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【ケトン体とは】

【ケトン体とは】"数値が高いと危険"は誤解 糖尿病に効果的な糖質制限ダイエット

これまで糖質制限の危険な面として糖質制限をした際に「ケトン体」が上昇する点が挙げられてきました。ケトン体が増えてケトアシドーシスになると、嘔吐、疲労感、脱力感など、さらに悪化すると死に至るとされてきました。しかし、それは誤解であり、数値を気にする必要はないのです。【解説】宗田哲男(宗田マタニティクリニック院長)

ヘモグロビンA1cが9%から5・2%に!

私は、産婦人科医として、妊娠糖尿病の患者さんをたくさん診てきました。
この病気は、妊娠中に糖尿病を発症するものです。

また、妊娠と関連がない場合でも、糖尿病が悪化して合併症を発症し、体の大事な機能を失うケースも多々ありました。
食事制限に苦しむかた、人工透析で大変な思いを味わうかた、視力を失うかた、足の切断を余儀なくされたかたなど、糖尿病というのは、実に悲惨な結果を招くものです。

かくいう私も、かつて糖尿病を発症し、苦しんだ経験を持っています。
しかし、現在の私は、それらの人々を救う画期的な治療法を知っています。

それこそが、「糖質制限」です。
まず、私がいかに糖尿病を克服したか、どれほど糖質制限の効果が絶大かについてお話しします。

私は幼いころから、お米や甘い物が大好き。
長年、食欲に任せて食べたいだけ食べてきた結果、50代半ばには、動くのも苦しいほど肥満体型になっていました。

そんな私が糖尿病であることがわかったのは2008年のことです。
血糖値(基準値は110mg/dL未満)が308mg/dL、ヘモグロビンA1c(過去1〜2ヵ月の血糖状態がわかる指標。基準値は、4・6〜6・2%)が9・0%もありました。

私は医師ですから、糖尿病の標準的な治療法は知っていました。
それは、カロリー制限による食事療法、運動療法、そして投薬です。
ただ、なんとなくそのとおりにする気が起こらずにいたとき、釜池豊秋先生の『糖質ゼロの食事術』(実業之日本社)という本に出合いました。

この本に書かれていた糖質制限の原理に、私は大いに感銘を受け、実際に取り組むことにしたのです。
食事は1日1食。朝と昼はコーヒーのみ。夜は、肉・魚を中心とにしたメニューをたっぷり食べます。

すると、糖質制限を開始して1ヵ月後、ヘモグロビンA1cは7%台になり、3ヵ月もたたないうちに6%を切りました。
そして、半年後には5・2%まで低下。

血糖値も89mg/dLになり、いずれも基準内の数値になったのです。
また、86kgあった体重は69kgになり17kg減、96・5cmだったウエストが、半年後には88・1cmになり、高血圧も改善しました。

さらに、寝つきがよくなり、熟睡するようになって、目覚めもさわやかになりました。
以前は、頻繁にしていた居眠りとは無縁です。

私は、薬も使わず、運動もせず、粗食に耐えたわけでもありません。
さしてつらいこともなく、かえっておいしい物を選んで食べまくって、その結果、やせて健康体になったのです。

これこそが、糖質制限の成果でした。

ケトン体が危険!というのは完全な誤解

これまで、糖質制限の危険な面として、糖質制限をした際に「ケトン体」が上昇する点が挙げられてきました。
糖質を摂取しないと、代わりに体内の脂肪酸を分解して栄養とします。

この際に生じるのが、ケトン体です。
ケトン体が増えて、体液が酸性に傾いた状態である「ケトアシドーシス」になると、嘔吐、疲労感、脱力感などの弊害が生じ、さらに悪化すれば、死に至るとされてきました。

しかし実際には、こうした危険な状態は、どれだけケトン体が増えても、起こることはないのです。
私は、これまでに胎児や赤ちゃんの臍帯血などの濃度を多数測定してきました。

その結果、赤ちゃんのケトン体の濃度は、基準値の20〜30倍もあることがわかりました。
赤ちゃんは、ブドウ糖ではなく、ケトン体をエネルギー源として生きているのです。

この例を見れば、ケトン体そのものになんの毒性もないことがわかります。
ケトアシドーシスが起こるのは、ケトン体の罪ではなく、高血糖によるものと考えるべきでしょう。

糖質制限を始めてからは、私の血中のケトン体の数値は、基準値を超えていますが、体調はすこぶる良好です。
ですから、糖尿病を予防・改善するために、糖質制限を実践する場合、ケトン体の数値を気にする必要はありません。

糖質制限では、米、パン、ソバ、スパゲティ、イモなどの糖質や砂糖を控え、代わりに、肉、魚、卵、チーズなどを中心に摂取します。
ほかに、葉物野菜やキノコ類もとりましょう。

糖度の高くないフルーツであれば、ある程度とってもかまいません。
私のように1日1食でもよいですが、それが難しい場合、朝は、ハムエッグなど。

昼食は、ハンバーグにチーズをのせたものだけを食べましょう。
それまで1日3食糖質を多量にとっていた場合、朝と昼に糖質を制限するだけでもかなり違ってくるでしょう。

2013年、アメリカの糖尿病学会は、糖質制限食を、糖尿病治療の選択肢の一つとして認めました。
アメリカだけではなく、イギリス、スウェーデンなどでも、糖質制限食が治療に取り入れられ、成果を上げつつあるのです。

極端に無理をする必要はありません。
糖尿病を予防・改善するため、糖質制限を上手に取り入れてみてください。

解説者のプロフィール

宗田哲男
1947年、千葉県生まれ。1965年、北海道大学理学部地質学鉱物学科入学。卒業後に医師を志し、1973年、帝京大学医学部入学。1992年、千葉県市原市に宗田マタニティクリニックを開院し、産婦人科医としての医療活動のほか、糖尿病治療にも積極的に取り組み、糖質制限で成果を上げている。著書に『ケトン体が人類を救う糖質制限でなぜ健康になるのか』(光文社新書)などがある。
●宗田マタニティクリニック
http://muneta.org


※これらの記事は、マキノ出版が発行する『壮快』『安心』『ゆほびか』および関連書籍・ムックをもとに、ウェブ用に再構成したものです。記事内の年月日および年齢は、原則として掲載当時のものです。

※これらの記事は、健康関連情報の提供を目的とするものであり、診療・治療行為およびそれに準ずる行為を提供するものではありません。また、特定の健康法のみを推奨したり、効能を保証したりするものでもありません。適切な診断・治療を受けるために、必ずかかりつけの医療機関を受診してください。これらを十分認識したうえで、あくまで参考情報としてご利用ください。

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