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【整形外科医】転倒予防には「足の指回し」が効果的 やり方を医師が解説

【整形外科医】転倒予防には「足の指回し」が効果的 やり方を医師が解説

高齢になると、なぜ転倒しやすくなるのでしょうか。整形外科の現場で、患者さんの足を診ていると、足の指が開かず、縮こまっている人がとても多いことに気づきます。靴をはく時間が長い現代人は、指が広がらず、そのせいで足指が機能しなくなって、ふんばる力が低下しているのです。【解説】宮田重樹(宮田医院院長)

足指の動きが悪いとつまずきやすくなる

健康に長生きすることは、万人が望むところでしょう。
そのために、気をつけていただきたいのが、転倒です。

高齢者の病気以外の死因のうち、最も多いのは窒息死、その次がお風呂などでの溺死、そして3番めが転倒・転落です。
命は落とさないまでも、転倒した高齢者の15~25%は大ケガを負い、そのうち5~10%は、骨折に至っています。

骨折をすると、長期間寝たきりになる可能性が大きく、その間に体力や筋力が低下して、歩けなくなるケースが少なくありません。
転倒をきっかけに、健康寿命が終了することも多いのです。

高齢になると、なぜ転倒しやすくなるのでしょうか。
整形外科の現場で、患者さんの足を診ていると、足の指が開かず、縮こまっている人がとても多いことに気づきます。

靴をはく時間が長い現代人は、指が広がらず、そのせいで足指が機能しなくなって、ふんばる力が低下しているのです。
特に高齢の患者さんは、足の指先が地面につかない「浮き指」や曲がった足指が多く、かかとに体重がかかっているため、バランスが悪くて非常に不安定です。

そうなると、歩くときに足を上げて片足になるのが怖くて、すり足で歩くようになります。
その結果、つまずきやすくなり、転倒につながるのです。

動きの悪くなった足の指を復活させるには、日々のセルフケアが大切です。
私が、患者さんにお勧めしているのは「、足の指回し」と「つま先前傾」です。

足の指回しは、足の指1本1本を、手で左右に10回くらいずつ回すだけです。
関節は、動かさないと固まります。
関節は日ごろから動かしておくことが大事なのです。

足の指回しは、関節をやわらかくする、いいきっかけになります。
関節は、自分で動かそうと意識することで、可動域が広がります。

ですから、足の指回しも、手の力だけで回すのではなく、足の指の間を広げたり、足の指を曲げたり伸ばしたりしながら行うと、より効果的です。

「歩く距離が延びた」「つまずきにくくなった」

足の指回しで関節をほぐしたら、次は、バランス感覚を鍛えるために、つま先前傾を行いましょう。
この体操は、かたい床の上など、足もとが安定した場所で行ってください。

寝たきりを防ぐ《足の指回し》のやり方

はだしになって足を肩幅に広げて立ち、足指の腹を床にしっかりつけて立ちます。
できないときは、手で足指を伸ばしてください。

背すじを伸ばしたまま、体を前傾させます。
かかとは、床から離れないようにしてください。

指先に体重をかけ、指先の腹でふんばって、5~10秒静止したら、ゆっくり元の姿勢に戻りましょう。
足の指回しとつま先前傾を、1日1~2回行ってください。

起床直後は、関節がかたく、平衡感覚も鈍いので、無理に行わないほうがいいでしょう。
少し体を動かして関節がほぐれてきた午後、またはお風呂上がりがお勧めです。

私の医院では、自発的に関節を動かすことを重視し、治療に頼るだけでなく、体操を含めたセルフケアも必ず行うよう指導しています。
簡単なセルフケアを毎日少しずつ行うだけで、体はすぐに変化します。

実際、今回ご紹介したセルフケアで、「歩く距離が延びた」「つまずきにくくなった」という患者さんは多数おられます。
靴や靴下も大切です。

最近の靴や靴下は、つまずき防止のために、つま先が浮くように設計された物があります。
一見よさそうですが、逆に浮き指を悪化させ、ふんばりの効かない足になるおそれがあります。

自分の足でしっかり歩くには、つま先が上がっていない靴や靴下を選びましょう。
靴下は、5本指靴下をはくか、暖かい時期の室内なら、はだしが安全です。

いずれの場合も、指の腹で地面をしっかりつかんで歩くように心がけましょう。
転倒して、大ケガをし、寝たきりになってからでは、体を元の状態に戻すことは困難です。

そうなる前に、できることをやっておきましょう。
ちょっとした心がけで、老後の生活は大きく変わります。

※これらの記事は、マキノ出版が発行する『壮快』『安心』『ゆほびか』および関連書籍・ムックをもとに、ウェブ用に再構成したものです。記事内の年月日および年齢は、原則として掲載当時のものです。

※これらの記事は、健康関連情報の提供を目的とするものであり、診療・治療行為およびそれに準ずる行為を提供するものではありません。また、特定の健康法のみを推奨したり、効能を保証したりするものでもありません。適切な診断・治療を受けるために、必ずかかりつけの医療機関を受診してください。これらを十分認識したうえで、あくまで参考情報としてご利用ください。

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