飲み過ぎる傾向があるからです。
水分の過剰な摂取は、体を冷やすのでよくありません。
目安はトイレの回数です。
水分をとると、当然トイレの回数が増えるでしょう。
断食中も、ふだんと同じくらいのトイレ回数になるように、水分の摂取量を調節してください。
断食中、日ごろストレスがたまっている人や、胃腸が弱っている人は、吐き気が起こりやすくなります。
なかには、ふらつきや動悸がするという人も出てきます。
このような症状が出たら、塩を少しなめるといいでしょう。
ふらつきや動悸のする人は、ふだんよりゆっくり動くように配慮してください。
人によってはむしょうに眠くなる場合があります。
そんなときは、ゆっくり体を休めるチャンスととらえて、寝られるだけ寝てください。
逆に、おなかがすくと寝られない人やイライラする人もいます。
寝られない人には、腹式呼吸をお勧めしています。
また、イライラ対策として、好きな音楽や映画、本など、何か気を紛らすものを用意しておくとよいでしょう。
断食後の食事(回復食)は、準備食と同じと考えてください。
アルコールや動物性の物や脂っこい物を避け、野菜を中心とした和食の献立にします。
断食後、1~2日はこのような食事を心がけましょう。
くれぐれも気をつけていただきたいのは、回復食でドカ食いをしないことです。
ドカ食いは胃腸に大きな負担となります。
ここで、断食をお勧めできない人についてご説明します。
術後1年以内の人や、病気で体重が落ちている人などは、断食をしないでください。
また、糖尿病や妊娠中の人についても、注意が必要です。
週1断食は、断食を経験したことがない人でも、手軽に安心して行うことができる方法です。
しかも、効果を確実に実感できるはずです。
「腸」という漢字は、「月(にくづき)」に「易」と書きます。
「易」という字は、「日」と「月」で、中国古代思想では、運命の変化を表す言葉です。
つまり、「腸」は、体の運命を決める臓器といえます。
腸を整えることが人生を決めるといっても過言ではないのです。
興味をお持ちのかたは、ぜひ週1断食をお試しください。
解説者のプロフィール

三浦直樹(みうら・なおき)
●みうらクリニック
大阪市北区東天満1-7-17東天満ビル9F
TEL 06-6135-5200
https://www.miura-cl.jp/
医療法人花音会みうらクリニック院長。1968年、大阪府生まれ。1995年に兵庫医科大学を卒業後、関西医科大学小児科学教室に入局。1997年に退職し、西本クリニックなどで非常勤勤務を行うかたわら、各種自然療法を研究。2009年、みうらクリニック開院。2007年に臨済宗の僧・野口法蔵氏のもとで「坐禅断食」を学び、断食指導も行っている。

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