若さと健やかさを保つうってつけの食材!
あずきは、東アジアが原産の豆で、日本でも古来、人々に珍重されてきました。
中国で書かれ、世界最古の薬学書である『神農本草経』には、あずきの煮汁が解毒剤として用いられていたと記されています。
中国でも日本でも、食べ物としてよりも、その薬効を長いこと活用していたのでしょう。
あずきの特徴として、まず目を引くのは、豆類のなかでも独特な赤紫色をした皮の色です。
東洋医学では、赤は太陽や血といった「生命」を象徴する色であり、魔除けの力があるとされてきました。
そのため、あずきも、宗教的な行事や儀式などで重用され、しだいに薬としてだけではなく、食べ物としても人々に広まったそうです。
健康を願って小正月にあずき粥を食べたり、冬至にカボチャといっしょに煮て食べたり、特別な日に赤飯を炊いたりする慣習は、その名残といっていいでしょう。
そして、現在では、あんことして、和菓子などで多く用いられています。
このように、あずきは昔から現在に至るまで、私たちにとって身近な食材だといえます。
しかし、このあずきに、実は優れた健康効果があることまでは、あまりよく知られていません。
あずきの健康効果を語るうえで、特筆すべきは、そのポリフェノールの多さです。
植物の色素成分であるポリフェノールは、体内に発生した活性酸素を除去する働き、すなわち抗酸化作用が強力なのです。
活性酸素は、細胞を傷つけて、ガンをはじめとする生活習慣病や動脈硬化、シミ、シワといった老化の原因となります。
あずきには、なんと赤ワインの1・5〜2倍ものポリフェノールが含まれており、抗酸化力は抜群です。
まさに、若さと健やかさを保つ、うってつけの食材といえるでしょう。
そして、あずきにはサポニンも豊富に含まれています。
サポニンは、コレステロールや中性脂肪の増加を防ぎ、ダイエットに高い効果を発揮します。
血栓(血の塊)や動脈硬化の原因を抑制する効果もあるので、心筋梗塞や脳梗塞の予防にもなります。
また、利尿効果も高く、むくみを解消し、血圧の降下にも役立ちます。
ホルモンバランスを調整する女性の味方!
ほかにも、注目したい成分は、多々あります。
貧血を改善して、立ちくらみやめまいを防ぎ、肌の状態をよくする鉄分は、ホウレンソウより豊富です。
さらに、高い利尿作用によって、むくみや高血圧を改善するのがカリウムです。
このカリウムも、カリウムを多く含む食材の代表格であるバナナより、多く含まれています。
細胞分裂を促す亜鉛や、若返りビタミンといわれるビタミンEも含まれているので、これらの点からも高い美肌効果が期待できます。
さらに、あずきは、女性に多い疾患の解消にも適しています。
昔から、産後の肥立ちの悪い女性には、あずき粥を食べさせたといいます。
出産や授乳によって失われる鉄分を補給し、出産後にできやすい血栓を防いでいたのでしょう。
先人の知恵には、すべて理由があったのだと感じます。
さらに言及しておきたいのは、イソフラボンによる効果です。
豆類に多く含まれるイソフラボンは、女性ホルモンと似た働きをすることがわかっています。
加齢による女性ホルモンの減少は、のぼせや多汗、めまい、むくみなどの更年期障害や、骨粗鬆症、認知症などを起こしやすくします。
さらに、イソフラボンは、女性ホルモンのバランスを調整することで、乳ガンや卵巣ガン、子宮ガンといったガンを予防する働きがあることも明らかになっています。
あずきは、まさに女性の味方だったのです。
ただし、あずきのこういった有効成分の多くは、煮たりゆでたりすると煮汁に流出してしまうのが、難点。
そこでお勧めなのが、あずきを炒ってから煮出して作る「あずき茶」です。
クリニックのスタッフ全員が利尿効果を実感!
あずき茶は、私も日ごろから愛飲しています。
クリニックのスタッフにも勧めたところ、私を含めた全員が、尿の出がよくなるのを実感しました。
漢方では、体に余計な水分がたまったままの状態のことを「水毒」といいます。
そして、この水毒こそが、万病の元であると私は考えています。
尿の排出を強力に促してくれるあずき茶は、まさに万病退散の妙薬といえるでしょう。
あずき茶の作り方は、とても簡単です。
まず、あずき大さじ8を水で軽く洗い、ざるやキッチンペーパーなどを使って、水気を切ってください。水につけておく必要はありません。
そして、あずきをフライパンに入れて、2〜3分ほど、弱火で炒ります。
フライパンを振ったり、かき混ぜたりしながら、焦がさないように気をつけましょう。
あずきの色が濃くなり、こうばしい香りがしてきたら、火を止めます。
次に、沸騰した湯2Lに炒ったあずきを入れ、中火から弱火で煮ます。
ふたをせずに、湯量が3分の2ぐらいになるまで、30分から1時間ほど煮出しましょう。
色が濃い茶色になったら、出来上がりです。
あずき茶の作り方

あずき茶は、温かいまま、すぐに飲んでもかまいません。
もしくは、粗熱が取れたら冷蔵庫で保存し、1週間以内に飲み切るようにします。
飲む量の目安としては、朝晩に200ml程度ずつがよいでしょう。
あずき茶は、あずき特有の甘みと、ほうじ茶のようなこうばしさがあり、とてもおいしいので、私も気に入っています。
なお、残ったあずきは、低カロリー(エネルギー)で、かつ食物繊維とたんぱく質の塊かたまりですから、ぜひとも食べていただきたいものです。
私は塩を少々かけて食べることが多く、それだけでもおいしくいただけます。
火の入れぐあいによっては、硬いままのあずきもあるので、食べる際はくれぐれも注意してください。
冷凍保存もできますし、ご飯に混ぜたり、スープに加えたりするなど、お好みの食べ方でご利用ください。
あずき茶は、もちろんカロリーゼロ。
添加物もいっさいなく、カフェインも含まれていません。
妊娠中のかたやお子さんでも安心して飲むことができます。
あずきは、まさに有効成分の宝庫です。
あずき茶はきっと、皆さんの健康的な生活を後押ししてくれるでしょう。
解説者のプロフィール

石原新菜
長崎市生まれ。イシハラクリニック副院長。医学生のころから、メキシコのゲルソン病院、ミュンヘン市民病院の自然療法科、イギリスのブリストル・キャンサー・ヘルプセンターなどを視察し、自然医学の基礎を養う。2006年に帝京大学医学部を卒業。大学病院での研修医を経て、イシハラクリニックにて漢方薬処方を中心とする診療を行う。現在、クリニックでの診察をはじめ、テレビ、雑誌などで活躍中。著書多数。
●石原新菜オフィシャルサイト
https://www.ninaishihara.com/