腎機能を早期かつ正確に測定できるシスタチンC
腎臓は、非常に我慢強い臓器で、慢性腎臓病になっても、なかなか自覚症状が現れません。
「尿の色が茶色っぽい、または赤っぽい」「尿が泡立ちやすい」「頻尿(特に夜)」などがあったら、早急に検査を受けたほうがいいでしょう。
そこで、慢性腎臓病かどうかを調べる主要な検査を紹介しましょう。
尿検査でわかる項目
尿たんぱく
腎臓が正常であれば、たんぱくが尿中に出てくることはありません。
ところが、腎細胞が障害されていると、そこからたんぱくが漏れ出てきます。
尿に含まれるたんぱくの総量を、「-」「+-」「1+」「2+」「3+」「4+」で示します。
「-」「+-」が正常で、+の数値が大きいほど、腎臓のろ過機能が低下していることを示します。
尿アルブミン値
アルブミンは、血中に最も多いたんぱく質で、通常は尿に微量しか出ません。
しかし、腎臓が障害され始めると、尿中に出始めます。
アルブミンは尿に微量に出始めた時点からチェックできるため、糖尿病性腎症の早期発見に役立つ指標です。
血液検査でわかる項目
クレアチニン値
尿検査と並んで、最も一般的な腎機能の検査とされるのがクレアチニンの検査です。
クレアチニンは、筋肉が壊れて生じる老廃物で、本来、血液によって腎臓に運ばれ、こし採られて尿中に排出されます。
ところが、腎臓のろ過機能が低下すると、血中にとどまる量が増えます。
血液1dl中に、それが何mgあるかを示すのがクレアチニン値です。
ただし、クレアチニン値は、腎機能の低下に比例して上昇するわけではありません。
そこで、腎機能がどれくらい残っているかは、クレアチニン値から、GFR(糸球体ろ過量)という数値を推算します。
GFRが60(ml/分/1・73㎡)未満だと、少なくとも軽度の慢性腎臓病が疑われます。

GFRは、クレアチニン値がわかれば、日本慢性腎臓病対策協議会のホームページで自動計算することができます。
●日本慢性腎臓病対策協議会のHP
https://j-ka.or.jp/
尿たんぱくや尿アルブミンの検査結果と、GFRの値から、慢性腎臓病の進行度は四つに分類されています。
自分の腎機能値がどの段階か、参考にするといいでしょう(左の図参照)。
シスタチンC
近年、腎機能を知る新しい指標として使われているものが、シスタチンCです。
これは細胞内で作られるたんぱくで、腎機能が低下すると、血中に増加します。
シスタチンCは、食事の影響や炎症の有無、年齢、性差などの影響を受けず、正確に腎機能を測定できるという特徴があります。
しかも、早期の段階から、腎機能の低下を発見することが可能です。
クレアチニン値はかなり腎機能が悪化してからでないと異常値が出ないため、クレアチニン値が正常でも、尿検査で、たんぱくが検出されるというケースがあります。
こうした場合、シスタチンCを測ってみるとよいでしょう(同様に、尿アルブミン値も確認に利用できます)。
腸内環境を整えて腎臓の血流を増やそう!
いずれにしても、慢性腎臓病は、早期発見、早期治療が最も肝心です。
慢性腎臓病と診断されたら、まず、その原因をきちんと把握することです。
そして、その原因に応じた対策を講じなければなりません。
例えば、生活習慣病による慢性腎臓病なら、悪い生活習慣や肥満などを改善することが大前提となります。
最後に、腎機能を保ち、透析を回避するための日常生活上のポイントを二つ紹介します。
①腸をキレイにする腸内に悪玉菌が増加すると毒素が増えます。
これは腎臓に負担をかける「腎毒素」となります。
また、腸の機能が悪いと、たんぱく分解もうまくいかず、腎臓の負担になります。
ですから、腎臓の負担を減らすには、腸内環境を整えて、便秘を予防する必要があります。
②体を芯から温める血管の塊である腎臓にとって、血行不良は大敵。
体を芯しんから温めて血流を促すことが、腎機能の維持・改善につながります。
お勧めは、38~39度のぬるめの湯船に30分つかったり、湯たんぽをおなかやお尻に当てたりして、内臓を温めることです。
そうしたことで、腎血流を増やす効果が期待できます。
発酵食品(納豆や漬物、みそ汁など)や、食物繊維の多い野菜や果物、海藻、キノコ類などを積極的にとりましょう。
ただし、腎機能低下が著しい場合は、カリウムも毒素になるので、カリウムを多く含む野菜や果物は控えてください。
川嶋 朗
1983年、北海道大学医学部卒業。東京女子医科大学附属青山女性・自然医療研究所自然医療部門准教授などを経て現職。日本腎臓学会学術評議員、日本東方医学会理事、日本抗加齢医学会評議員、日本統合医療学会理事。